2017年05月06日

会津砥(あいづど) Part2

会津砥について、第2弾です。
会津砥(釜研ぎ石) 南会津の産業遺産として2011年に紹介した滝ノ原産の砥石(会津砥)ですが、その後いろいろな方からコメントを寄せていただいた縁で、ついには砥石を生産していた当時の関係者を含め、4月23日()に会津砥の集いを開催することができました。
image地元から集まってくれた皆さんの美味しい手料理をいただきながら、高橋砥石工業所関係者から生産当時の詳しい話を聞くことができ、とても有意義な一日でした。
皆さん、ありがとうございました。

前回の記事では砥石採掘現場の場所も詳しく紹介できなかったので、田島子さんからお借りした当時の写真を載せながら、改めて会津砥について紹介します。
                         〈風覧坊〉   

先ずは砥石山の場所から…。
会津砥は白色の石英粗面岩の砥石で、原料となる石は滝原字獅子小屋の通称「砥石山」とよばれる山から採掘していました。
国道352号沿いにある高橋砥石工業所の直ぐ脇にある銅竜橋から左に入る町道を奥へ3.7㎞程行くと、左側に八総鉱山選鉱所跡地(左下写真)があり、その 荒海川を挟んだ反対側に砥石採掘現場の入口(右下写真)があります。 
八総鉱山選鉱場跡地 砥石採掘場入口2






砥石採掘現場入口 田島子さんの写真を見ると、当時この入口には砥石採掘現場入口の立て看板があって、「採石現場入口 ◯m先落石、発破 発破時間 10時・12時・15時・17時」と書かれているのが分かります。
砥石の採掘現場はここから砥石沢沿いに500mほど上った所です。
2軒の砥石工場があった辺り? かつて砥石沢の入口から少し入った所には2軒の砥石工場と住居があったそうですが、今ではその面影は見当たりません。    



坑道 沢を登ると途中、左側斜面に八総鉱山の地下水を集めて排水していると思われる坑道が見えます。
これも産業遺産ですね。



かつて運搬路だった道型は、現在も轍(わだち)が残っているのではっきりと分かります。
かつての道路跡1 かつての道路跡2






かつての運搬路 左はかつての運搬路の写真ですが、今でも奥へと続く道を見ると、ひっそりと静まり返ってはいますが、奥から当時の発破の音が聞こえそうで、不思議な感じがします。

更に登っていくと、右手に砥石原石のコッパ混じりの土で埋め戻された跡があります。
ここは「まくり場」と呼ばれていた所で、採石場で小割された原石をまとめて転がし落とされた場所だそうです。
 
埋め戻されて自然に帰った採掘跡 山留めに積まれた石






最後まで営業していた高橋砥石工業所さんが採掘権を地元にお返しする際に埋め戻しています(平成2年~平成5年頃)が、頂部には砥石の材料となった白い石英粗面岩が露出しています。  
   上部の方 上部の方2






採石場へ上る道はここより更に奥にあったそうですが、さすがに採石場跡まで登ることはことはできません。
砥石沢 砥石の原料となる石英粗面岩は、流紋岩のうち流理構造の見られないものをそう呼ぶそうですが、この辺の山一帯が同じ岩盤のようで、砥石沢も露出した白い岩肌の上を水が流れています。

当時、どのようにして採掘していたか、田島子さんからお借りした写真 を見てみましょう。 
山へ上る道が造られる (2)先ず、木を伐採し、山の上へと工事用道路が造られます。
採石現場では、先ずダイナマイトを使用して(土発破)表土を除去、更に重機や発破により良質な砥石の層までの岩石を除去します。
下の写真を見ると分かるように、実際の採石場はかなり広かったのですね。
山の上部 山の上部から眺める





   
砥石の層は「黒色火薬」破壊力が弱い) を装填し、なるべく大きく起こします。
左下の写真は、黒色火薬で起した直後の写真だそうです。
大きな岩塊は、砥石の目を見極め、砥石になる部分と不要な部分を セリ矢」と「石矢」を使い 分離します。
「砥石」になる部分は、更に適当な大きさまで、主に石矢を使って小割りします。
こうして運搬できる大きさまで小割りされた原石は、まとめて山の下部にある「まくり場」と呼ばれるスペースに転がし落とされます。
発破で落とされた石 (2) 小割される






そしてまくり場からはタイヤローダーでダンプトラックに積まれ、砥石加工工場へと運搬されていたそうです。
切り落とされていく 小割された石 運搬路に並べられた小割石







小割された原石 トラックの積まれる原石






砥石を生産していた当時の様子が、田島子さんの貴重な写真のおかげで良く分かりました。
現在の採石現場跡は、埋め戻されてから暫く経つので、木々が生い茂りすっかり自然に帰っていますが、写真を見た後でここを訪れたので、当時の作業の様子を容易に想像することができました。    

次は、工場の中の様子を紹介したいと思います。
乞うご期待!  

fuuranbow at 21:28│Comments(7)TrackBack(0)南会津の歴史 | 田島

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この記事へのコメント

1. Posted by 山さん   2017年05月14日 09:06
風覧坊さん貴重な資料整理お疲れ様です。
言い出しっぺ」の一人として感謝しています。
始めは当初記事を読み、塵肺早逝の文字が心に引っ掛かり、交信を進めていたのです。
それが田島子さんが現れ、かずくんさんが現れ、更には最後の砥石職人や元従業員の方々が高橋砥石工業所に集い、楽しい集いになりました。

私はBさんの新潟出荷時のお話や、最後の砥石職人のAさんのお話を夢中でお聞きしていました。
特にAさんが最後の作業として採掘現場の埋戻し作業時のお話は、無念さも滲み心惹かれました。
山ひとつ向こう側にお住まいだとのことですので、機会があれば再度お話を伺いと思っています。

また、田島子さんの級友達が手料理を持参していただいたのは格別でした。
彼女たちの弾む会話を左の耳で、職人達の話を右の耳で聞き、時々通る大型車の騒音で聞き逃したところもありますが、良い集いでした。

風覧坊さんの公務が一区切りついたら、今回得た資料も含めてまとめていただき、第2回の機会を作ってください。
その時にはyamaさんもかずくんさんも是非都合をつけていただき集いましょう。
風覧坊さんありがとうございました。
2. Posted by 風覧坊   2017年05月16日 21:38
山さん、こんばんは。

仕事を早く一段落させたいところですが、なかなか脱せずに超忙しい日々が続いています。
でも今は便利な時代で、ブログの記事もスマホで作成してUPすることができるし、
今も通勤途中の電車の中からコメントしています。

最初に会津砥の記事を載せた時は、砥石山の位置を間違って説明していたため、山さんには現地調査に何度も南会津に足を運んでいただき、大分ご迷惑をおかけしました。
でも、山さんの報告で間違いに気付き、今回はきちんと正しい位置を紹介出来ていると思います。
山さんのおかげですね。
コメントをいただいていた新潟まさやさんにも、役に立ててもらえると思います。

次は工場の様子を写真で紹介しますが、町の皆さんにも見てもらい、最終的には役場と掛け合って奥会津博物館で歴史産業遺産の紹介コーナーを設けてもらう予定です。
どうなるか分かりませんが頑張ってみます。
3. Posted by tyousan   2017年05月19日 09:04
5 風覧坊さん初めまして。埼玉県で北関東の砥石の産地巡りをしているtyousanと申します。数年前このブログを拝見し、時々拝見しておりました。風覧坊さんの情報を頼りに、昨年新潟まさやさん達と一緒に滝の原を訪問しました。砥石採掘場入口から奥の止まりの新設橋のがけ崩れ箇所と砥石採掘場手前の川の二股沢から石を数個採取して来ました。高橋砥石さんの白虎砥と同じ様な研磨力のある砥石が2個ほどできました愛用しています。
荒海川流域にはたくさんの砥石産地があり新潟まさやさんが訪ねていますが、会津若松上三寄の砥石を昨年採掘者から手に入れました。会津万歳!です。
4. Posted by 山さん   2017年05月20日 08:43
tyousanさんは新潟まさやさんの趣味仲間なのですね。まさやさんの作業小屋の改修後の壁に整理された砥石や道具類は、おびただしい数だと驚いています。
あれだけの砥石は一生刃物を研いでも使い切れないだろうと他人ごとながら心配した次第です。
tyousanさんも同じような事をされているのでしょうか?
かくいう私は今日は会津砥サミットのおり、工業所の下の河原から拾ってきた石ころを砥石に仕上げます。今回は携帯に便利な鎌砥を作ります。
藪刈り鎌(鉈鎌)は登山道の整備の必需品です。
5. Posted by 新潟まさや   2017年05月20日 15:07
風来坊さん、
会津砥の記事、
私のブログで、紹介させていただきました。


tyousanお師匠さん、
会津万歳で~~す。
金山町に行きたくて、ウズウズしています。
6. Posted by 風覧坊   2017年05月25日 12:39
tyousanさん、風覧坊です。
ブログを見ていただいてありがとうございます。

そうですか、新潟まさやさんと一緒に滝原に来ていただいたのですね。
以前はブログも不確かな情報だった部分もあって、目的が達成出来なかったですかね。
反省しております。

天然の砥石を愛用されているのですね。
他の方の砥石に関するブログを見てみると、天然石で刃物を砥いで仕上たときの見栄えと切れ味は、本当に素晴らしいものがあって、刃物に“美”を感じるとか、天然砥でなければこうした美しさを表現することは難しいと言うようなことを書いています。
最近、自分も砥石が気になって、昔のような直方体の天然砥石そのもので包丁とか草刈り鎌を研いでみたいと思っています。
昨日は本屋さんで包丁の研ぎ方なる本を立ち読みしました^_^

また、時々ブログ「南会津の輪!」を覗いていただけると嬉しいです。
7. Posted by 風覧坊   2017年05月25日 12:45
新潟まさやさん、ブログの紹介ありがとうございす。
おかげさまで最近、会津砥の検索数が急上昇しています。
記事も負けじと更新しなければ‥(^_^;)

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