邪悪なやまびこ

この春、林業に新規就労した小太りの若者が初日にドヤ顔で登山靴を履いて（あと全身高価なモンベルだのコロンビアの服だのプロトレックとかの小高い時計を装備、これはＧＰＳ付なので自分絶対山で迷わないッすとか発言）出勤したところ、ぬかるんだ急斜面の地拵えの助手をやらされて何回もズッコケ−！無様に転倒したり滑落して息も上がって自我崩壊、自然LOVE山LOVEなオ〜レってダ〜レ？なんつう感じで鬱病になって３日で来なくなったッ！

そのそばでぇ〜〜牛がモウと鳴いてちょうがひらひら飛んだッ！

この若者の病気はなに？

…………！？（ざわつく客席）

この若者のぉ〜〜〜〜病気はなに？（目をひん剥きながら２回目のコール）

「盲腸！」（前列に座るオバちゃんからのレスポンス）

（したり顔で）いや〜〜今日のお客さんはと〜っても素直！もう一回言うからよぉぉく聞いてね、おかあさん！（以下のやり取り省略）

というわけでね、え？どういうわけかって？

え？わかんないですかおかあさん？

ワ・タ・ク・シがこんなに昂ぶる理由？

な〜〜〜〜〜〜〜ンでかッ!?

（引き続きざわつく客席）
それはネ！

本日はジャパニーズ林業界のウッドストック、第６９回全国植樹祭ふくしま２０１８が挙行及びＮＨＫによる全国生放送があったからだよ！

福島といえば宝の山・会津磐梯山が有名であり、今回のテーマは「森meets磐梯山」。磐梯山に記念植樹をしましょうという近年稀に見る比較的まともなコンセプト。

しかし。

好事魔多し。



先月行われた内堀雅雄福島県知事の植樹祭開催に関する記者会見の場に

「チリーン…チリーン…」

突然鈴（not熊避け）の音が響いた！

そして鈴の音の発生源の会場後方から「南無阿弥陀仏——」と唱えながらボロボロのＴシャツにジーパン、そこに菅笠をかぶった托鉢僧が登場！しかもその左手には誰かの遺影…？

ポーゴだ！

昨年急逝したプロレスラー、ミスター・ポーゴの遺影だ！

ということは当然！？

内堀知事の数メートル手前で菅笠を取ったのは、果たしてプロレスラーの大仁田厚だッ！

しかし昨年大々的な引退興行を行った大仁田がなぜ！？

などというしらこいことを会場の誰一人も考えない中、大仁田がマイクを握りました。

「オイ！オイ！オイ！福島県知事さんよお！植樹祭も結構だがなあ、もっと大事なことを忘れとりゃせんか〜い！」

「特に忘れてる事項は無いと考えます」という知事の素っ気無いお役所的なレスポンスに大仁田は血の涙を流して訴えます。

「オイ！オイ！あんまりじゃねえか！知事さんよぉ！なあポーゴ！」

遺影を慰撫しつつ大仁田は更に続けました。

「来月はなあ！ワシの盟友ポーゴの一周忌なんじゃあぁ！」

ということで、なんと大仁田は「第一回裏植樹祭２０１８ミスター・ポーゴ追悼自主興行」をぶち上げました。その内容は前代未聞の一人デスマッチ「時限噴火式会津磐梯山ノーロープノーレフェリートレッキングファントムシャドウマッチ」というもの。

どういうことかと申しますとですね、グラップラー刃牙というエクストリーム格闘漫画に登場する、闘う相手のイメージを極限まで高めることで周りにいる人にも実際にその相手が出現して見えるという、何のことやら分からない人は「範馬刃牙」っつう漫画の最初のほうを読んでくださいというしかない技術を大仁田は体得したいうのです！（当初は口寄せしたイタコとデスマッチを行う計画もあったのですが、それは単なる老人虐待になるということで見送りに）
そのワザで亡きポーゴ と決着をつけるとほざいたのです！
そしてすでに磐梯山の噴火口にダイナマイトを１５０トン設置済みだって！？それが前述の長い名前のデスマッチなんですがね、まあ要するに、磐梯山全体をリングとみなして（試合内容如何に関係なく）最後は爆破というおなじみの展開だそうな。なおも大仁田は続けます。

「知事さんよぉ〜、ワシはワシは！アンタを男と見込んで頼みがあるんじゃ〜〜〜〜！」

しかし内堀知事は「ほかにご質問が無ければ、時間ですのでこれで記者会見を終了させていただきます」と大仁田のマイクを完全に潰すまたもケーフェイ完全拒絶のお役所的対応！大仁田とは全く正反対のファイトスタイルを貫きます。

そしたらアンタ、会場もボチボチ消灯して（東スポの記者以外）みんな帰ってしまい、結局大仁田のパフォーマンスが宙に浮いたまま！今日を迎えたわけですね。



という経緯から一応大仁田対策として福島といえばコレ！のもうひとつ日本のハワイこと、スパリゾートハワイアンズに会場を急遽移して「森meetsハワイ」にテーマも変更、スパリゾートハワイアンズの椰子の木を根こそぎスギとヒノキに改植するという例年通りの不毛なテーマと、そしたらもうそこはハワイじゃねくてその辺の神社かよ的営業妨害すれすれなプログラムで開催されたのです。

オープニングはなんと高木ブーのウクレレ演奏による国家斉唱！若干の不敬な感じは否めません。そして地元の福島県立ハワイ商業高校をはじめとした小中高生による圧巻の千人フラダンス。否が応にもハワイ気分が盛り上がってきます。今年が最後の植樹祭参戦となる天皇皇后両陛下も楽しげに手拍子をなさってました。

その後も、樹木を使った一発ネタコンテストや同様のマジックショー等が行われ、十分楽しんだからもう別に改植はしなくていいのでは？と会場の誰もが思い始めたそのとき！

会場中央のオーロラビジョンが切り替わりました。

ざわつく場内。

オーロラビジョンには「会津磐梯山より生配信中」の文字が！

そうですよ！大仁田のポーゴ追悼自主興行の様子が映し出されたのです！

すわ電波ジャック！？と（私が）色めき立つものの、よくみると会場の関係者は皆リラックスムードで打ち合わせをしながらお菓子などを喰っており、どうやら休憩時間のようです。

お前らはＬＳ北見か！

一方の大仁田ですが、前述したシャドウマッチをひとりで繰り広げているものの、そこにポーゴの幻影などは一切見えず、挙動不審なジェスチャーというか大昔やってたツービートの「テレビに出たいやつみんな来い」に出てきた延々と近江敏郎の眼前で柔道の受身を繰り返して強制退場させられた素人みたいな感じで試合の中継というよりもはや環境映像の趣。しかも音声が無いので大仁田がせっかくなんか吼えてるのも口をパクパクしてるだけ。それがどうやらスマホとドローンで中継してるようで画面のブレがひどく、酔って嘔吐するちびっ子もでる始末。

それでも！

大爆破にむけたカウントダウンが始まりました！

ええっ！ついに磐梯山で噴火っていうか爆破！？

レフェリーもいない巌流島方式でダイナマイトを爆破させるってなんか大仁田の自殺を中継するみたいで最高に悪趣味！

昭和のプロレスファンのハートをわしづかみだよ！

「６！」

「５！」

「４！」

そこまでカウントダウンが進んだところでオーロラビジョンの中継がブッツリ切れてしまいました。

え？どういうこと？

と（私が）困惑すると、内堀知事が挨拶しました。

「えー、時間となりましたので引き続き式典を進行させていただきます」

またしても非情なお役所的対応！！

その後、天皇皇后両陛下によるお手植えなどが粛々と行われ、無事植樹祭は終了したものの、磐梯山はどうなったか一向に知れず、ポーゴの魂も鎮魂したかどうか、風が知るのみとなりました。

ただ、その時間、磐梯山頂上を震源とする微弱な地震が気象庁に観測されたそうです………なんつってね！

許して神様仏様稲尾様！

今までの記述はオールにパーヘクトにウソ８００！

今年も勿論植樹祭を視聴出来なかったんだよぉぉぉ〜〜！

なぁ〜〜〜〜〜んでか？

（ザワつく客席）

なぁ〜〜〜〜〜ンでかッ！？（ダメ押し）

それはね！

精神病棟で鎮静剤を投与されて意識を失っていたから！

（ギャハハハ！と大爆笑の客席）

な〜〜〜んでかな〜〜んでかな〜〜〜んでかフラメ〜〜〜ンコォ！

オォォレィ！