ネット時代の聖女・伊藤春香(はあちゅう)さんインタビュー【第1回】

はあちゅう『半径5メートルの野望』はなぜ人の心を掴むのか? 大反響の裏側にある彼女の苦悩

はあちゅう『半径5メートルの野望』はなぜ人の心を掴むのか? 大反響の裏側にある彼女の苦悩

はあちゅうが語る、叩かれても書く理由

時代の変化に伴い、女性の生き方も多様化していく時代。アラサー女性たちが自分らしく、幸せに生きていくためにはどうすればいいのか?

ウートピ編集部が注目したのが、いまをときめくIT起業家や有名ブロガーたち。彼らの生き様を通し、働くアラサー女性たちの生き方のヒントを探ります。

記念すべき第1回は、先日『半径5メートルの野望』を出版されたネット時代の聖女、はあちゅうこと伊藤春香さんに、アラサーが“自分らしく”生きる方法をお伺いしました。

「野心家だね」ってよく言われるけど…

――まずは大反響の新刊『半径5メートルの野望』についてお伺いしたいと思います。タイトルが印象的ですね。

伊藤春香(以下、はあちゅう):“半径5メートル”というキーワードは、私が2014年の元旦に出演したNHK『ニッポンのジレンマ』で発言したものでした。番組のテーマは“この国の形”。この国の若者についてどう思うか、という問いに対し、以下のようにお話ししました。

「私たちの世代ってすごく限定的なところしか見なくなっていて、ソーシャルメディアなどで繋がって視野は広がっているように思いつつも、実はそこでは自分の取りたい情報しか取っていない。そんな“半径5メートルの自分の日常”にしか興味が無いなかであっても、ひとりひとりの半径5メートルが合わさることで、少しずつ違う世界が見えるようになって、みんなが自分の生活をよくしていこうって思えるようになるんじゃないか」

――すごく世代の世界観をとらえた言葉ですね。

はあちゅう:そこの部分に対してツイッターなどですごく反響が大きかったんですね。 もう番組が放送されてから1年経つんですけれども、未だに「半径5メートル、観たよ」って言われることもありまして。

せっかくだからその印象的だった“半径5メートル”という言葉を使いたいな、って。あとは、私は昔から「はあちゅうは野心家だね」とか「野望があるね」ってよく言われまして……。ただ私自身は自分のことをガツガツしているタイプだとは思っていないんですね。周りの起業家で「上場してやる」とか「世界にサービスを広めたい」とか言ってる友人に比べたら、全く私はそうではないのに。そんな私でも野心家に見えるんだなあ、っていう。

――十分に野心家だと思います! はあちゅうさんのことを見ていると、自分の努力がちっぽけに思えるというか。もうちょっと頑張んなきゃっていう気持ちになります。

はあちゅう:本当ですか? 私はこの本にも書いたのですけど、本当に「母親に美味しいもの食べさせたい」とか、そういうことを思っているぐらいなんです。でもそれを心置きなくやるためには、やっぱりお金も稼ぎたいとも思いますよね。私の野望なんて、そんなに大志があるわけではないけど、それを叶えて行くことによって、見える未来が少しずつでも広がっていくんじゃないか、というような希望を込めたタイトルにしました。

『半径5メートルの野望』大反響の理由

――本書では、はあちゅうさんご自身が経験されてきた葛藤がリアルに読み手へ伝わったことが、人の心を動かしているという印象を受けています。ご自身としては、どの辺りが反響の要因だと思われますか?

はあちゅう:この本のなかでは、結構いろいろと赤裸々に書いているんですね。恐らく、私と同じようなことを考えている人はたくさんいるはずなんです。ただ、「美味しいものを食べたい」「有名になりたい」となんとなく思ってはいても、それを実際に言うのはみんな恥ずかしいでしょうし。とくに今はツイッターなどでそういったことを言うと、「意識高い系ww」って言われちゃったりする。

だから、本の帯にも“ブログでは書けなかった”と書いています。それこそ炎上しそうな悪口に対して自分が思っていることなんかも本に書けたので、そういった部分について「爽快だった」「普段自分も思っていたけれど、人の目を気にして言えなかったことを書いてくれました」といった反響がすごく多いですね。“みんなが言いたいけど、言えなかった”というところなのかもしれないです。

叩かれるのは全然平気じゃない。強いフリしてるだけ

――ネット上でのいわゆる“叩き”に対して、どのように乗り越えているのかなど、とても赤裸々に書かれている印象を受けました。

はあちゅう:本の中にある「本当に強いことと、強いフリをすることにどれほどの違いがあるだろう」というフレーズが自分ではすごく気に入っています。私はすごく強い人に見られがちで「よくあんなみんなの反感を買うようなこと言えますね」と言われたりする。けど、私だって書いたら叩かれるのはわかっていて、その上で、でも自分は“思っていることを書く立場”だと思っているんですよね。

いろいろ言われたらやっぱりへこんで、全然平気じゃないんです。けれど、それでも“書こう”という意志があるので強いフリをしているだけ。実際は誰よりも私自身が自分の悪口を目にしているし……。でも、「みんな耐えてるんだよ」ということを書きたかったんです。

――そんな風に思っていたとは、知らなかったファンもいたでしょうね。

はあちゅう:ちょっと前だったらこれって、「有名人だから(叩かれて)当然だろ」というような話だったのかもしれない。けれど今はみんなソーシャルメディアのアカウントのひとつやふたつは持っているでしょうし、こういうことってもはや有名じゃなくても起こりうるわけです。ちょっと社内で目立ったら、『Rumor』なり、裏アカウントなりでいろいろ書かれたりして。そういったことに気を病んでしまって前に進めない、言いたいことも言えない人もいるはずですし。

私自身、なんならそういう人たちよりもさらに弱いぐらいなんですけど、この本では「がんばってそこを突破しないとだよね!」ということを書いてみました。読んでくださった方にはそういう部分を気に入っていただけてるのかな、と思います。

ストレスはブログで発散

――なるほど。はあちゅうさんは普段どういったことでストレスを発散されていますか?

はあちゅう:書くこと自体が発散かもしれないですね。今は取材や講演の機会も増えましたが、やっぱり自分は書くことのほうが得意。たとえば、恋愛のテクニックとかでも合コンの場所で「こいつ割り勘かよ……」とか言えないじゃないですか(笑)。でも後に、ブログのネタにして発散しているというか。そういうことですね。書くことで本当に、デトックスになっているんです。

次回は、はあちゅうさんの考える「自分らしい仕事」についてお伺いします。

>>【次回につづく】「ナンバーワンじゃない人の心情を書いてみたい」 はあちゅうが今年実現したい3つのこと

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