岡田幹治(おかだ・もとはる) ジャーナリスト
1940年、新潟県高田市(現・上越市)生まれ。一橋大学社会学部卒業。朝日新聞社でワシントン特派員、論説委員などを務めて定年退社。『週刊金曜日』編集長の後、フリーに。近著に『香害 そのニオイから身を守るには』(金曜日)、『ミツバチ大量死は警告する』(集英社新書)など。
致死率が低い新型コロナの危険性に見合った措置に舵を切るとき
政府は1月28日に閣議決定した政令で新型コロナウイルス感染症を「指定感染症」に指定し、厳しい感染防止措置を実施してきた。当時は未知の感染症だったので、とりあえずSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)なみの対応をとり万全を期したわけだ。
だが、それから8カ月が経ち、新型コロナはそのような「危険性がきわめて高い感染症」ではなく、感染者数と死者数は季節性インフルエンザより少ない感染症であることが明らかになった。筆者は、政府はこうした実態を受け止め、新型コロナを指定感染症から外し、インフルエンザと同じ「5類感染症」に位置づけ直すべきだと考える。
これまで「危険な感染症」だとしてきたものを急に「インフルエンザ並みの感染症」に変更することは、政治家にとっても、政府の分科会に参加してきた専門家にとっても。きわめて困難な選択であることは理解できる。
しかし、指定感染症に指定していることによる弊害は大きい。そして、菅義偉政権がめざす「コロナ対策と経済社会活動の両立」には、新型コロナ感染症がむやみに恐れることのない感染症であることを明確にし、人々の恐れすぎを和らげることが欠かせない。
そうしたことを考え、首相が決断すべきときだと思う。
指定感染症は、感染症法が定める八つのカテゴリー(分類)の一つで、国民の健康を脅かす恐れのある新しい感染症が出現したとき政令で指定される。
指定されると、1類感染症(エボラ出血熱やペストなど)、2類感染症(SARSやMERSなど)、3類感染症(コレラや腸チフスなど)に適用されている措置のうち、必要な措置を選んで実施できるようになる。
新型コロナは2月1日施行の政令で指定され、次のような措置が実施されることになった(期限は1年)。
1 感染者に入院や就業制限を勧告する=これは2類以上に適用される措置だ。
2 無症状の感染者にも同じ措置(入院や就業制限の勧告)を取る=これは1類に適用される措置だ。
3 濃厚接触者に外出自粛などを要請する=これは2009~10年に流行した新型インフルエンザに適用された措置だ。
つまり、新型コロナは2類ないし1類に相当する感染症とみなされたわけだ。
これによって、新型コロナの患者(症状があり、病原体も検出された人)と疑似症患者(症状はあるが、病原体は検出されていない人)だけでなく、無症状病原体保有者(無症状感染者=症状はないが、病原体が検出された人)まで、入院や休業を勧告されることになった。
さらに、職場の同僚・顧客や家族などの濃厚接触者は、症状がなくても、外出の自粛と健康状態の報告が求められることになった。
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