「トランプ優勢」を報じ続けた「日本のメディア」、その大きすぎる問題

本当に「優勢」だったのか
平河 エリ プロフィール

赤い蜃気楼

ニューヨーク・タイムズの報道によると、トランプ陣営は当初、フロリダ州が優勢になったという報道を聞いて、選挙の方向性を楽観視していた。

今回の大統領選挙において、接戦となるケースは早期に開票する3つの州、フロリダ、 ジョージア、 ノースカロライナのすべてをトランプ大統領が獲得した場合に限られていた。そのうち、フロリダで優勢にたち、他の2つの州も互角であったことは、少なくとも短期でこの選挙戦が決まることがない、ということを示していたからだ。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

フロリダは、この選挙における最大のサプライズだった。しかし、それが最終的な結果にどう影響するかは、フロリダでのトランプ優勢が伝えられた段階では明らかではなく、著名な統計学者のネイト・シルバーは「フロリダの結果はキューバ系の投票行動がトランプ支持だったことによるもので、他の州に影響するかはわからない」とツイートした。

この時点では、まだ選挙の行方はわからないと思われていたのである。

ところが日本時間の11月4日午後1時、事態は大きく変わった。Fox News がアリゾナ州をバイデン候補の勝利と報じたのだ(トランプTVとまで言われ、トランプの最もお気に入りで毎日視聴するテレビ局でこのような報道が出たのは皮肉なことだ)。

Fox の担当者である アーノン・ミシュキンは放送に出演し「申し訳ないが、大統領が逆転することは不可能だ」と述べた。Fox だけではなく、後にAP通信もアリゾナ州はバイデン勝利と報じた。

このニュースにトランプ陣営は怒りを爆発させた。トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナーは、Foxの総帥ルパート・マードックに電話すらした。