■ セッション1、腸内洗浄
!浣腸
「うお、すげえ」
手術服のような簡素な服に着替えて入室すると、実験室だという個室は声がよく響いた。
あと、なぜか全面鏡張りだ。
この鏡はマジックミラーになっているらしく、隣接した研究室からはこちらの様子を確認できるらしい。
さすが機械工場というべきか、歯医者にあるようなアームつき椅子は全自動で、俺が座ると勝手にウィーンと音を立てて背もたれが倒れていった。
「それではテストプレイの説明に移ります。
三日間にかけて、各種生体機械のテストプレイ、被験者の生体調査を行います。よろしいでしょうか?」
「あ、はい」
「これから体内にこちらが用意した実験液を注入し、実験を開始します。
体に害を及ぼしたり、副作用の残るものではありませんのでご安心ください。
なお、これから三日間の栄養素の補給、排泄は日に二度、全自動で行われます」
「はい。………えっ?排泄?」
「では私はこれで失礼させて頂きます」
説明するだけして、無機質な女事務員のヒールの音は去っていった。
食事はともかく排泄なんて言葉も聞こえた気がするが、ここまできたら我慢だ、我慢。
すべては金のためだ。
多少恥ずかしい思いをしようとも、この実験が終われば俺はしばらく遊んで暮らせるお金を手に入れられる。
それだけで胸が躍りそうだ。
ガチャン!
キョロキョロと周りを見渡していると、突然椅子に上半身を引き戻され、金属製の頑丈な拘束具が填められた。
腕だけでなく腹と手首にも回されて、ガッチリと固定されてしまう。
戸惑う俺をよそに機械の腕が伸びてきて、羞恥心を感じる間もないままあっという間に下半身が剥き出しにされた。
手術服の下には何もつけないように、と言われたので、下着なんかもつけていない。
当然、性器から下生え、尻の穴までもが剥き出しになった。
「えっ?うわああ!なっ、なにして」
脱ぎ捨てられた衣服は早速回収され、視界から消える。
また機械の腕が伸びてきて、暴れる足を掴まえたかと思うとガチャン!と大きな音を立てて両足首に拘束具が填められた。
そのまま大股開きにさせられ、M字開脚にして太ももにも同じように拘束具を填められる。
これで、完全に身動きできなくなってしまった。
「う、う、…っなんだよこれ、こんなの聞いてねえ!説明しろ!おい、誰だよここの責任者!出てこい!これ外せよ!」
喚き立てても自分の声が空しく反響するだけで、誰も来ない。
隣の研究室には人がいるはずなのに。
なんなんだこれは、スズキが嘘をついたのか?
それとも最初から仕組まれていたのか。
怒りでフーフー言いながらもがくが、金属の拘束具はびくともしない。
それどころか、もがく前より食い込んだ気さえする。
「クッソ、絶対許さねえ……」
スズキには痛い目見せてやらなければ気が済まない。
なんとしてでも脱出して、この工場ごと摘発してやる。
諦め悪くなおももがいていると、先端に注射器のようなものがついたノズルが移動してきて、アナルの入り口にひたりと添えられる。
注射器のようなといっても、注射器にしてはずいぶんでかい。
毒々しい緑色の液体が、透明な筒の中でとぷとぷと音を立てている。
AVの中でしか見たことがないようなそれは、、まさか。
「う、嘘だろ、やめ、」
『セッション1、腸内洗浄開始』
「うあッ!」
身を強張らせると同時に、アナルに浣腸器の先端が潜り込み、冷たい液体が注入される。
中が液体で満たされていく感覚が気持ち悪くて、アナルから浣腸器を追い出そうとせるが、ずっぽり嵌まってしまっていて抜けない。
細い先端はどんどん奥へ奥へと挿入されて、逆効果になっている気さえする。
ようやく液体を注ぎ終えて浣腸器が抜き取られたときには、俺は胎内を満たす冷たい液体に体温を奪われ、腹痛を覚えていた。
ご丁寧に栓までしてくれたせいで、外に液体を出すこともできない。
液体のせいで軽く膨れた腹はきゅるきゅると情けない音を立てている。
『カウントダウン開始。あと9分59秒、58秒……』
******
『59秒、58秒…』
「う、うぅ、いた、痛い…」
冷えた腹を襲う痛みに、脂汗が止まらない。
早く出したい。
早く解放されたい。
早く、早く、早く。
あとちょっと、あとちょっと耐えれば中のこれを出せる。
最初の方はスズキへの恨みつらみを口にすることでどうにか気を紛らしていたが、今ではもうそんな元気もない。
腹はぐるぐると鳴るし、痛くて苦しくて仕方がない。
くそ、なんで俺がこんな目に。
金につられてこんなところ来るんじゃなかった。
『10、9、8……』
早く!早く!
苦しい。
早く出したい。
『3、2、1、』
「あああああああー!!!」
0、と機械音声が告げると同時に栓が抜かれ、俺はブシャアアアアア、と思いっきり液体を放出した。
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