AEDについて

2019.06.03

心室細動などの症状への対処法として有効なAED。適切に使用するためには、使い方を含め、それ相応の知識が必要となります。一般の人々でも使用できる医療機器とは言え、いざ使用が迫られる場面では躊躇してしまうことも十分に考えられます。傷病者の救命率を上げるためにも、正しい知識を持ってAEDを扱えるように備えておきましょう。

AEDの仕組み

AEDは主に心室細動という痙攣状態の心臓を元の拍動に戻すための役割を果たします。それでは、AEDはどのようにして心臓のリズムを取り戻させているのでしょうか。これには心臓の仕組みが深く関わっています。

心臓は、洞結節と呼ばれる部分から電気信号を発生させ、心臓の筋肉を収縮させるように司令を出しています。この電気信号が洞結節を中心とする刺激伝導系を通って心臓の各部を順番に収縮させることにより、心臓は血液を全身に送り出すポンプとしての機能を保っています。そして、この電気信号を検知して波形として書き出したものが心電図です。また、心臓の疾患などで拍動に異常がある場合に、本来心臓自体が持っている電気信号の発生や伝達を代わりに担うのが心臓ペースメーカーです。

このように普段は電気信号によってリズミカルに拍動している心臓ですが、急に電気信号が乱れ、速い拍動や不規則な拍動を引き起こす場合があります。これが心室細動や心室頻拍と呼ばれるものです。心臓が不規則に細かく動く状態(細動)になっているため、全身に血液を送るポンプ機能が失われてしまいます。そして、血液とともに脳に送られる酸素が減り、やがて意識を失い、死に至るケースも少なくありません。

AEDは、このような状態に陥った心臓に強い電気ショックを与えることで、乱れた電気信号をリセットさせる働きをします。止まった心臓を再び動かす、というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、こういった仕組みを知れば、AEDは心臓本来のリズムを回復させるための準備を行う機器であることがわかるのではないでしょうか。

AEDの効果が期待される症状

上記の通り、AEDは心臓の拍動を正常に戻すための重要な役割を持ち、一般的にその効果があるとされるのは、心室頻拍や心室細動という不整脈です。

専門的な内容となりますが、心室頻拍は電気信号が洞結節ではなく左心室または右心室から送り出され、心臓内を正常に通過せずに拍動に異常を起こします。心室頻拍の状態が続くと、脈が飛んだりめまいが起きたりし、やがて意識を失い心臓が停止することも。心室頻拍は薬物で治療できる場合もあります。

一方、心室細動は最も危険な不整脈と言われ、心室内のあちこちから不規則な電気信号が発生し、1分間に300回を超えるような速さで心臓が動き、痙攣しているような状態となります。心室頻拍から心室細動に移行する場合もあります。心室細動は意識を失うのが非常に早く、直ちに電気ショックによる除細動を行わなければなりません。

AEDはこういった状態の心臓に電気ショックを与えますが、そのエネルギーは電圧1,200〜2,000V、電流30〜50Aと言われます。非常に大きな数値に驚くかもしれませんが、心室細動に唯一効果的とされるのが電気ショックによる除細動であり、一般の人々でも扱えるAEDは、いち早く心臓の異常に対応できる重要な手段と言えるでしょう。

ただし、AEDの効果が期待できるのは、心室頻拍や心室細動などによって心臓の機能が停止した「心停止」の傷病者です。心臓が活動していない状態の「心静止」に至ると、AEDは効果がないとされます。また、人が意識を失う原因はこういった心臓の異常だけに限りません。
それでは、もし意識を失って倒れている傷病者を発見した場合、一般の人はAEDを使用すべきかどうかをどのように判断すればよいのでしょうか。

こういった場合は、まずは躊躇わずAEDを早急に用意し、電極パッドを装着することを優先しましょう。すべてのAEDには自動的に心電図を読み取る機能が備わっており、除細動が必要と判断された場合のみ電気ショックが行われる仕組みになっています。心静止で電気ショックが必要ないと判断された場合は、心肺蘇生のみをするようにAEDが指示しますので、それに従いながら救急隊員の到着を待つようにします。

一分一秒を争う心停止などの場面では、素早い判断が求められます。このように、AEDの効果がある症状・ない症状が存在することを知りつつ、AEDが自動的に判断してくれるということを理解しておけば、いざというときも躊躇せずにAEDを救命活動に役立てることができるはずです。

AEDの基本セット

メーカーなどにもよりますが、AEDは本体と電極パッド、バッテリーのほか、救急医療用の手袋やガーゼ、簡易の除毛テープなどが基本セットとなっています。AEDを設置・管理している場合はもちろんですが、いざというときに慌てずに使えるように、こういった内容を知っておくことも大切です。

パッドは大人用と子ども用の2種類がある場合があります。また、本体で大人・子どもの対象をスイッチで切り替える形式のものも。子どもに対してAEDを使用する場合は可能な限り子ども用のパッドやモードを使用しますが、備えがなければ大人用で代用します。ただし、子ども用を大人に使用することはできないので注意が必要です。特に、学校などの子どもが多い施設などに設置されるAEDは子ども用を備えている場合が多いので、使用する傷病者に応じて使い分けるようにしましょう。

AEDはメーカーや機種によって多少仕様が異なり、例えば、与える電気ショックの強さが一定の固定式と、徐々に電気ショックが強くなるエスカレーション式などの種類があります。また、電源の入れ方や液晶モニタの有無、防水防塵性能などに違いがある場合もあります。しかし、基本的な仕組みや使用方法に大きな違いはありませんので、一度使い方を覚えておけば、いざというときも正しく使うことができるはずです。

AED使用時の注意点

AEDが必要となる場面はさまざまです。基本的な使い方は同じですが、対象者や周りの状況に応じて、どんなときでもきちんとAEDの効果が発揮できるように対応することが求められます。いくつか想定される場面ごとの注意点を確認しておきましょう。

傷病者の体が濡れているときは

プールや水難事故などの際、傷病者の体が濡れている状態でAEDを使用すると、電流が体の表面を走ってしまい、正常に心臓へ電気ショックを与えることができなくなってしまいます。水辺などで床が濡れている程度なら問題ありませんが、傷病者の体が濡れている場合はしっかりと水分を拭き取ってからパッドを取り付けるようにしましょう。

アクセサリーや湿布、体毛に注意

ネックレスなど金属のアクセサリーや、湿布などを身に付けている場合も注意が必要です。こういったものは電気ショックを行うと火傷の原因となるため、可能な限り取り外すようにしなければなりません。また、体毛が濃くてパッドが浮いてしまうような場合は、除毛テープなどを使用し、パッドがしっかり体に密着するようにして使用しましょう。

ペースメーカーがある

心臓に持病を抱えている傷病者は、胸にペースメーカーが埋め込まれている場合があります。ペースメーカーは通常、胸に硬いコブのような出っ張りが見えますので、AEDのパッドはその出っ張りを避けて貼るようにしましょう。

女性傷病者への配慮

緊急時とは言え、女性の傷病者にAEDを使用する場合は配慮が必要です。AEDを使用するには上半身にパッドを直接貼らなければならないため、できるだけ女性が救命活動を行ったり、人の壁を作って周囲から見えないようにしたりしましょう。パッドを貼ったあと、上から布などを被せるのも有効です。下着はパッドが貼れれば必ずしも外す必要はありませんが、金具などが火傷の原因になる可能性があるため、できれば外したほうがよいでしょう。また、妊娠している女性の場合も、まずは母体を救命するためにAEDを使用するべきとされています。

AEDの日常点検の必要性

AEDは、正しい使い方を身につけるとともに、いざという場面で確実に使用できる状態に維持することが非常に重要です。通常、AEDはそう頻繁に使われるものではありません。そのため、設置しただけで、その後の管理が行き届いていないというケースも決して少なくないようです。

AEDには耐用年数が定められています。メーカーや機種にもよりますが、本体は7年程度の耐用年数、バッテリーは4年程度、またパッドは2年程度の使用期限となっている場合が多く、継続してAEDを設置しておくためには定期的なパーツの交換が必須条件です。

また、ほとんどのAEDは日頃から自動でセルフテストを行い、異常がないかをチェックする機能が備わっています。チェックの結果はランプなどで確認でき、AEDの管理者は日常的にその点検を行う必要があります。そして異常が検知された場合は、必要なメンテナンスをしなければなりません。

機種によっては、このAEDの状態を遠隔で監視できるものもあります。異常が検知された場合、管理者のメールに通知される仕組みになっているので、毎日のようにAEDの状態を確認する必要がありません。管理のための手間を最低限に抑えたい場合や、人員が常駐していない施設にAEDを設置したい場合は、こういった機種を選ぶとよいでしょう。

AEDは正しい使い方と適切な管理が行われて初めて大きな効果を発揮します。AEDの管理者・利用者ともに正しい知識を持っておくことで、いつ誰がなるかわからない心室細動などによる傷病者の救命率を大幅に高めることができるでしょう。

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