<第1回>NAOKI氏総合プロデュース「ティタノマキア」とは?
ティタノマキア
プラモデル発オリジナルコンテンツ
年に一度のプラモデル関連一大イベント「静岡ホビーショー」が今年も2019年5月に開催されました。その中で注目を集めたのが、プラモデル発のオリジナル企画「ティタノマキア」です。
このプロジェクトを発案し、進めたのは屈指のプロモデラーとして、そしてメカデザイナーとして知られるNAOKI氏。静岡では企画のイメージイラストとロボット、そしてフィギュアの試作品が飾られたのみですが、いったいどのような展開を見せるのか?また、NAOKI氏の企画立案の動機はどのようなところにあるのか?
7月に開催されたワンダーフェスティバルの最新情報と共に、ティタノマキアの魅力、「好きなこと」を仕事にした場合の係わり合い方や現在の模型シーンについて、NAOKI氏に聞きます。
◆目次◆
<第1回>NAOKI氏総合プロデュース「ティタノマキア」とは?
<第3回>ティタノマキアに流れる、自由への肯定感
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5月8日から行われた「第58回 静岡ホビーショー」の会場で、NAOKIさん原作の「ティタノマキア」という企画が発表されました。これはどういうものなのですか?
NAOKI:
ざっくり言うと、プラモデルのオリジナル企画でして、これをロボットとフィギュアの2本柱でそれぞれ別メーカーさんから展開していこうというものです。
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会場では、青島文化教材社さん(以下、アオシマ)のブースで2種のロボットが、壽屋さん(以下、コトブキヤ)のブースでフィギュアの試作品が展示されていましたね? また、前記二メーカーさん以外にも各メーカーさんが企画に参入される事が発表されていますが、これはどういう事なのでしょうか?
NAOKI:
まず、ロボット商品(リーパー/グリムリーパー)をアオシマさんが、フィギュア商品(エグゾスケルトン)をコトブキヤさんが開発・販売するという二つの芯があります。そこへ各メーカーさんが関連アイテムの発売やwebサイトの運営などという形で参入されます。
夏のワンフェス会場で発表されましたが、現状大きなトピックとしては模型ツールメーカーのガイアノーツさんと完成品フィギュアメーカーであるF:NEXさんからリーパー/グリムリーパーのプラモデルが発売されるという事ですね。
いずれのメーカーさんも自社からプラモデルを発売したいという夢というか目標があることは以前から伺っていたのですが、プラモデル製造の経験がないこと、ゼロからの自社開発だとリスクも大きくなるなどの理由からなかなか実現に踏み切れない経緯も同時に伺っていました。
そこで今回の企画が立ち上がる際にアオシマさんとも相談させていただき、アオシマさんから発売されるキットのコアパーツを使用し、各メーカーさん用に新規でデザインと金型を起こし、新規の機体としてそれぞれのメーカーさんから発売していただくという取り組みが実現しました。機体に関してはもちろんそれぞれのメーカーさんの特色を反映したデザインやカラーリングになっています。
このような取り組みは業界でも珍しい事だと思いますが、各メーカーさんにとってはゼロベースの開発ではないという事でリスクは下がり、製造、生産に関してはアオシマさんに任せする事で経験値のなさをカバー出来る。
更にオリジナル企画というフィールド内での取り組みですから、デザイン等も自由に出来る。こういう企画だからこそ叶えるチャンスがあるんじゃないかとお声がけをさせていただいたところ、両メーカーさんともに前のめりで快諾していただき現在鋭意開発を進めているところです。
こういった取り組みはまさにオリジナルコンテンツの強みではないかと思っています。
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珍しいやりかたですね。企画自体の発端はどのようなものだったのですか?
NAOKI:
もともとは、自分でオリジナルコンテンツをやりたいという希望を持っていました。実は、ロボット企画とフィギュア企画は別ものとして考えていたのですが、2社にそれらを持ち込んだら、たまたま同時多発的にゴーサインをいただけたということなんです。
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別企画だったということは、当然世界観も別だったんですね?
NAOKI:
はい。オリジナル企画なので、そもそもモノありきというか、デザインありきだと思っていて。まずはデザインを持っていって「こういうコンセプトでシリーズをやりたい」とご提案させていただいたんです。
そこで両社ともほぼ同時にゴーサインをいただけまして。その際に、当然両社とも「世界観どうしましょう?」ということになりました。そこで、平行して2つの世界観を作るよりは、地続きの世界設定を持った大きなくくりで実施したほうが、企画としても面白いんじゃないかと思ったんです。
もちろんそんなことは僕の一存では決められませんので、両社にそれぞれ改めてご相談したら、僕がよければ大丈夫とのお返事をいただけたんです。
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その、世界観についてですが、今後発表されていくとは思いますが、どのようなものなのでしょう?
NAOKI:
大前提はプラモデルでオリジナルコンテンツを展開していくというものですから、ユーザーの皆さんには好きに遊んでほしいと思っています。
今後随時発表していきますが、基本的には遊ぶためのとっかかりとして多少なりとも設定があったほうがいいなら、僕のほうで用意します、というスタンスです。入れ物としての世界設定といいますか。
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では、設定はガチガチに固めているのではなくて、自由度が高いものと考えていいのでしょうか?
NAOKI:
個人的には細かいところまで設定を用意してますが、「遊ぶための自由度」を阻害しない程度にアウトプットして行ければとは思っています。設定を固めすぎると、(模型発の)オリジナルコンテンツでやっている意味がなくなってしまいますので。
「一応こういう世界です。こういう機体が使われています」というところだけは用意して「○○部隊のナントカ機」みたいなところは、好きに作っていただきたいなと思っています。
ただ、僕なんかもそうですが、設定に萌えたり設定から汲み取った用途や枷を立体に落とし込む事を楽しむといった方も一定数いらっしゃると思うんですよね。そういったニーズに応えられる情報はあった方がいいよね、とも思いますので、ユーザーさんの反応も見つつ色々試行錯誤してみたいです。
(設定、用語集https://modelers-g.jp/groups/5)
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企画自体の特徴は、どこにあるのでしょう?
NAOKI:
商品のコンセプトという意味で、版権作品と違い商品を手に取ってもらうためにデザインだけではなくシリーズとして何らかの特徴が必要かと思います。
ティタノマキアの場合は共通のコアを使用しつつ、アニメっぽい体型の人型メカ「グリムリーパー」と、ミリタリーテイストのパワードスーツ的なメカ「リーパー」が作れるようデザインと設定を用意しています。コアは同じなんだけれども、まったく別テイストのメカが作れるということです。
これにより例えばユーザーさんがオリジナルでミキシングする際にも遊びの幅が広がるんじゃないかと思っています。
またフィギュアの方では、現在の模型シーンで言いますと、頭身の低い所謂アニメ体型の美少女系のメカ少女ものというのが一つの流れを作り出していると思うのですが、頭身の高い「美女路線」とでも言いますか、クールでカッコいいシリーズがあまり存在しません。また、男性フィギュアプラモというものは更に少ないように感じます。
単に需要の問題かもしれませんが、その「隙間」を狙っていけば他メーカーさんとの差別化を計れるかなと思って提案しています。単に自分がそういうプラモを欲しいと思っている部分も大きいですけどね。
そしてどちらのシリーズでも現在の模型シーンでの共通性の高い3ミリ系ハードポイントを用意し拡張性を高めています。本企画でもオプションパーツの発売は予定していますが、他メーカーさんのシリーズを使用したカスタマイズも楽しんでいただければと思います。
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共通コアを使った模型遊びができるということですよね?ところで、ご自分で企画を考えてから、どのくらいの期間があったのでしょうか?けっこう眠らせていた?
NAOKI:
オリジナル企画をやるならこういうものにしたいな、というコンセプトデザイン自体はけっこう前から考えていました。2年くらい前ですかね。それを本気で企画にしたいと動き始めたのは、1年半くらい前になります。
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2年は練り上げられて、ようやく発表ということなんですね。今後の展開についてですが、直近ではワンダーフェスティバル2019[Summer]がありました。そこでの新たな展示や情報の発表はされたのでしょうか?
NAOKI:
そうですね。前述の参加メーカーさんの取り組みの発表をさせていただきましたし、前回発表していないグリムリーパーのデザインバリエーション、エグゾスケルトンシリーズ「ゲイルハウンド」と「ストラトハウンド」のヴィジュアルの発表などをさせていただきました。
グリムリーパーのデザインバリエーションに関してはこれらを商品化しますというものではなく、「こんなバリエーション(一部ですが)が存在している世界観なんですよ」ということを示させていただきました。
エグゾスケルトンに関してはグリムリーパー同様デザインは自分の方で手がけているのですが、アウトプットされるビジュアルについては様々な絵描きさんにお願いしています。
今回のゲイルハウンド、ストラトハウンドについてはイラストレーターのHIRONOXさんにお願いしています。渋めでクールなビジュアルがシリーズの指針を明確に示してくださっていると思います。これらを手掛かりにコンテンツの広がりを予想していただければと思います。
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個人でオリジナルの企画をデザインから作っていくというのはたいへんなこと。アイデアやデザインがあったとしても、メーカーを巻き込んで実現していくのは並大抵ではないはずです。NAOKIさんはなぜ、そのようなことが可能だったのでしょうか?
その仕事術には、周囲を惹きつける何があるのでしょう? 次回は、NAOKIさんの仕事術などについて、お伺いしたいと思います。
取材・文:吉川大郎
取材・写真:小縣拓馬