トランプは往生際が悪い?

米国のメディア各社はジョー・バイデン前副大統領の当選確実を伝え、それを受けてバイデンは7日に行った勝利演説で「分断でなく結束を目指す」と述べて国内融和を訴えた。日本の菅義偉首相もTwitterでお祝いのメッセージを送った。

報道によるとバイデンの勝利宣言を受け、米国内では「分断はやっと終わった。これからは癒しの時だ」と喜ぶ声があふれたらしい。

勝利宣言をするバイデン氏
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ただトランプ大統領は選挙に不正があったとして法廷闘争を展開しており、いまだに敗北宣言を出していない。このためバイデンへの政権引き継ぎがまだ行われていない。新しい政権への移行が遅れ政治的空白が生まれると、安全保障上の影響が出るとしてメディアはトランプのことを「往生際が悪い」と批判している。

あと1ヶ月は決まらないのではないか

ただトランプは簡単に敗北宣言は出さないだろう。事態は12/14の選挙人投票まで決着せず、その前に出されるであろう最高裁の判断によって決まる、ということになるかもしれない。だとしたらそれまでの1か月間、政権の引継ぎはできない。

メディアは、せっかくバイデンが「みんな仲直りしようよ」と言ってるのに、喧嘩をやめないトランプはけしからん、という論調である。

「往生際が悪い」?トランプ大統領

だが不正が行われた疑いがあるなら再集計するのは当然のことだ。2000年の選挙では民主党のゴア候補の求めでフロリダで再集計が行われ、最後は最高裁の判断でブッシュの勝ちが確定した。決まったのは選挙人投票直前の12/12だった。今回同じようなことをしてはいけないのだろうか。

バイデンに投票した7500万人の米国人は「分断は終わった」と喜んでいるかもしれないが、トランプに入れた7000万人はそうは思わないだろう。このままバイデンが勝ったとしても米国は新たな分断の4年間に入るだけかもしれない。

勝利宣言の日 カマラ・ハリス氏と共に喜びを表すバイデン氏

分断はトランプだけが作ったものではない

専門家によると米国の株が上がっているのはバイデンの勝利で先行き不透明感が消えたからではなく、上院の過半数を共和党が取りそうなので、バイデンの増税、IT規制強化路線が抑制されるであろうことを見越してのものらしい。

メディアもバイデン支持者も、口では「融和の時だ」と言いながら言葉の端々には「正義は勝った、悪者はとっととホワイトハウスから出ていけ」という悪意がにじんでいる。これを改めない限り7000万人のトランプ支持者が納得することはないだろう。「分断」はトランプだけが作り出したものではないからだ。

(訂正:本日のコラムの中で、「昨夜面白いニュースが入ってきた。世論調査サイトの「リアルクリアポリティクス」がペンシルバニア州でのバイデンの当確を取り消した結果、バイデンの獲得選挙人は259人となり、過半数の270人を下回ったというのだ。」と書きました。これはトランプ側近のジュリアーニ元NY市長のツイートをもとに書いたものですが、リアルクリアポリティクスはもともとペンシルバニア州でバイデンの当確を出しておらず、従って獲得選挙人は259人で過半数を超えていませんでしたので、その部分を削除します。)

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】