環境・ごみ問題の専門家が、マレーシアで1日当たり1,000万枚以上の使用済みマスクが廃棄されているとの試算を明らかにした。適切に処理されていないため、社会問題として警鐘を鳴らす。10日付スターが伝えた。
環境・ごみ問題の専門家、テン・リーチョン氏は「医療従事者などは1日に複数枚使うこともあるほか、子どもや年配者、外国人も含めると、1日の使い捨てマスクの消費量は推計から50%増え、1,500万枚に達するかもしれない」と述べた。
テン氏によると、マスクは薄くて軽量なため、一般的に廃棄コストはさほどかからない。ただ、「非分解性の素材でできているため、埋め立て地に廃棄すれば、環境コストが非常に高くなる」(テン氏)という。また、路上や排水路に捨てることで、洪水を引き起こす原因になるほか、海洋ごみになれば、有害なマイクロプラスチック(直径が5ミリメートル以下の微小なプラスチック)が食物連鎖によって人の口に入る恐れもあると指摘した。
環境問題に取り組む非政府組織(NGO)、サハバット・アラム・マレーシアのミーナクシ・ラマン代表は「使い捨てマスクは(廃棄において)危険な物質も含まれるため、紙やプラスチック、ガラスを分離するのと同様に分別廃棄が必要だ」と述べ、政府に専用ごみ箱の設置を要請したことを明らかにした。
また、マスク着用が今月から義務化されたため、ミーナクシ氏は「環境・水省や保健省、住宅・地方政府省に対し、再利用が可能なマスクの調達方法や消費者向けのマスクに関するガイドラインの策定も要請した」と話す。
■マスクの国産切り替え、政府検討か
政府は、国内でマスクの大量消費が見込まれることから、国産への切り替えを視野に入れているという。
ある情報筋は「現在、国内で供給されているマスクはほとんどが中国から輸入したものだが、長期化する新型コロナウイルス感染症の流行に対し、政府は国家安全保障上の問題として国産奨励を計画している」と語った。具体的には、マスクの生産者向けの助成金やインセンティブの導入、マスクに使用されるゴムなどの原材料の国内調達などだ。
ただ、同情報筋によると、マスク市場は参入障壁が比較的低く、中国では、コロナ禍を追い風に進出したものの、供給過多に陥り生き残りに必死な企業も少なくないという。仏AFP通信のデータを引用する形でスターが伝えたところによると、中国では20年上半期(1~6月)に自動車メーカーからおむつメーカーまで7万3,000社が新規でマスク生産に乗り出し、「異業種からの参入によって、品質の低下だけでなく、価格破壊をもたらした」(同情報筋)。
また、マレーシア政府がマスクの卸売・小売価格に上限を設けていることが、新規参入の障壁となっている。
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