秋篠宮さまが皇位継承順位第1位の皇嗣になったことを内外に宣言する「立皇嗣の礼」が、8日執り行われた。
社説はこれまで、皇統の継承や皇室活動のあり方について、開かれた場での議論を急ぐよう政府に繰り返し主張してきた。国会も17年に天皇退位特例法を制定した際、付帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」を「本法施行後速やかに」検討して報告するように求めた。
だがその特例法が施行された昨春以降も、安倍政権は「議論は立皇嗣の礼の後に」と先送りを図り、貴重な時間を浪費してしまった。国会を軽んずる姿勢がここでもあらわだった。
政府は、この間(かん)も担当部局で有識者の聞き取りを重ねてきたと釈明する。そうであるならその内容を紹介し、現時点での政府内での検討状況を国民に丁寧に説明すべきだ。
30代以下の皇族は7人で、悠仁さまを除く6人が女性だ。結婚すれば皇籍を離れる決まりになっており、いまの制度のままで皇位を確実につないでいけるのか、懸念されて久しい。菅首相は「男系による継承が続いてきた重み」を強調するが、世論調査では女性・女系天皇を支持する声も大きい。
国民統合の象徴をめぐって、人々の間に深刻な対立を持ち込むような事態は避けなければならない。継承順位の変更につながる見直しは現実的とは思えないが、将来を見すえていかなる手当てを講じるべきか、答えを出すのをこれ以上引き延ばすことはできない。
皇族の数が減れば、皇位継承だけでなく、活動の維持も難しくなり国民との接点は減っていく。そこで12年に野田政権がまとめたのが女性宮家構想だ。
結婚後も皇族にとどまり、独立した宮家をたてる案だが、配偶者や子の身分、本人意思の要否、対象とする女性皇族の範囲など詰め切れていない論点も多い。構想の中では、皇籍は離れるが、特別な公務員として引き続き活動を担ってもらうという案も示されている。
放置してきたこうした問題に、いつまでに、どう答えを出すのか。前政権の官房長官として、危機を深めた責任を負う菅首相の対応が問われる。
今年はコロナ禍の影響で、皇室が市民とふれ合う機会である多くの行事が中止になった。夏に熊本などを襲った豪雨の被災地への、天皇皇后両陛下によるお見舞いもかなわなかった。
感染の収束が見通せない状況で、どうやって人々と皇室との関係をとり結び、安定したものにしていくか。考え、議論すべきことは山積している。
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