韓国高官の訪日 対話を本格化させたい
2020年11月12日 07時51分
菅義偉首相と、韓国政府高官との面会が実現した。懸案となっている元徴用工問題での解決策はまだ見つかっていないが、対話を本格化させる契機となろう。まずは、信頼関係の再構築を図りたい。
首相を表敬訪問した韓国国家情報院の朴智元(パクチウォン)院長は、菅政権発足後に日本を訪問した初めての韓国政府高官となった。
情報機関のトップである朴氏は、日本にも幅広い人脈を持つベテラン政治家だ。今の時期訪日したのは、悪化の一途だった日韓関係の改善に役立つ、と韓国政府が判断したからだろう。
朴氏は一九七〇年代から米国で事業家として活動し、米大統領選で当選を確実にしたバイデン氏とは知人関係にある。また友好的な日韓関係を築いた故・金大中(キムデジュン)大統領の右腕的な存在でもあった。
自民党の二階俊博幹事長とは、二十年にわたる親しい間柄だ。今回の訪日でも食事を共にし、意見交換を行ったという。
また国家情報院は、北朝鮮に関する豊富な内部情報を持っていることで知られる。菅政権が日本人拉致問題の解決を図る上で、韓国側からの助力は欠かせない。
朴氏と菅首相との面会に、外務省の幹部や北村滋国家安全保障局長が同席したことからも、期待の高さがうかがえよう。
朴氏は、日韓関係正常化に関する文在寅(ムンジェイン)大統領の意思を菅首相に伝達し、北朝鮮問題で緊密に連携することを確認した。
焦点の元徴用工問題では、被告・日本企業の資産売却手続きが進んでいる。売却されれば、日韓関係が根底から揺らぎかねない。
この問題で朴氏から具体的な提案はなかったようだが、これまでのような、とげとげしい雰囲気ではなかったのは幸いだった。
韓国の報道によれば、文大統領は東京五輪の場を使い、懸案の一括解決を図る構想があるという。
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)党委員長を日本に招き、南北や日米の首脳会談を通じて徴用工、拉致、北朝鮮の核問題の進展を図る構想のようだ。実現性は不明だが、地域の安定につながるのなら、日本政府としても協力すべきだろう。
北朝鮮が米国のバイデン新政権との交渉を求め、強硬路線に戻るとの見方も出ており、北朝鮮の動向は日韓共通の課題でもある。
韓国では、東京電力福島第一原発の処理済み汚染水の海洋放出について懸念が高まっている。
日韓関係の再構築に向けて、今後も活発な意思疎通を進めたい。
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