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 コロナ収束までの特例として、受診しやすいよう緩和されたオンライン診療の規制を今後どうするか。厚生労働省の検討会で、新たなルールのあり方が議論されている。

 規制改革を掲げる菅政権は推進の旗を振るが、安全性など課題も多い。安心して利用できる医療の選択肢となるよう、患者本位の見直しにするべきだ。

 オンライン診療は、パソコンやスマホなどの画面を通して自宅などで診察や薬の処方を受ける仕組みだ。離島やへき地での遠隔診療として始まり、18年には指針が作られ診療報酬にも位置づけられた。ただし初診は対面診療が原則で、対象も生活習慣病などに限られていた。

 コロナ禍のもと、感染を防ぎつつ医療へのアクセスを確保する方策として、今年4月から電話診療も含めて初診から利用できるようになり、対象もすべての病気に広がっている。これの恒久化の検討を、菅首相は田村厚労相らに指示した。

 この間、通院の負担がなくなり便利さを実感した人もいるだろう。冬場のウイルスへの感染予防や、地域の医師の偏在対策にも役立つと期待される。

 一方、オンライン診療では触診や検査ができず、得られる情報には限界がある。電話診療はなおさらだ。対面ほど十分な診療ができないのではないか、病気の見落としや誤診が起きないかといった声は、患者、医師の双方から聞かれる。

 そうした不安も影響してか、電話・オンライン診療に対応する医療機関は10月末時点で15%、初診から対応する所は6%にとどまる。実際に初診から実施した所は1%に満たない。

 なぜ利用が広がらないのか。どんな場合にオンライン診療が効果的で、どんな点に課題があるのか。利用実態を詳しく分析・評価し、議論を深めたい。

 高齢者など機器の扱いに不慣れな人や、経済的な事情で利用が難しい人もいる。そうした人たちへの配慮も忘れてはならない。

 今回の特例でも、薬の乱用や横流しを防ぐため、初診で麻薬や向精神薬を処方することは禁じられている。だが、これに反した事例が9月までに175件あった。

 田村厚労相は、安全性を確保するため、初診での利用は電話ではなく画面を通しての診療で、「普段からかかっている医者」に限る考えを示しているが、具体的な要件を詰めるのはこれからだ。

 オンライン診療をどう上手に活用するか。地域医療の新たな形として普及・定着させるためにも、課題に即したルールづくりが欠かせない。