「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)」はこうして結ばれた。ロンドン条約は海洋環境の絶対的保護を前提としているため、指定された許容物質を除いては、唯一の方法でない限り投棄を原則的に禁じている。条約によると、放射性廃棄物は投棄できない。ただし、国際原子力機関と当事国が採択した免除濃度以下なら可能だが、その基準については締結国間での合意を前提としている。日本政府は、ロンドン条約は公海上の投棄防止のためのものであり、福島の汚染水の放出は自国海域なので関係ない、と主張するかもしれない。しかし、ロンドン条約は海に続く河川水にも適用することを原則としている。また日本は、1993年にロシアが日本周辺の東海(日本海)に低レベルの放射性廃棄物を投棄した当時、激しく抗議した経緯がある。そのため近隣国家の懸念を軽んじてはならない。
日本政府は、韓国も原発から放射性廃棄物を排出していることを主張する可能性もある。しかし、これは福島の汚染水とは別問題だ。経済活動はやむを得ず環境に影響を与える。汚染物質に対して排出基準を設けるのは、経済的利益を得ながらも環境への影響を最小限にとどめるためだ。そのため、原発運営による廃棄物に許容基準を設け、その代わり安価で安定したエネルギーという利益を得るのだ。韓国の原発と同様、日本の原発運営による廃棄物の放出は理解できる。しかし、福島の汚染水は、このような原発の運営からやむを得ず出たものではない。