GoTo不正 厳しい対処が必要だ
2020年11月7日 07時33分
国による観光支援「Go To トラベル」事業をめぐり不正が相次いでいる。コロナ禍で打撃を受けている宿泊施設が被害を受けており、見過ごせない事態だ。国は不正に厳しく対処すべきだ。
トラベル事業では十月以降、宿泊代の割引のほか旅行代の15%にあたる「地域共通クーポン」の利用も可能となった。今回狙われたのは紙ではなくスマートフォンなどで利用する電子クーポンだ。
電子クーポンは、ホテルや旅館などに宿泊する初日の午後三時からスマホに予約番号などを打ち込めば手に入る。この仕組みを悪用し、クーポンだけ入手した後にチェックインせず姿をくらます手口が横行している。
宿泊施設は通常、当日比較的遅くまで客のチェックインを待つ。その間、クーポンだけ不正に取られていても気が付きにくい。被害が発覚するのは翌日以降となるケースが大半だろう。
さらに行為を実行した側は虚偽の名前やメールアドレスで予約を入れている。予約システムの盲点を巧みについており、極めて悪質性が強い。
事業を所管する赤羽一嘉国土交通相は「不正使用があれば警察と緊密に連携する」と述べている。詐欺や偽計業務妨害など犯罪の可能性も否定できない行為であり、厳しい対処は当然だ。
一方、宿泊を仲介する旅行会社にも予約者の名前、住所、メールアドレスなど基本情報をしっかり確認するよう強く求めたい。
宿泊施設の多くはコロナ禍で売り上げが激減している。被害に遭ったホテルや旅館は、予約を受けて食事などを用意して待っていたが、客は来ない上にキャンセル料も取れなかった。事業は苦境に立つ観光産業を救済するために実施しており、今回のような行為には強い憤りを感じざるを得ない。
トラベル事業には約一兆三千億円の予算が投じられ、来年度以降も継続する方向で調整が図られている。しかし事業に対しては施策の恩恵が全体に行き渡っていないとの批判もある。その上に不正が横行しているのであれば、巨額の税金投入への理解はとても得られない。
トラベルに限らずGoTo事業全体については、制度設計に十分な時間が取れなかったため多少の不備があるのは理解できなくもない。だが今後も事業を継続するのなら、不正の温床を躊躇(ちゅうちょ)なく一掃し不公平感の払拭(ふっしょく)に全力を挙げるべきである。
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