「トランプ優勢」を報じ続けた「日本のメディア」、その大きすぎる問題

本当に「優勢」だったのか
平河 エリ プロフィール

打率3割のバッターが、ある打席においてたまたまヒットを打ったからと言って「このバッターは結果的にヒットを打てたのだから、打率という指標は意味がない」とはならない。なぜならそれは一度の打席を判断するものではなく、何回も繰り返した結果どの程度ヒットを打つ可能性があるかの確率を示しているに過ぎないからだ。

もしかすると、10回やれば7回はクリントン候補が勝ったのかもしれない。しかし、現実の世界においてやり直しは存在しないので、この仮説を証明する術はない。

今回、FiveThirtyEight はバイデン候補が勝利する確率を約9割と報じた。前回よりも2割高い数値である。多くの主要メディアもバイデン候補の勝利の可能性が高いと報じた。

そして、実際にバイデン候補は勝利した。

ニューヨークでバイデンの勝利宣言に歓喜する人々〔PHOTO〕Gettyimages
 

更に、FiveThirtyEight において55%以上の確率でどちらかの候補が当選すると見られていた州に関しては一つも予想が外れてはいない。フロリダ・ノースカロライナの両州は3%程度の差でバイデン候補の勝率が高いと予想し、トランプ大統領が勝ち取ったが、この2つの州の勝率の差は僅かだと予想していた。

激戦州でどちらかの候補が勝利したからといって、それは予想が誤っていたことにはならない。それが激戦州の意味だからだ。トランプ大統領がいくつかの激戦州で勝った要因は今後ゆっくりと分析されるだろう。

バイデン候補の勝利の可能性が高いと見られていたのは、バイデン候補は勝つためのプランがトランプ候補より多く、一つの州で敗北しても他の激戦州で勝つことが出来るからだ。

フロリダを落としても、テキサスを落としても、ノースカロライナを落としても、ミシガンとペンシルバニアで勝てばバイデン候補は最終的な勝者になるし(実際にそうなった)、その逆のパターンでも構わない。