アインズ様がNPCに感謝を伝えて慰労しようとする話(仮題) 作:冥﨑梓
1.アインズの決断
――ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間――
ここにこれほどのNPCが集まったのはいつ以来であろうか。
主人からの久しぶりの招集とあって、熱気に溢れていた。
今回シモベは連れずにとのことで、純粋に至高の存在に創造された者のほぼ全て、
全階層守護者、ほとんどの領域守護者――紅蓮などのここに来ることが困難な者以外――
その姿を見るのは初めての者も多いオーレオール・オメガ、一般メイドまでが集っていた。
これも少しずつシモベに様々な仕事を任せられるようにした主人の慧眼のたまものである。
ただし当然のことながら、至高の存在に創造されていない、最近入った元人間の領域守護者は喚ばれてはいない。
扉が開かれ、セバスが入室する。
「ナザリック地下大墳墓最高支配者、アインズ・ウール・ゴウン様の御入室です」
再び重厚な音を立て扉が開かれる。
――絶大なる死の気配――
至高なる主にお仕えできる喜びで魂が震える。しかし、当然のことながら微動だにする愚か者はいない。
コツリという冷ややかな靴の音と、杖が床を叩く音が続く。
さらに少し後ろから静かな革靴の音が続いた。
アインズは堂々と中央を歩く。訓練された――アインズが考える、絶対支配者にふさわしい、堂々とした姿勢と歩き方を披露する。
手にはいつもとは違い、オーレオール・オメガをこの玉座の間に喚ぶに当たり受け取ったスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持っている。その杖の突き方ももちろん、アインズが考える王者にふさわしい突き方だ。
玉座の下にある階段でセバスが離れ列に並ぶ。
アインズは、これもまた絶対王者にふさわしい姿勢で階段を上り、玉座に腰掛ける。
「アインズ様、ご指示いただいたNPC、御身の前に揃いました」
「――うむ。皆、ご苦労。
「はっ!」
歯切れの良い返事と共に頭や頭に相当する部位を上げるNPCたち。一糸乱れぬ統率された動きだ。
アインズは皆を見渡す。
今回はシモベがいない為玉座の間を埋めるにはやや少ないが、全員が仲間が創った子供たちだ。
一人一人が誇らしい。
アインズは今回NPCを集めるに至った経緯を思い出していた。
その日もアインズはエ・ランテルの自室のやわらかなベッドに寝そべり本を読んでいた。
(そういえば、前に全NPCを集めて感謝と慰労をしなくちゃなぁって思ってから結構経つけど、
まだできてなかったなぁ)
(まだ色々あるけど、今なら
感謝については問題ない。
いつも通り、「至高の御方の為に働くのは当たり前。アインズ様が感謝される必要はございません」などと言われるだろうが、
それを押し切って感謝の言葉を伝えることは可能だろう。
何しろ自分は心から感謝している。それをそのまま伝えるのだ。心を込め、その感謝を受け取ることも忠義だとか言えば受け取ってもらえるだろう。
問題は慰労だ。
どうすれば
NPCは種族もカルマ値も様々だ。
当然慰労の手段も様々だろう。
同じ人間であっても、慰労の手段は様々だった。いや、種族は関係ないだろうか。
役に立つのが一番幸せ、とは言われるが、それは慰労ではないだろう。
この本によれば、と読みかけの本に視線を落とす。
様々な障害を持つものと健常者がともに働く小さな会社が繁盛した話が書かれていたが、
社長は社員からもう一人の父親のように慕われていた。
これだ。
今のアインズの状況に似ているのではないだろうか。
アインズは絶対支配者だが、
アインズは今はいない彼らに代わって
いわば父親替わりでもあると思っている。
さらに本を読み進めると、数々のエピソードの中に、社員の個人的な趣味に社長がつきあって理解と交流を深めたとあった。
個人的な楽しみをそれぞれ聞いて、それを手助けする。
場合によってはアインズが教わっても良いだろう。
それによって休みの有効活用も出来る。
アインズの虚像修正にも繋がるのではないだろうか。
個人の趣味的なものに対してたとえアインズが少々劣っていても、さほど失望もされないだろう。
これはまさに一石二鳥ではないだろうか。
我ながら今日は冴えてるな、などと考えながら、アルベドとNPCたちにどのように話すか頭の中で組み立てていった。
(――あら?)
主人の入室許可を得、本日のアインズ当番の後からエルダーリッチ達と共に執務室に入室したアルベドはいつもと少し違う空気を感じる。
(――何か、決意をなされた感じ?そうね、何か後ほどお話があるのかもしれないわね)
メイドも、エルダーリッチ達も、
(くふ。やはりモモンガ様のことを一番わかっているのはこの私だわ)
主人の顔に表情が浮かぶことはないが御心の洞察には自信がある。
これも恋する乙女であるからだろう。少し優越感を感じる。
(――ん?これは、アルベドには勘づかれたな。まぁ別に問題はないだろう。まずは仕事をしないとな。がんばれ、俺)
「おはようございます、アインズ様」
「おはよう、アルベド。さて、色々と気になる事もあるだろうが、まずは仕事を終わらせよう」
「はっ、畏まりました」
…
……
………
アインズは最後の書類に国璽を押す。
その書類をアルベドに渡し、アルベドからエルダーリッチに渡る。
「さて、ではいつものをやる前に、アルベドに一つ頼みたいことがあるのだが」
「はっ、何なりとお申し付け下さい」
「急ぎではないが、そうだな、1ヶ月…いや、3ヶ月以内にできうる限り全てのNPCをナザリックの玉座の間に集めて欲しい」
「可能な限り全てのNPCを、でございますか?畏まりました」
「今回はシモベはなし、つまり私や仲間達が創造したNPCのみとしてくれ。現在NPCたちが行っている業務を一時的にでもシモベに任せられるように。できるか?」
「もちろんでございます。早急に調整いたします」
「すまないな、アルベド。負担をかけてしまうがよろしく頼む」
「!アインズ様!そのような!私どもシモベにとってアインズ様のお役に立てることは喜び。激務であればあるほどより悦びでございます!!」
(うわぁ・・・ワーカホリックにもほどがあるだろ。それに2回目の「よろこび」ってなんか漢字が違ってないか?)
NPC達がこういう思考回路だというのは理解しているが、面と向かって言われると、はっきり言ってどん引きである。
だが、ホワイト企業を目指すために、このNPC達の考えも徐々にでも変えていかなくてはならない。
新たな決意を胸にする。
「ンンッ、アルベドよ、お前の気持ちは嬉しいが、私の気持ちも受け取ってもらいたい。良いな?」
「畏まりました」
「数時間で終わらせるつもりではあるが、不測の事態に備えて、<
「重ね重ねのご配慮、ありがとうございます」
深々と頭を下げるアルベド。
「顔を上げてくれ、アルベド。それで・・・ふむ、場所を変えるか」
対面のソファ席に移動する。
「アルベド、そこに座れ」
アインズが座らないとアルベドは座らないため先に座る。
向かいのソファにアルベドが座ると
「アルベド、今から私が許可を出すまでその場を動かないと誓えるか?」
「畏まりました。アインズ様の許可があるまでこの場を動かないと誓います」
「よし」
控えていたアインズ当番のメイド、エルダーリッチ達に下がるように指示をする。天井の
全員が出ていき、十分部屋から離れたと判断するとアインズは立ち上がりアルベドに近づく。
「さて、アルベド。その・・・だな。うむ、なんと言って良いか・・・いや、まずはこちらからにしよう。以前お前に与えていた仲間の情報を集めるという任務、あれはもうしなくて良い」
「え!?」
「お前達のおかげでアインズ・ウール・ゴウンの名が世界に轟く日も近い。仲間がこちらに来ている可能性はほぼないと思われるし、万が一来ているとしてもこちらから探さずとも仲間なら来てくれるだろう。お前に与えたシモベはそのままお前の配下とすると良いがチームは解散、ルベドへの指揮権も私に戻す。良いな?」
「畏まりました」
アルベドの頭に手をのせる。
「それから、その・・・お前がもし、そう呼びたいのなら、『モモンガ』と呼んでも構わないぞ」
「え!?」
頭にのせた手をぽんぽんと軽くなでるように弾ませる。
「もちろん、時と場合は選んでもらわないといけないがな」
「ありがとうございます、モモンガ様!!」
(いつだったか、あれはそう、王国にアルベドが使者として出発する日に、頬にキスをした時、感極まったアルベドが「モモンガ」って呼んでたからなぁ。「モモンガを愛している」と書き込んでしまったのは俺だし、おそらくこの「モモンガ」って名前に思い入れもあるんだろうな。俺としては、ギルド名に改名したのは、ギルドに最後に残った者として皆を守る責任を負う者としての覚悟の名前でもあるんだけど、NPC達はそうでもないかもしれないもんな。こちらが名乗るのはそのままとしても、呼ぶのは戻してもいいかもしれない)
スクロールについては私はアルベドも使えると思っています。
羊皮紙の材料はデミウルゴスが手に入れていますが、スクロールを創るのにはユグドラシル金貨も必要なので、アインズは使ってもいいと言っていますが、NPC達はできるだけ使わないようにしているのではないかと思っています。
タイトルはどうしたらいいでしょうか
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今のタイトルの(仮題)を外す
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一瞬だけ使用した「感謝と慰労」にする
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まだ(仮題)のままにしておく