BT-42 は BT-7M のガソリンエンジン仕様ベースなの?(その2)
■ エンジン・エアフィルター
【BT-7 Mod. 1937】まで、エアフィルターはエンジンハッチ外側上面に装着されていました。エンジンハッチを開けた車内は下写真の様になっています。
エンジンの上面中央には、エアフィルターとハッチ越しに繋がる吸気部があり、エアフィルターで濾過された空気はハッチ中央の穴からこの吸気部を経由して供給されました。
一方、V-2・ディーゼルエンジンの【BT-7M】では、エアフィルターは車内のエンジン上面に移動し、エンジンハッチからは離れます。
エアフィルターの性能的には大差ないと思われますが、エンジンハッチ上の車外装備では損傷も多かったと思われ、エンジン室内装備は望ましい形態でしょう。
■ エンジンハッチ・ベンチレーターカバー
尚、上写真の様に【BT-7M】ではエンジンハッチ上に小径のベンチレーターカバーがあるのみですが、このカバーは実は【BT-7 Mod. 1937】までの車両にも存在していました。
下は【BT-7 Mod. 1935】のエアフィルター・ユニットの断面図で、中央の水色に塗った部分が件のベンチレーターカバー。周囲のフィルターパーツに覆われており、通常は外から見えません。【BT-7M】でエアフィルターが車内に移動した際に、このベンチレーターカバーだけはプライマリの吸気部として残され、同時に露出した訳です。
■【BT-7M ver. NKVD】のエアフィルターは?
では、M-17-T・ガソリンエンジンを搭載した【BT-7M ver. NKVD】に於いて、エアフィルターはどういう形態で装着されていたのか?【BT-7 Mod. 1937】のように車外装備だったのか、それとも【BT-7M】に準じて車内装備だったのか…? 残念ながら、これは現在のところ明らかではありません。
そもそも【BT-7M ver. NKVD】というのが【BT-7 Mod. 1937】と仕様的に何処が違うのか、殆ど全く謎。まぁ恐らくは【BT-7 Mod. 1937】に準じた仕様だったのだろうと想像は出来ますが…。
■【BT-42】のエアフィルターカバー
さて、パロラ戦車博物館に現存する【BT-42・Ps. 511-8】が装着しているエアフィルターのカバーは、一般的な BT-7のエアフィルター・カバーとは若干異なった特徴を持っています。
【BT-7 Mod. 1937】までのカバー上面は、2箇所に付く「取手」以外はフラットでしたが、【BT-42・Ps. 511-8】に装着されているカバーは、上面中央に(開閉可能な?)円盤があります。
このタイプのカバーを装着した BT-7の写真は殆ど無いんですが、後部から撮影された画像をあらためて見てみると、各部OVMの装備位置が【BT-7M】に準じた仕様であることが判ります。具体的には、車体後部にあった収納箱が無くなり、長い棒状のもの(何だっけコレ?)が装着されており、ジャッキの搭載位置も左右フェンダーの前端に移動しています。
つまり【BT-7M】とはその生産時期がかなり近しいと思われ、ひょっとしてひょっとしたら、この「円盤付きエアフィルター・カバー」は【BT-7M ver. NKVD】に固有の装備だった…なんてこともあるかもしれませんね。
いつか、工場仕様書等が公開されて、その辺が明らかになると良いですが、果たしてそんな日は来るのだろうか…(尚、本稿引用の画像は全て ebay 出品画像によります)。
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