1つ目の背景は、時代が令和に変わったころから、視聴者の意識や嗜好に変化が見られること。
今夏のドラマで「大ヒット確実」と言われた『半沢直樹』(TBS系)に次ぐ人気を獲得したのは『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)。多部未華子が演じるヒロインを穏やかな笑顔で癒す家政夫・鴫野ナギサ(大森南朋)が男女を問わず支持を集めたように、令和時代に入ってからほっこりとしたイメージの人物像が求められている。
その傾向は同作に出演していたお笑いコンビ・ずんの飯尾和樹が人気を集めていることからも分かるのではないか。
その点、強い言動のイメージが強い坂上は真逆の存在。とりわけ若年層が最も嫌うハラスメントの象徴的な存在として見られているのが痛いところだ。
日ごろ『バイキング』で見せる言動に加えて、今年は5月ごろから毎月のように坂上のパワハラに関する記事が報じられたことで、真偽はさておき、そのイメージが完全に定着してしまった。それが「新番組にキャスティングされにくい」という状態につながっている。
さらに先日、伊藤健太郎が自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕され、それを『バイキングMORE』が扱ったことで、坂上が過去に起こした事故が蒸し返されてしまった。
実際、検索サイトに「坂上忍」と入力すると予測変換の2番目に「飲酒事故」というワードが表示される。「過去の罪を許さない」という現在の国民感情は根深く、身から出た錆だけに局内外で「以前より坂上を擁護できる人が減っている」という声を聞いた。
あらためて振り返ると、坂上がMCとして台頭した平成後期は、有吉弘行やマツコ・デラックスらが毒舌を武器に人気を集めていたころ。坂上もその流れに乗る形で一気に登り詰めたが、時代が令和に変わる中、その毒舌が本当の毒のようにみなされている。毒の中に配慮や優しさを感じさせるトークスタイルにマイナーチェンジした有吉やマツコに比べると、坂上は時代の変化に対応できていないのかもしれない。