コロナと住まい 公的支援の拡充を急げ

2020年11月2日 07時35分
 新型コロナ禍による雇用情勢の悪化に伴い、住居の維持に不安が広がっている。国も住居確保給付金などの支援をしているが、事態悪化の勢いはそれを上回る。年末に向けて支援の拡充が急務だ。
 厚生労働省が発表したコロナ禍に関連する解雇や雇い止めは、十月二十三日時点で見込みを含めて六万八千百余人に達した。このうち、約半分は非正規労働者だ。雇用悪化に歯止めがかからない。数字は公的機関の相談件数が土台で、実態はより厳しいとの指摘もある。
 賃貸住宅に住んでいる場合、収入が途絶えて最初に心配になるのは家賃の支払いだ。国は生活困窮者自立支援法に基づき、住居確保給付金制度を設けている。支給額は東京二十三区の場合、単身世帯で毎月五万三千七百円が上限だ。
 昨年度の実績は三千九百七十二件だが、今年はコロナ禍の影響で四月から八月までに九万六千九十九件の支給が決まった。すでに昨年度一年分の二十四倍である。
 この制度でひと息はつけるものの、落ち着くことは難しい。制度の充実は待ったなしといえる。
 その一つが支給期間の延長だ。現行では原則三カ月で、最長は九カ月。四月に支給を受け始めた人は年末には打ち切られる。だが、コロナ禍は一向に終息する気配はなく、雇用情勢に好転の兆しはない。このままでは年明け以降に住居を失う人が増えかねない。
 もうひとつは支給要件にある収入制限の緩和だ。この制度は一定の収入以下でなければ受けられない。これが単身者の場合、月額で八万四千円以下。支給額でまかなえない家賃の不足分に加えて、仕事探しの交通費、通信費、食費などを考慮すると低すぎないか。
 ちなみに公営住宅を借りる際、公営住宅法で定められた所得制限(収入月額)は高齢者や障害者世帯の場合、月二十一万四千円だ。
 賃貸以外でも住宅ローンが払えなくなる例が激増している。独立行政法人住宅金融支援機構によると、金融機関による返済方法の変更承認件数は三月こそ二件だったが、四月から九月までの総計は五千七百十三件にも上る。
 コロナ禍も自然災害に等しい。災害救助法に基づき、行政が民間の空き家などを借り上げて提供する「みなし仮設」制度を適用する案も真剣に検討すべきだろう。
 住まいがあって、人は初めて生活再建を考えられる。師走も遠くない。あらためて政府には迅速な居住支援の拡充を求めたい。 

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