今回は、1988年にリニューアルしたサントリーオールドを飲みます。

白州「東」モルトを加えたブレンド

old1988_1以前にサントリーの白州蒸溜所へ見学をした記事を書いた際、この蒸溜所には白州「西」蒸溜所と、白州「東」蒸溜所の2つがあるとも書きました。

白州蒸溜所は1973年に建設されましたが、その時の蒸溜所が「西」蒸溜所になります。
この「西」蒸溜所では、東蒸溜所よりも大型のポットスチルで、スチームを通したパイプをポットスチルに巻き付けるように設置して加熱する方法を採用していました。

しかし出来上がった原酒は、当時の社長にして二代目マスターブレンダーだった佐治敬三にとって、個性の弱いものであったらしく、より個性を出すよう、より小型のポットスチルに、ガスを使った直火蒸溜を採用する新しい蒸溜所を作らせることとなりました。

それが1980年に建設された白州「東」蒸溜所です。

その後西蒸溜所で作られたモルトは1980年前半のオールドにも使われたと思われますが、西蒸溜所は閉鎖され(施設は存続)、東蒸溜所が現在の「白州蒸溜所」として運用されています。

1988年に、十分な熟成を経た「東」のモルトをブレンドに加える形で、サントリーオールドがリニューアルしました。


翌1989年には酒税の改正によって等級制度が廃止され、サントリーが新たなエンブレムとして「響」をモチーフとしたものを採用してからも継続して販売されました。

テレビCMでは、発売当初は作家の村上龍が出演し、その後サントリーレッドのCMに出演していた大原麗子が、市川崑監督の手がけるCM作品の続きとして古風な主婦役として宣伝をしました。

1994年には、よりマイルドなブレンドに改められた「マイルド&スムーズ」がリリースされましたが、従来のオールドも「リッチ&メロー」としてしばらく併売されました。

2000年代に入ると、マイルド&スムーズのブレンドに一本化され、幾度のリニューアルを経て現在に至っています。

今回入手したのは、特級表記のあるボトルで、1988年に発売された初期のボトルと思われます。翌年4月から等級制度が廃止され、表記がなくなったからです。
実際に飲むうえで、私の手元にある比較的状態の良い1980年代前半のボトルも併せて飲み比べたいと思います。
old1988_2

癖とキレを備えたブレンド

グラスからの香り、液色

1988年のものでは、シェリー樽原酒由来のレーズンの香りが先行し、後からリンゴの香りも続きます。
液色は赤みがかった少々濃い琥珀色です。

一方で1980年代前半のものでは、レーズンの香りはあるものの、後からカラメルの甘い香りが続きます。
液色は、少々濃い琥珀色です。

ストレート

1988年製のものは、アルコールの刺激が多少訪れた後、リンゴの香りが前に来て、レーズンが続き、軽くピートのスモーキーさを持ちつつも、バニラ、バナナの香りが続きます。
味わいは、アルコールからの辛みはそこそこであるものの、軽いほろ苦さの後に酸味と甘みが広がります。

一方で1980年代前半のものでは、レーズンの香りが先行し、後から青りんご、シナモンと続きます。ピートのスモーキーさもそこそこ感じられます。
味わいは、アルコールの辛みは少なめで、全体的に甘みが強めで、酸味は抑え気味です。

ブレンドを、甘みを主体にしたものからほろ苦さや酸味を加えて癖を増やした印象です。
ただどちらも、ストレートで香りが広がる印象があまりありません。

ロック

1988年製では、ピートとともにレーズンの香りが強く揮発し、その後リンゴの甘い香りが包み込む印象になります。
味わいは、軽くほろ苦さがあるものの、甘みが強くなり、酸味もほのかに感じられます。

1980年代前半のものでは、しっかりしたスモーキーな香りが先行し、ブドウとリンゴの香りが半々に訪れます。
味わいは、苦みが少々目立った後、甘みが広がっていきます。

香りのバリエーションは1988年のもののほうがシャープで広がりがあり、味わいはほろ苦さをうまくアクセントにしている印象です。

当時はウイスキーをストレートで飲む人が少なかったと思われるので、ロックや加水で香りが広がることを前提にブレンドをしたのかもしれません。

ハイボール

1988年製では、リンゴの香りが先行し、続いてレーズンが続き、奥からほんのりピートが感じられます。
味わいは、炭酸の酸味とともに軽く苦みがあります。甘みは感じられません。

一方で1980年代前半のものだと、先にシナモンのような芳しさが表れ、その後にブドウの香りが続き、バニラの甘い香りが締めます。
味わいは、ほろ苦さが多少あるものの、全体的には甘みがしっかりしています。

香りや味わいは全く対照的で、甘ったるいブレンドからフルーティながらもキレのあるブレンドに変わっているのがよくわかります。

まとめ

この1980年代のビフォーアフターにあたる2つのボトルは結構対照的でした。
1980年代前半のボトルは甘みが強めで、ウイスキーを飲みなれていない初心者でもとっつきやすい印象を受けました。

しかし1988年にリニューアルしたブレンドでは、ピートが感じられ、リンゴの香りがレーズンと絡みあってフレッシュ感が増し、一方で苦みを利かせるキレもありました。

現行のシングルモルト白州やリザーブのような青リンゴ、柑橘系のさわやかな香りはありませんが、「東」蒸溜所の癖のある香りと味わいによって、甘さ一辺倒の印象から複雑な広がりを見せるボトルへと変貌したのは十分感じられました。

ついでに現行品も飲んでみましたが、ロックではシナモンとバニラの香りがふわっと先行してレーズンはほのか、味わいは軽くスパイシーさがあるものの、後味は甘みがメイン。ハイボールだとカラメルやバナナの甘い香りに、味わいも甘みが強めと、1980年代のボトルとは異なるキャラクターでした。

なお今回のボトルは、特級表記にこだわらなければ、金色の枠のついたラベルで、1994年以降だと「リッチ&メロー(Rich & Mellow)」という表記のついたものまでで、ネットオークションで探すことが可能です。
一方で店頭や通販は入手が難しいでしょう。

<個人的評価>

  • 香り B: レーズンとともにリンゴの香りも主体。ピートもそこそこ。バナナ、バニラも。
  • 味わい C: ほろ苦さが先行し、酸味、甘みへと続く。加水で苦みが増え、甘さは抑えられる。
  • 総評 B: 現行品と比べても癖やキレがあり、興味深い。