去年の話となってしまうが、2019年11月30日を持って仮想通貨取引所Cを退職した。
2018年の3月入社なので1年と8ヶ月の在籍だった。
元々会社自体に興味はなく、2017年10月のビットコインバブル期にCMで流れてきて名前を知ったのと、翌年1月のNEM盗難事件で「へー、大変そうだな」という対岸の火事くらいの認識だった。
当時転職活動中で仮想通貨業界はまったく眼中になかったが、前職で関わりのあった方が事件後の立て直しで仮想通貨取引所Cに出入りしており、そこから声をかけられたのがキッカケだった。社内IT担当と面談し話を聞き、これはもうやることしかないと思った。
入社の決め手の話をすると大抵の人に不思議な顔をされますが…
面談の中で、社内IT管理部門が発足して間もないこと、人数も自分を含め3人ということ、事件後全てを一から立て直しを行わなければならないこと、等から辺り一面焼け野原の状況であると理解し、そこから「自分も立て直しに携わりたい」という思いや「こんなドン底の状況で自分の力がどこまで通用するか試してみたい」という思いが強くなったのが入社の決め手です。
それと同時に色々と新しいことが試せる環境だとも思った。面談終了後すぐ返事を送り、入社する意思を伝えた。
動きづらい、ということではたしかに金融とITというセキュリティ面での制約や事件直後の混乱等ありましたが、様々なところから湧いてくる課題に対して時間内でどの様に対応していくか、という刻々と変化する局面を楽しんでいたところもあり、動きづらさはさほど感じていませんでした。
当時、出来て間もない社内IT管理部門の3人目のメンバーとしてjoinした。社内IT、いわゆる情シスとして社内機器や利用しているサービスの管理運用から社内ネットワークの管理運用等、社内システム全般について広く手掛けていた。数百台ある端末管理のためにJamf ProやIntuneの導入、アカウント管理にAzure ADやOktaを導入する等、新しい仕組みでの運用管理ができる環境を整えていった。社内ネットワークについても、NW機器の設定管理やベンダーとの調整等行っていた。
事件当時の社員が使っていたノートPCが証拠保全の為警察に押収され、その代替機を全社員に準備する必要がありました。PCのセットアップは人力で行っていたので微妙に設定が違っていたり、といった状況で部門の運用負荷が高く、手を空ける為にも運用の省力化が課題でした。
色々な出来事があり一言では表せないが、端的に言ってしまえば仮想通貨取引所Cという会社で働く魅力が失われてしまったから。以下、転職を考える動機となった事象を「会社について」と「部署について」の観点から書き記す。
結局の所、M証券に買収されたことが仮想通貨取引所C(以下C社)の悲劇の始まりだったと今は思う。
入社間もない2018年3月末に買収の話が社内で共有され、翌4月には某会長が来社し「グループ入り」(当初は買収と言わずにグループ入りという表現を使っていた。2019年夏頃には思いっきり買収という言葉を使っていたが)についての経緯の説明と業務再開に向けて頑張ろう、といった旨の話をしていた。
この頃は純粋にM証券を救世主の様に見ていた人も多かったのではないかと思う。
それから時間を置かずにM証券から新たに4名の役員がC社に送り込まれ、某新社長による新体制が敷かれたが、その体制下で行われたのは「新しいことを一切しない」というものだった。業務改善が優先されるのは当然だが、経営陣からの新しい施策の打ち出し等一切なく、逆に社員側から提案があっても却下されたり有耶無耶にされることが多々起きた。同業他社や仮想通貨に関わるエンジニアへのセキュリティ啓蒙のためにTech Blogの記事をエンジニアが書くも公開手前で自粛になる、ということもあった。
一度事件を起こして業務改善命令を食らっている手前、取引所再開までに新しい取り組みをした際に問題が発生してしまうと、最悪業務停止処分で会社自体が立ち行かなくなってしまう、ということを恐れた結果、過剰防衛に走ったのではないでしょうか。
その当時は皆金融庁からの指摘事項に対応する為に動いており、完全に「守り」の状況でした。
更に、社員には事前告知無しで計画を進め、ある日突然公にする、というM証券出身役員のやり方により、至るところで問題が発生し社内が混乱状態になった。
当時、KYC(顧客の本人確認)対応を期日までにシステム化しなければならないという話があり、法務部門を中心に話が進んでいたが、ある時から大手SIerのA社が開発を担当する話が出始め、その費用見積が約6億となるとわかった。殆どの社員はそんな話になっていたことを知らなかった。またA社は運用も担当し、そのシステムが稼働し続ける間は費用が発生するスキームとなってた。
コストダウンや給与改定の見直しが行われている中での高額な費用見積に社内は紛糾した。仮に6億の見積が承認された場合、会社が3ヶ月しか持たないという状況だった上に、本当に6億かかるのか社内の開発陣で見積もった結果、実際は1億かからない見通しであった。当時、隔週で正社員を対象にした全体集会が行われており、社員から役員への質問コーナーがあったが、大概はこういった問題に対する追求の内容であった。
そして、そうした質問に対しての役員の回答も的を得ないものであることが多く、そのたびに紛糾するような状態だった。
結果的に開発を社内で巻き取ることになるものの、元々計画に含まれていない開発のため、開発担当や法務担当が日々遅くまで対応してた。期日には間に合ったものの、これらのやり取りで消耗した為か退職者も発生した。
その後の話では、A社に開発を依頼することは元々M証券内で始めから決まっていたそうだったが、社内の状況を全く無視した進め方で対応できると思っていたのだろうか。
こうした状況に、社員、特にエンジニアからのM証券陣営に対する不満は徐々に強くなり、社内の雰囲気も悪くなっていった。
Slack上で公然と役員批判を行うメンバーと、それを称賛するメンバーも出てくるといった状況だった。更に悪いことに、批判されている本人はそのメッセージへは反応せずだんまりを決め込むことが多く、それが更に火を付ける原因となった。
そうした中、2018年11月になってようやくサービスが再開された。一時は社内に明るさが戻るものの、ブーストするための施策もなく、また事件当時とは違い複数の競合他社がいる中でユーザーが戻ってくることもなく、仮想通貨そのものも低調が続く状況の中で、再開後すぐに停滞する有様だった。当然経営陣に対して批判が起こるものの、返ってきたのはこれまで通り的を得ない回答だった。
皆、経営陣に対してこれまで行ってきた決定について、どのようなプロセスを経たのか、といった背景についての説明や、今後どの様にリカバリーしていくのかについての説明を求めていました。
それに対しての返事が「金融庁を刺激しないための自粛(全てを自粛する必要があったのか?)」「今は市況が悪いだけ(悪くなることは予測できていたのでは?)」「新しい通貨を出せば必ず盛り返す(根拠は?)」といった他責に帰すものばかりで、全くと言っていいほどに話が噛み合っていませんでした
この頃から退職者が増え始め、エンジニアを中心に各部署から人が抜けていくようになった。毎週のように人事発令が発表され、部やグループとしての機能が保てないところも出始めた。更には赤字解消のためのコストカットとして業務委託の解約とオフィスの縮小が行われ、福岡と新宿にあったコールセンターのオフィスは閉鎖となり、そこにいたメンバーも契約終了となった。
急速に人が減る中、「業績回復による黒字達成」という名目で達成会が開催されることになったが、業績回復ではなく人員削減により一時的に黒字になったのは明らかだった。
2019年に入って以降も退職は止まらず、半年で60名以上がC社から去っていった。社員は180名程だったので、実に三分の一がいなくなったことになる。自分が退職した頃には退職者数が70を超えていたので、今では更に社員数は減っているかもしれない。更により問題なのは、人は減っても新しい人が全く入ってこない状況に陥っていたことだ。
C社のWantedly採用ページを覗くと同じポジションの募集が何週にも渡って掲載されていたりするので、本当に人が集まらない状態なのだろう。
2019年11月に新体制の発表があり、社長が交代することとなった。この状況を作り出した社長は最後の挨拶時に憑き物が落ちたかのような晴れやかな表情だった。結局この人やM証券役員がやってきたことは何だったんだろうと思う。
M証券買収後、部署の担当役員もM証券役員へと変更になった。
3ヶ月が経ったタイミングで突然前部長が居なくなり、代わりに新たな部長が誕生した。元々前部長の評判が悪く、マネジメントできる人を新しく採用してそちらにマネジメントを任せようという話が出てはいたが、役員・前部長・新部長の3人で話し合いがされた際に前部長が激昂し出ていったきり戻ってこなくなった。実際どのような話がされたのかは最後までわからなかった。
新部長の元で再始動を、と思いきや実際には超パワハラ体質であり、結果的に2人が転部、1人が休職するという事態となった。人事に掛け合って部長職から外してもらうも、役員の一存で部に留まることとなり、担当役員が部長を兼務するという状況になった。元部長はパワハラ被害部員との接触禁止となり、会社にいるのかいないのかわからない状態となった。
そのうち組織変更により部内にIT推進グループとネットワークグループが新設されることとなった際、ネットワークグループのリーダーを元部長に任せると担当役員から話があった。但し接触禁止は続いていたため、実質肩書だけの存在だった。
上記の歪な状況は翌年の6月まで続き、最終的に元部長が人員整理の対象となり退職したことで終息した。結局会社としては見て見ぬ振り、臭いものに蓋をする、という対応。
元部長の退職と同時にネットワークグループのエンジニアも諸事情で退職となり、ネットワークグループには業務委託社員のみが残る状態となってしまった。この時点でエンジニアは3人で、内一人はグループリーダー、もうひとりはネットワーク未経験のため、自分がグループリーダーを兼務することとなった。とはいっても社内ネットワークは既に構築が完了して動いていて何かを変えるということはできず、実際に行う仕事は日々の監視と保守契約の更新手続きくらいであり、正直やれることは少なかった。コストカットの一環で業務委託社員3人の内2人は8月末での契約終了が決まっており、8月末までに引き継ぎを完了させることが目下の業務だった。
残りの業務委託社員1人は「やることがないから」という理由でネットサーフィンか寝るか室内のボルダリングルームで遊んでるかの日々を過ごしていたにも関わらず、咎められることなく毎月80万の契約が発生していた。正直こちらの契約を切って2人に残ってもらうべきだったのでは?と今でも思う。
6月末に急遽担当役員兼部長のM証券への帰社が決まり、IT推進グループのグループリーダーが部長に、もうひとりのエンジニアがグループリーダーへと格上げになった。新しくグループリーダーになったエンジニアとは進め方や考え方の違いであまり折り合いが良いとは言えなかった。
また彼がした仕事にミスがあった場合こちらで回収して対応することも多く、仕事の質もあまり良いとは言えなかった。彼がグループリーダーになって以降、兼務であるはずにも関わらず社内リソースへのアクセスが制限された。実質的な締め出しをくらい、ネットワークもやれることが少なく、飼い殺しにされていると思い部長にその旨を伝えたが部長からは「そんなことない」の言葉しか出てこなかった。
8月末でメインの業務委託社員も契約が終了し、9月からは実質1人でネットワークの管理を行うこととなった。既存のネットワークを維持しつつ、新しく運用負荷の少ないネットワークにリプレースするための方法を検討するなどしていた。
そんな折、前担当役員の代わりに担当役員になった人が席の近くまでやってきた。元々mixiや楽天でCTOや技術役員を担当していて社内のシステム更改も担当していたとのことである程度理解のある人間だと思っていたが、話をする中でとある言葉が発せられた。
「ネットワークって暇だからね」
雑談のタネとして口をついて出たのかもしれないが、少なくとも今目の前で一人でネットワークを担当している人間に対して言っていい言葉ではなかったし、それを聞いて「ああ、その程度の認識でしかないんだな、大手出身の頭しか持ってないんだな」とその人に対する認識を改めた。実際、自分の退職前に全社向けに開かれたエンジニアの給与改定についての説明会で、社内ITは10%減という話がされていた。会社としても期待をしていないメッセージだと自分は受け取った。
ファンズ株式会社に転職し、コーポレートエンジニアとして社内ITやセキュリティについて整備を行っている。ファンズはまだまだ人数が少ないので、少数精鋭で裁量広く任されているという点が良い。風通しもよくメンバーそれぞれが自律的に動く組織でとても働きやすいと感じている。会社としても様々なことに対して決定するまでのスピードが速い。社内での会話も、皆真面目に話をするのでバリュー(伝え方上手であろう)が体現されている。
経営陣との距離感は全く感じない。社内の情報も皆自ら発信していくのでかなりオープンな状況が保たれている。これからどんどん成長していく会社だと思っているし、会社やサービスの成長に寄与できるよう頑張っていきたい。
・gitおよびGithubなどのサービスを活用した開発経験
・Webアプリケーションの開発経験(業務・趣味など問わず)
・テストの計画・設計や実行などのソフトウェアテストの知識・実践経験
・Webサービスに関する基本的な前提知識
・GithubやSlackなど、Webアプリケーションの開発チームで使用されるサービスの利用経験
・Scalaによる開発経験(特にPlay・Akkaを使用した経験)
・データベース(MySQL/MariaDB)・ミドルウェア(Redisなど)に関する基礎的な知識
・業務・サービスで実現すべき機能の要件・仕様を他者に理解できるよう整理し、設計と実装までを一貫して行える方
・Webの基本的なユーザーインターフェイスに関する知識
・Webサイトの実装に必要なREST APIを設計するスキル
・HTML・CSS(Sass)の使用経験
・JavaScript (ES2015以降) に関する知識・使用経験
・React・Reduxの使用経験
・無形の商品/サービスをB2B向けに営業した経験(コンサル/ソリューション営業等)
・大手企業の上位役職者(部長・役員)に対する営業経験