ジャパンライフ問題 配当の可能性浮上、「救済基金」が呼び水に
磁気治療器のレンタルオーナー商法を繰り広げた「ジャパンライフ」の破たんで、返金を受けられない顧客から利用申請が相次いでいる日本訪問販売協会の 「訪問販売消費者救済基金(以下救済基金)」。この申請が呼び水となり、絶望的だった破産管財人による配当の可能性が浮上している。昨年10月の協会の 告知をきっかけに、「救済基金」の利用を申請するため多くの顧客が解約を申し込んだことから、これを根拠として、公租公課や未払い給与の合計を上回る額の 消費税還付を管財人が申告した。一方、告知後に大量の申請が寄せられたと見られる「救済基金」の給付処理は遅れており、破たん後すぐに申請を代行した 被害弁護団から反発の声も聞こえる。
▲〝「救済基金」の利用を前提に、約750人の
レンタルオーナー顧客が契約を解除したことで
消費税の還付申告につながり、還付金10.5億円の
回収可能性が浮上
(写真は、レンタルオーナー契約の説明パンフレット)〝
配当の可能性が浮上したのは、6月10日に行われたジャ社の第4回債権者集会。過去3回の集会で管財人は、一般債権者への配当が難しい旨を説明。
第4回の集会でも、配布された資料では「現時点においては、債権者の皆様に対する配当の見込みは生じるに至っておりません」とされた。レンタルオーナー顧客が契約を解除したことで
消費税の還付申告につながり、還付金10.5億円の
回収可能性が浮上
(写真は、レンタルオーナー契約の説明パンフレット)〝
一方、第4回集会では、19年度(19年4月~20年3月)の税務申告で、顧客のうち約750人によって解除された契約について、 消費税の還付を東京国税局へ申告したことも報告された。金額は約10億5000万円。この還付を受けられた場合、絶望的だった顧客への配当が可能になる見通しだ。
ジャ社の破産手続き開始は18年3月に決定。その後、預金・売掛金などの回収、不動産や工場施設の売却、ジャ社の元幹部らを相手取った訴訟で得られた和解金、 元社員が在籍時に得た奨励金と未払い賃金の相殺などで、約5億7186万円を確保した(6月3日時点、回収費差引き後の通帳残高ベース)。 が、未払い給与等の労働債権と未納の税金など公租公課を合わせた額は約7億3859万円。回収額を1億6000万円ほども上回り、 このため配布資料でも顧客への配当は困難とされた。
これに対して、還付を申告した消費税は優先債権の総額を上回る金額。これまでの回収と合わせた額は16億円超で、優先債権を差し引いた額では9億円ほどとなる。 国内で約7000人、香港で約400人とされる顧客へ配当の余地が出てきた。
消費税の還付申告を可能とした、約750人の顧客によるレンタルオーナー契約の解除。破産管財人室によれば、そのほとんどが昨年の秋以降に申し込まれ、 なおかつ、「救済基金」の利用を前提としたものと見られるという。
理由はこうだ。
「救済基金」を運用する協会は昨年10月、元会員であるジャ社の顧客からの申請受付を今年1月20日で締め切ると告知。申請の要件には、 特商法の法定解除権の行使(クーリング・オフ、過量販売解除権、不実告知等解除権)から1年以内であることが含まれるため、 この要件を満たそうと秋以降に解約の申込が相次いだ。
昨年12月18日の第3回集会でも、管財人が「かなりの数の解約通知が来ている」「特にこの1~2週間、(弁護士等の)代理人がつかない形で、 (オーナー契約を結んだ)本人からの通知が来ている」と説明。破産管財人室のWEBサイトに「救済基金」の情報を載せたり、解約の申込手順をアドバイスする などしていた。
また、17年末のジャ社破たん後、「救済基金」の利用に関して協会が公に告知したのは、この時が初めて。基金の存在を聞きつけた顧客が申請のため解約を 急いだと見られる。
さらに、第4回集会後は、「全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会」の弁護士から他の顧客にも契約を解除するように呼び掛け。追加の還付申請によって、 少しでも配当の可能性を高めたい方針だ。
(続きは2020年7月9日号参照)