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『バイキング』拡大でも密かに進むフジの「坂上忍離れ」 過去の傷も致命傷か?

蜜月関係にあったはずでは…
木村 隆志 プロフィール

「中高年向けのタレント」である苦しさ

2つ目の背景は、今春に行われた視聴率調査の大幅なリニューアル。

「どれだけの世帯が見たか」というざっくりとした調査ではなく、「どんな年齢性別の人が見たか」を細かく調べられるように変わり、スポンサーの意向がより反映されやすくなった。

大半のスポンサーは購買意欲の強い10~40代が好むタイプの番組を求め、出演者もこの層に人気のあるタレントがキャスティングされていく。

その意味で前述したように「パワハラ」のイメージが強い坂上はこの層に敬遠されがちであり、『バイキングMORE』の視聴者層を見ても「中高年向けのタレント」という見方が濃くなるなど厳しい状況になった。

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これまで坂上の出演番組が断トツで多かったフジテレビは、「13~49歳の男女を“キー特性”と呼び、この層の視聴率を重視していく」という方針を遠藤龍之介社長自ら宣言。木曜21時台の番組を坂上の『直撃!シンソウ坂上』から千鳥の『千鳥のクセがスゴいネタGP』に変えたように、キー特性重視の番組制作が急ピッチで進められている。

さらに厳しいのは、その傾向がコロナ禍で加速度を増していること。外出の機会が減り、平日もリモート授業やリモートワークが増えたことでキー特性の在宅時間が増え、彼らの好む番組作りがますます求められるようになった。番組ジャンルで見ても、より笑いや癒しを感じさせる番組が優先されるだけに坂上の出番は増えそうにない。

 

他局に目を向けても、坂上忍離れの状況がうかがえる。今年は3月にMCを務める『1番だけが知っている』(TBS系)が終了した一方、新番組へのレギュラー出演はなく、特番の『坂上くんが試してみた!! 通販☆家事スクール』(テレビ朝日系)と『本当のとこ教えてランキング』(TBS系)が放送された程度。どちらもメインターゲットは中高年向けの特番であり、やはり「キー特性をつかめていた」とは言い難い。

また、2010年代から13~49歳の視聴者層を“コアターゲット”と呼び、他局に先がけて重視してきた日本テレビがこのところ坂上の出演番組をほとんど放送しなくなったことも、その苦境を物語っている。