2017年06月14日

会津砥(あいづど)Part3

砥石会津砥について、Part2 に続き第3弾です。
会津砥の生産の最盛期には3軒の砥石工場がありましたが、最後まで営業を続けていたのが高橋砥石工業さんです。
砥石山の採掘権を返上し、採掘現場 高橋砥石工業所 の埋め戻しをしたのが平成2年~平成5年の頃で、工場ではその後もしばらくはストックの材料で砥石を造っていたそうで、今も建物は当時のまま残っています。
会津砥の集いでは、現在の工場の中を見せていただき、最後まで砥石製作に携わったAさんにいろいろお話を聞くことが出来ました。
田島子さんの写真にも工場が盛んに稼働していた当時の写真がありましたので紹介します。

工場前右の写真は、今回、会津砥の集いを開催した高橋砥石工業さんの工場前ですが、奥に見える立派な桜の木のある建物が自宅だそうです。
工場から阿賀川を挟んだ対岸にあって、現在は建物も桜の木もありませんが、当時を知る人には思い出の詰まった写真なので、集まった皆さんがとても懐かしがっていました。
ちなみに高橋砥石工業所のすぐ脇にある銅竜橋が阿賀川の最上流端で、橋から上流は荒海川と呼ばれています。
〈風覧坊〉

工場に保管された砥石の原石砥石山で小割された砥石の原石はトラックで工場へ運ばれ、そこで砥石へと加工されます。
左の写真は工場前に保管された原石でしょうか?


当時の工場の中1右の写真は当時の工場の中の様子ですが、奥のシャッターを閉めた手前に原石が積まれています。
手前に見えるのは、原石を最初に切り出す円盤ノコギリ台(大割り台)です。
砥石の加工工程は、①大割り ②板割り ③小割り と呼ぶ3工程になります。
最初の大割り台では、目を確認しながら板状、太鼓状に加工され、更に別の板割り台、小割り台で受注サイズの大きさへと加工されていきます。
小さいサイズの鎌砥などは①②工程で出る「バタ」と呼ばれる端切からも取れるそうです。
右の写真は小割り台付近の当時の写真。
上には「みんなで進めよう設備と作業の安全を!」とのスローガン。
工場内では集塵機の設置はもちろんのほか、いろいろ健康には気遣っていたそうです。

以下は現在の工場の中の様子です。







左上写真の中央に見えるのが原石を最初に切り出す大割り台、その右側に見えるのが板割り台です。
右上の写真の大割り台の奥に見える黒板の下に立てかけてある円盤ノコギリは「大割り鋸」。
その左側に見える箱型の設備が集塵機で、石を切る際の粉塵が天井から繋がる煙突で吸い集められていたのが良く分かります。
  
石屑工場の中はまるで砥石生産が盛んだった当時にタ イムスリップしたかのようで、板割り台脇の床下には切り落とされた余分な石屑がそのまま残ったままです。 
脇の黒板には注文を受けた砥石の寸法なのか、まだチョークで書かれた黒板文字もハッキリ残っていて、昨日まで仕事をしていたかのようですね。 

下の写真は砥石の受注サイズへと仕上げる小割り台。
埃こそ被っていますが、まだ使えそうです。
   






小割に道具 砥石原石の採掘場では、砥石の目を見極め、砥石にする部分と不 要な部分を「セリ矢」と「石矢」を使って分離しますが、そのセリ矢と石矢もしっかり工場内に残されていました。

Aさん曰く、「天然砥」には全く同じものは無いのだと…。
品質で言えば「バラツキ」ですが、その石その石の「個性」があって、もの言わぬ原石を最初に大割り台の載せて、外観、第一印象でサイズ(用途)を決めノコを入れるのだそう。
その音、切れ味で硬さが判り、最初のカットで切断面の「目」を見極め、改めてサイズ(用途)を決めますが、この工程が「個性」を生かしてあげられるかどうかの大事な場面で、製作者としてワクワクするところ。
逆目になれば当然割れやすくなり、商品になりませんからと、当時を思い出してそんな事を教えてくれました。

天然砥石で研いだ刃物は切れ味が優れているので、今でも料理人や美術品や工芸品等で刃物を使う人には大変重宝なものです。
会津砥は、日本で生産されていた良質な天然砥石の一つとして名を馳せた南会津の特産品で、かつては年賀はがきのお年玉くじの商品になったことも…。
少量でも工場を再稼働させて会津砥を復刻させられたらいいですね。
奥会津博物館それは夢としても、南会津の産業遺産としての会津砥を後世に伝えるために、奥会津博物館に「会津砥」を紹介・展示するコーナーを設けられないかと考えています。
役場と交渉して実現できるよう頑張ってみますので、会津砥の記事をご覧の皆さんも応援してください。
よろしくお願いします。

fuuranbow at 00:13│Comments(2)TrackBack(0)南会津の歴史 | 田島

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この記事へのコメント

1. Posted by 山さん   2017年06月14日 19:54
Part3掲載お疲れ様で~す。
遂に完結しましたね!!!
ブログとしては一段落ですが…
次なる運動(活動)が更に大変な労力を必要とされますね。
奥会津博物館への「会津砥展示コーナ開設」という大仕事。

私が最初このニュースを目にした時に、県の博物館に問い合わせをしたのですが「砥石の展示は有りません」でした。
その後町役場にも問い合わせをしたのですが「砥石に関する資料はありません」でした。
今回の会津砥サミットに集まった人達から得た話からも、かつてはこの地域の一大産業であった砥石ですから、是非とも博物館の一角に「会津砥石」の展示ブースが欲しいですね。

話は飛びますが、せっかく当時のまま手つかずの現存する「高橋砥石工業所」の工場をそっくり移築して展示と言うのもアリではないでしょうか?
更に話を飛ばすと、最後の砥石職人のAさんにお願いして、工場を動かし「体験会津砥石製作所」が出来たらお土産品としてはもとより、砥石を必要とするプロの職人さんたちが集う処としても期待できそうです。

先ずは風覧坊さん「お疲れ様でした」
公務の方は無事に検査が御済であったようですね。これもおめでとうございます。お疲れ様でした。
2. Posted by 風覧坊   2017年06月16日 07:39
山さん、コメントありがとうございます。

ようやくPart3の記事を載せることができました。
記事の内容については、Aさんにも確認してもらい、いろいろアドバイスをいただいていますので、今後もっと詳細な内容にブラッシュアップしていきます。
Part2の内容もAさんからのアドバイスで少し修正を加えています。

奥会津博物館での展示は、yamaさんからも相談窓口になる方の情報をもらっていますので、メール等でやり取りしたながらより具体的にしたいと思っています。
結果についてはまた報告しますので楽しみにしていて下さい。

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