アインズ様がNPCに感謝を伝えて慰労しようとする話(仮題)   作:冥﨑梓

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4.幕間―子供たち―

アインズの姿が転移で消える。主人を失った玉座は物寂しげだが玉座の間は感動と興奮による熱気が渦巻いていた。

内心を押し殺してアルベドは立ち上がる。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

「「「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!!!」」」

「ナザリックに栄光あれ!」

「「「ナザリックに栄光あれ!!!」」」

「モモンガ様万歳!」

「「「モモンガ様万歳!!!!」」」

 

唱和が広い玉座の間に木霊する。それが消えたところで皆号泣し、泣き崩れた。さすがに御方の前で二度も号泣する事は出来ないと皆必死に堪えていたのだ。

あぁ、我らが王の慈悲深さは底知れない。

その声は先ほどの唱和よりもよほど大きく鳴り響き木霊した。

 

(まさか、あの名前にそんな意味があったなんて!!!モモンガ様の慈悲深さへの理解が私もまだまだだった、ということね)

 

「さぁ、せっかくのモモンガ様のご厚情を無駄にするものではないわ。時間があるものは自由にして交流を深めましょう」

「そうだね」

「あのさぁデミウルゴス。アインズ様の目的は世界征服じゃなかったんだね」

「そのようだね。ずっと思い違いをしていたとは汗顔の至りだよ。あの時モモンガ様がおっしゃった『世界征服というのも面白いかもしれないな』というお言葉は、手段として、という事だったわけだね」

「そうね。そういえば、以前デミウルゴスが世界征服という話を初めてここで話した時に、少しモモンガ様が驚いていらっしゃったような気がしたのだけど、そういう事だったのね」

「なんという・・・アルベド、どうしてその時に教えてくれなかったのです。そうすれば―――」

「デミウルゴス。よく思い返してみるのよ。あの場面でそのような話ができるはずがないわ。それにすぐにモモンガ様も納得されたような感じだったもの」

「そういえばあの時アインズ様は小さく『・・・世界征服?』ってつぶやいていらっしゃったよ」

「そ、それに、『あの時の話だな』『・・・あの時だな?』と二度確認されていましたよね」

「なるほど。どうやら貴方はモモンガ様にお褒めいただけるとの思いから、普段の冷静な観察眼を失っていらっしゃったということのようですね」

「これは手厳しい。だが、パンドラズ・アクターの言う通りだね。・・・アインズ様は私たちには経験が足りないだけとおっしゃっておられましたが、いったい何百年経験を積めばいいのだろうか・・・」

「それは正直見当もつきませんね。しかし、モモンガ様は貴方に期待していらっしゃる。何としてもお応えせねばなりません」

 

(そう。モモンガ様がデミウルゴスに期待されているのは創造されたとおりの姿を見せる事。ですが、私は違います。必ずや父上のお望みを叶えてご覧に入れます!!)

 

「そうだね。君の言うとおり、一つ一つ経験していくしかないね。それにアインズ様の今までの行動とその意味も再検証する必要があるね。アインズ様は計画の変更は必要ないとおっしゃっておられましたが、少々私たちの計画に至らない点があっても受け入れ、問題になりそうな箇所については『わざとミスする』などとおっしゃりながら、より良い計画に変更されていらっしゃるからね」

「そうね。私たちのやりようを見守っていらっしゃって問題がある時にそっと手をさしのべてくださるのよね」

「しかしそれに甘えてばかりはいられません」

「三人寄れば文殊の知恵という言葉があるように」

「三人寄ればモモンガ様の知恵、というべきではありませんか?」

「それは違うわ。私たち三人が知恵を合わせてもモモンガ様の足元にも及ばないもの。文殊とは知恵の神らしいけど、それを遙かに凌駕するモモンガ様の叡智!」

 

「ねぇねぇ3人だけで盛り上がってないであたし達にもわかるように話してよ」

「そうでありんす。アインズ様の愛にお応えする為にも、アインズ様の真の願いと目的の為に何をすればいいのか理解する必要がありんす」

「ソノトオリダナ。思イ違イヲシテゴ迷惑ヲオカケシテハイケナイ。デミウルゴス、教エテクレナイカ?」

「ぼ、ぼくにもお願いします。アインズ様の為にもっともっと頑張ります」

「私にもお願い致します」

そしょく()やまぶき()だいだい()もえぎ()うすいろ()くり()だいだい()あかね()たまご()はだ()やまぶき()()()

「そうだね。まず今回のアインズ様の目的については皆分かっているのかな?」

「えっと、それは、その、アインズ様のお話以外、ということですか?」

「そうだね、マーレ。だがアインズ様のお話そのものもまず理解する必要はあるね。一つ一つ確認していこう。また思い違いがあってはいけないからね」

「えっと、まず、アインズ様は慈悲深くもあたしたちに感謝してくださっているというお話だったよね」

「それから、私たちの事を子供のように大切に思い愛して下さっているというお話でした」

「そ、それから、世界征服は目的ではなく手段であり、アインズ様の目的は、アインズ様とぼく達が永遠に幸せであり続けること、とおっしゃっていました」

「そう、アインズ様は『永遠に』とおっしゃっていた。それはつまり」

「永遠ニ我々ト共ニ居続ケテ下サルトイウコトカ」

「そうだとも、コキュートス。以前アインズ様が万年先までの策謀を練っていらっしゃると伺った時にも、もしや、と思ったのだが、今回アインズ様ははっきりとおっしゃって下さった。これは至らないなりに我々が頑張っている事をお認め下さったということではないかな。もちろんこの先もよりいっそう励まなければならないけれどね」

「永遠に私たちと一緒にいて下さる・・・さすがは慈悲深きアインズ様でありんす」

「最後に、私たちの事をより理解する為に面談を行われるとのことで、その為のレポートを提出するようにということでしたね」

「ねぇ、アルベド。今回のことはアインズ様からはどのようにお話があったの?」

「私はモモンガ様からは、できるだけ全てのNPCを玉座の間に集めて欲しい、という事しか伺ってはいないわ。いえ、お名前に関してのお話があるとはお伺いしていたけれど」

「あ、あの、お、お名前は『モモンガ様』とお呼びしたほうがいいのでしょうか」

「それは自由にして良いと思うよ。ただ、我々以外の者が居る時にはそのお名前は使えないからね。きちんと使い分けが出来る自信がない場合は今まで通りの方が良いかもしれないね」

「モモンガ様のお話については皆これで整理できたのではないでしょうか」

「そうだね。次にお話以外のアインズ様の目的についてだが・・・」

「こうやって私たちが、いえ、普段集まることのない者達が交流を深める、というのも当然目的の一つではあるわよね。だからお時間をいただけたわけですもの」

「そうだね。それから今回全ての仕事を一時的とはいえシモベに任せている。それは今後を見据えた訓練かもしれないね」

「どういう意味でありんすか?」

「世界征服が手段だとしても、魔導国が大きくなっていくという流れは変わらない。そうすると今まで以上にシモベやアインズ様が創造されたアンデッド達に仕事を任せる場面も多くなる」

「それに何らかの事態で我々NPCが一人もいない状態というのもあり得ます」

「そうなった場合にも対処できるように、あらかじめ訓練をなさったということね。経験を積めるように」

「さすがはアインズ様。千年、万年先を考えていらっしゃるだけのことはありますね」

「素晴ラシイ」

()たいしゃ()ぞうげ()あおみどり()ボタン()()ハイ()タイシャ()()あおむらさき()たまご()たいしゃ()

「す、すごいね、お姉ちゃん」

「うん、そうだね。本当にアインズ様はすごいね」

「他にも・・・」

 

 

 

 

一方他のNPC達は―――

 

五大最悪の周りには全くと言って良いほど誰もいない。

見事という他ないほどだ。

いくら玉座の間が広大だといってもそれなりの数の者が集まっている。

それだけ近寄りたくないということだろう。

 

「うふふ、皆で集まるのも久しぶりねん」

「左様でございますな」

「モモンガ様のご厚情に感謝しないとねん」

 

(うふふふふ、面談で私の魅力をアピールして小娘やブスに一歩先んじて見せるわよん)

(アインズ様にゴキブリ社交界のご様子をお伝えする良い機会かもしれませぬな)

 

 

 

プレイアデスの周りには一般メイドが取り巻いているが、滅多にない七人勢揃いの歓談を邪魔しない為にも遠巻きにしている。

 

「お姉様方、ご無沙汰致しております」

「オーちゃん、本当に久しぶりね。アイテム越しに話はしているけれど、こうして直接会うのはこの世界に転移してからはひょっとして初めてではないかしら」

「そうですね・・・プレイアデスを結成したときに一度顔合わせを致しましたのでその時以来かもしれませんね」

「元気そうでぇ何よりだわぁ」

「エントマお姉様、ありがとうございます。お姉様もお元気そうで何よりです」

 

おっとりと微笑んでいたオーレオール・オメガが急に表情を引き締めると跪く。

御方の<伝言(メッセージ)>だ。

 

「畏まりました」

 

深々と頭を下げた後立ち上がる。

 

「アインズ様ですか?」

「はい。そうです、ナーベラルお姉様」

「アインズ様はなんと?」

「はい。今暫くはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを預かる必要は無いので場所を移してお茶会などをしても構わない、と」

「・・・・・・さすがはアインズ様」

「お優しいですぅ」

 

(アインズ様はやまいこ様と同じくらいお優しい。以前にもそう思ったけど、本当にそうだわ)

 

「ユリ姉、どうしたっすか?」

「こうやって交流できる機会を下さったアインズ様に感謝しないとと思っていたのよ。以前にも思ったのだけど、アインズ様はやまいこ様と同じくらいお優しい、と」

「本当ですね。ヘロヘロ様と同じくらいお優しいですわ」

「まさに最高の主人ってことっすね」

「そうね。ではお言葉に甘えて、場所を変えてお茶会に致しましょうか」

 




デミウルゴスが一カ所だけ「モモンガ様」と呼んでいる場面はわざとです。

五大最悪についてはごめんなさい。他の三人の口調とか全くわからなくて私には無理でした。
じゃぁ出さなくてもいいようなものなのですが、この後の話にも関わってくるので一応。

プレイアデスについては完全なるねつ造というか、独自設定ですね。

タイトルはどうしたらいいでしょうか

  • 今のタイトルの(仮題)を外す
  • 一瞬だけ使用した「感謝と慰労」にする
  • まだ(仮題)のままにしておく

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