ユニクロ柳井氏「日本は公務員を半減せよ」発言の「大きな間違い」

すでに日本は「小さな政府」です
飯田 泰之 プロフィール

公務員削減についても、ごく簡単なデータから否定できる。雇用者全体に占める一般政府雇用者比率は5.9%とOECD諸国の中で最も低い値である。ちなみにOECD諸国の同比率の平均は18.1%であり、日本は突出して公務員比率の低い国であることがわかる2

〔PHOTO〕東京都庁

これらについては、防衛関連職員の少なさや郵政民営化に伴う郵便局員の非公務員化が影響しているという見方、さらには政府関連企業の雇用を含めれば日本はまだまだ公務員が多い国だとの反論もあるだろう。

『世界価値観調査』では勤務先に関する質問が含まれている。そのなかで、自分が「公的機関(Government or public institution)で働いている」と答えた人の割合――制度上の定義ではなく自己認識によるデータを見ると、日本は10.7%と調査対象58国中57番目となっている。日本よりその割合が低いのはモロッコ(10.4%)のみだ3

 

なぜ経済人のマクロ経済への提言は誤るのか

あまりにも事実を無視した見解であるにもかかわらず、「政府支出が大きすぎる」、「公務員の数が多すぎる」という主張は人々の感情に訴えかける力がある。国際比較上日本がいかに小さな政府で公務員数が少なかったとしても、節約すること、費用を抑えることはよいことに違いないという素朴な直感の影響も小さくないだろう。

しかし、この直感がいつでも正しいとは限らない。この直感的な理解の問題点を探ると、経済人のマクロ経済への提言がなぜ誤るのかを理解することができる。

経済に関する問題を考える際には、今直面している問題がオープン・システム問題であるのか、クローズド・システム問題であるのかに注意しなければならない4

オープン・システム問題とは、課題となっている対象に「外部」がある問題だ。例えば、企業が成績の振るわない従業員を解雇し、不要不急の費用を節約すると――少なくとも短期的には利益は増加するだろう。企業は業績を圧迫している要因を「企業の外に出す」ことが可能である。企業に関する問題は、それがいかに大きな企業であれオープン・システムの問題なのである。