わずか4歳で戦争孤児に… イラン出身サヘル・ローズさんを救った“母の言葉”

ざっくり言うと
自分は「いらない子」と思い込んでいた子ども時代 「磨けば石も輝ける」の一言に力をもらった
困難を抱える子どもたちに伝えたい! 「血はつながってなくても、心で愛し合える」
2020/10/23 増田明美のキキスギ? サヘル・ローズさん(タレント)

スポーツ

2020/10/23

ゲストはイラン出身のタレント・サヘル・ローズさん。戦争で家族を失い、幼少期を施設で過ごしたサヘルさんの人生を大きく変えたのが、養母であるフローラさんとの出会いです。自らの壮絶な体験をもとに、今は日本の児童養護施設で暮らす子どもたちの支援にも取り組むサヘルさんが明かす、“母”への思いとは…。


サヘルさん: 小さいときにお母さんに言われてすごいうれしかった言葉があって、今のお母さんに。
自分が必要とされていないのが、3年間も施設の中にいて、いろんな人が来るけども見てくれない、養子縁組をしてくれないって、どんどん自信を失ってくるわけですよ、(施設に)残された子どもたちというのは。
社会に対し、自分たちが「いらない子」なんだって、別に生まれる場所も選べたわけじゃない、生まれる時代も選べたわけじゃない、ここにいたくているわけじゃないのに、っていうすごく悲しみがあって、自分はきっと「ただの石」なんだろうなと思って落ち込んだときに、お母さんが私を引き取って、私がすごく自分に自信がなかったときに母が言った言葉が「周りからあなたを見た人たちは、きっとあなたを最初見た印象はただの石に見えるかもしれない。でも、ちゃんと磨けば石も輝けるの、私はちゃんとあなたを立派な輝ける宝石にしてみせる」って言ってくれて。
可能性はどんな人間にもあるから自分を信じて生きなさい。人はちゃんと自分でレールを敷けるものだと、私の背中を押してくれたのが今のお母さんの言葉。
増田さん: ご家族13人でしたっけ、亡くしてしまって、で、その地域の方もほとんど亡くなってしまったときに、サヘルさん、4歳ぐらいでがれきの下にいらして、今のお母さんが大学生でボランティアでサヘルさんを救ってくれて、でも大学生だからまだお母さん自分の生活も精一杯で、1度(サヘルさんは)孤児院に行かれて、(フローラさんが)大学卒業してからまた引き取りに来てくれたんですよね。
サヘルさん: そうなんです。そのとき、彼女がもう1回足を運んでくれた大きな理由は、たまたま私がテレビに出させてもらったというか、他の子たちも一緒にですけれども、「親になってください。親を探しています」っていうコマーシャル的なものがテレビで1回だけ流れたんですね。
それを彼女が見て、来てくれて。施設で再会した彼女を純粋に見た瞬間に言った言葉が「お母さん」っていう言葉だったんです。自分の生みの親の記憶もあるわけではないし、誰が自分のお母さんなのか、自分の顔を今、鏡で見ても自分が誰似なのかが分からない顔なわけですよ。自分の生みの親を知らないので。
でも、彼女を見た瞬間に、やはり「お母さん」って、心の底から出た言葉がそれだったんです。その言葉を彼女が聞いた瞬間、この子を引き取りたい、この子育ててあげたいと思ってくれたきっかけだったそうです。
増田さん: 運命ね。運命を感じる。
サヘルさん: そうですね、何か必然だったと思います。

杉嶋アナ: 日本の児童養護施設をサポートするという活動もされていますけれども、そういうことがきっかけになって始められたんですか。
サヘルさん: 正直なこと言うと日本に児童養護施設があるってこと、私は思ってもみなかったですね。
日本って経済的にこんなに豊かで私の国とは全然違うわけですよ。なのに日本には600もの児童養護施設があって、親元で生活ができない子どもが4万人以上いるわけですよね。
増田さん: そんなに! 私も知らなかった。そんな…。
サヘルさん: 今おっしゃられたように、多分日本の方々も私と同じように、まさか自分の国でこれだけ多くの子どもたちが生きづらさの中で生活しているとは思っていないと思うんですね。
児童養護施設は決して悪いところではなくて批判は全然していなくて、だけど子どもはなるべく家庭の中で育ってほしいんですよ。家族の中で養子縁組できなかったとしても里親だったりとか1対1の関係の中で、あの学べること、育めること、夢を語れる大人がそばにいてくれることって心のケアに変わってくるんですよね。
だからこそ私は、そういう施設にかかわることで、子どもたちひとりひとりがのちに退所したときに、(施設には)18までしかいられないんです。18で出たら退所して自分たち自力で生きていかなければいけない。ですが、親と一緒に生活すれば例えば電気代の払い方、年金がこれからかかることも、保険料とかいろいろ分かることがあるじゃないですか、親がやってくれることも。
増田さん: 暮らしの中でね。
サヘルさん: でも施設の子たちはそれが分からないので、出たあとに免許取りたくてもお金がないので取れない、大学いきたくても、なかなかそのお金を払えるわけではない。電気代の払い方もできず何も知らない。
20歳になったら急に年金の話が出てくるっていう、本当に彼らは誰にも相談できる大人がいない中で社会の中で必死に生きていかなければいけない。そういう子どもたちをちゃんと生きやすいレールにのせてあげること。
次の橋渡しをすることが、自分の経験を生かして、この仕事を通して出会った人たちをつなげることが自分の一番今やっている支援のひとつです。
増田さん: レールにのっけるってそれ、すごく分かる、そういうことをサヘルさん支援活動としてやられてるんだ。
サヘルさん: 関わり方はさまざまで、もちろんおもちゃだったりとかお菓子だったりとか遠足つれていったりとか、そういうこともするんですけども、でも一番大切なのは、大人になって社会に出たときに彼らがどう社会と関わっていくか。
また社会のことも好きでいてほしい。自分たちは見放されたんではなく。
多くの子どもたち、7割以上が虐待によって施設に入ってるんですよね。でもほとんどの子が親を愛してるんですよ。生みの親を、憎んでいる子はほとんどいなくてみんな親を愛しているけれども、だけどさすがに生活一緒にできない、だからこそ生きていくしかない、ひとりで。
血はつながってなくても、今の私とお母さんと同じように、心で愛し合える、心で結び付けることを私が一番体感できているので、その子たちにもそういう大人と結び付けていってあげたいと思っています。

番組ではこのほか、8歳で来日したサヘルさんに、日本語を教えてくれた当時の校長先生との心温まるエピソードや、さまざまな課題を抱えるイランのスポーツ事情についてもお話しいただきました。ぜひ聴き逃しサービスでチェックしてみてくださいね。

番組情報

番組名 増田明美のキキスギ?
放送日時 [R1] 毎週金曜 午後8時05分~8時55分
出演者 増田明美、杉嶋亮作アナウンサー
番組HP https://nhk.jp/kikisugi

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