有機揮発性化合物を吸着するフィルター付きマスクが手放せないという中塚さん(京都市中京区)

有機揮発性化合物を吸着するフィルター付きマスクが手放せないという中塚さん(京都市中京区)


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 京都市中京区で飲食店を営む中塚智彦さん(44)は16年、仕事中に店内で突然倒れ、入院した。17年に化学物質過敏症との診断を受けた。厨房で大量に使っていた塩素系漂白剤や、従業員の髪や衣服からにおう人工香料が原因と考えている。


 のどの痛みや涙に加え、疲れやすくなり、記憶力も低下した。外食や旅行にも行けなくなった。


 仕事や日常生活がままならないつらさを分かち合おうと、今年9月に「化学物質過敏症を話し合う会」を自店で開いたところ、大阪や兵庫、滋賀などから約30人が集まった。学生や主婦ら女性が多く、口々に悩みを吐露した。中塚さんは「周囲にわがままを言っていると思われて、苦しさを理解してもらえない。当事者は家庭や職場で孤立している」と話す。


 洗剤をやめて袋入りのマグネシウムで衣類を洗濯し、風呂でもシャンプーや石けんを使わない。仕事中や外出時は、急な化学物質のにおいで失神しないよう、フィルター付きマスクを首から提げている。「みな無意識に化学物質を吸い込んでいる。今は自覚のない人でも、いつ発症するか分からない。『いい香り』は本当に必要でしょうか」と問いかける。