新型コロナ感染者少なかったのに…北九州市で病床が逼迫した理由
全国で新型コロナウイルスの感染者が急増したこの夏、新規感染者が比較的少なかった北九州市で、実は一時的に感染症の専用病床が逼迫(ひっぱく)し、医療崩壊の危険性が高まっていた。背景には高齢化率が高い地域ならではの事情が透けて見える。関係者の証言とともに検証した。
「空いている病床はあるが、受け入れ態勢が整っていない」。8月4日から19日にかけて、60~90代の入院患者9人とスタッフ3人のクラスター(感染者集団)が発生した戸畑けんわ病院(同市戸畑区)。患者を専用病床がある医療機関に転院させようと、担当者が保健所に連絡したが、調整が難航し、すぐに対応するのは難しいとの返答だった。
専用病床がないため、4人部屋を個室として使い、新規の入院を停止。濃厚接触者となったスタッフを出勤停止にして他病棟から応援を入れたため、全体的に人繰りが厳しくなった。結局、転院までに6日かかった患者もいた。約4千万円の減収となった。塩塚啓史専務理事は「新型コロナの患者を受け入れるには病床もスタッフも十分ではない。スタッフは疲弊し、ぎりぎりの状態だった」と振り返る。
この時期、福岡市では新規感染者数が116人に達した日があったのに対し、北九州市は最多で33人。比較的、病床に余裕があってもよさそうだ。だが現に、市内の専用病床80~100床(日によって変動)のうち、8月6日時点で66床が埋まるなど満床に迫りつつあった。北橋健治市長は「だんだんと窮屈になってきている」と危機感をにじませていた。
同市特有の事情とは、8月1日から26日にかけて、二つの介護施設と「昼カラオケ」の飲食店4店でクラスター(感染者集団)が発生し、60~90代だけで計63人が感染したことだ。この間、新規感染者のうち60代以上は福岡市が約17%だったのに対し、北九州市は約50%。全国的に「若者中心で無症状が多い」といわれていたが、高齢化率30・6%(今年1月現在)と政令市で最も高い同市では、半数が高齢者だった。
高齢者は重症化リスクが高く、福岡県が用意したビジネスホテルでの宿泊療養の対象にならない。おのずと入院する人が増える。
専用病床を持つ市立八幡病院(同市八幡東区)では、7月下旬から8月上旬にかけて高齢の感染者の入院が急増した。伊藤重彦院長は「高齢者は持病がある人が多く、新型コロナ自体の症状は軽くても重症化しやすい。相当な人手をかけて治療する必要があり、病床いっぱいまで患者を受け入れられるとは限らない」と明かす。
北九州市出身の和田耕治国際医療福祉大大学院教授(公衆衛生学)は「高齢化は全国的に進んでおり、北九州で起きたことはどの地域でも起こりうる。病床の逼迫を防ぐためには新規感染者の数だけでなく、高齢者の割合も注視していく必要がある」と注意を呼び掛ける。市医師会の吉田雄司感染症担当理事は「冬の感染再拡大も懸念されている。高齢者にうつさないため、本人だけでなく、家族や施設職員ら周りの人も感染対策を徹底しなくてはならない」と強調している。 (野間あり葉)
















