2019/03/19

「ワイヤレス充電はケーブル充電より時間がかかる」は都市伝説? 実験して検証してみた

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100%信じているというわけでもないけど、なんとなく納得している、そんな微妙なスマホにまつわる「ウワサ」。それらの疑問を専門家にぶつけ、真実なのか、偽りなのかを検証していくシリーズ企画第4弾。

今回のテーマは、iPhone、Androidスマホともに対応機種が続々と登場している「ワイヤレス充電」。「置くだけで充電できる」という利便性の高さがウリだが、最近では充電器自体の値段も安価になり、ラインナップも豊富になってきている。そこで気になってくるのが、「ケーブル充電より充電速度が遅い」「実はケーブル充電に比べてスマホの電池の劣化が早くなる」といったウワサ。

実際のところ、これらのウワサは本当なのだろうか? KDDIの「電池先生」ことプロダクト品質管理部の新保恭一と、最新のワイヤレス充電器に詳しいコンシューマ営業推進部 au関連商品グループの西田麻衣の2人に真相を聞いてみた。

KDDIの新保恭一と西田麻衣 (左)電池先生こと新保恭一。KDDI商品企画本部 プロダクト品質管理部 CS推進グループ課長補佐。モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)モバイル充電WG 主査も勤める。(右)ワイヤレス充電器に詳しいKDDIコンシューマ営業推進部 au関連商品グループの西田麻衣

ワイヤレス充電は本当に遅い? 実験してみた

――まずはワイヤレスVSケーブルの充電速度についてです。ワイヤレス充電はケーブル充電より遅いというウワサがありますが、本当でしょうか?

これは本当で、ケーブル充電のほうが早いです。まずは説明するより見てもらったほうがわかりやすいので、実験してみましょう。

さまざまな機器を使って充電速度を計測するKDDIの新保恭一

この計測機にワイヤレス充電、ケーブル充電それぞれのコードをつなぎ、充電時間と流れる電流値を計測します。充電器がスマートフォンへ充電する電力はどちらも同じ5W、スマホは同一機種で、ケーブルの長さも同じものを使用します。

<実験の概要>
実験に使用した充電器
・ケーブル充電器(写真左)とワイヤレス充電器

ケーブル充電とワイヤレス充電

条件
・ワイヤレス充電は、充電器へ電力を供給するケーブル部分を測定
・有線充電は、充電器からスマホまでのケーブル部分を測定
・充電器からスマホへ供給する電力は、共に5Wの製品で統一

――おー! 早速、モニターのグラフに変化がありますね。これ、どれくらい時間がかかるんですか?

フル充電で計測するので、5時間ぐらいです。時間はかかりますが、論より証拠。やってみましょう!

ケーブル充電とワイヤレス充電

(5時間が経過)

――先生、そろそろ充電も終わりますね。データは取れましたか?

バッチリです。分かりやすいようグラフで見てみましょう。

ケーブル充電とワイヤレス充電の充電時間の実験結果

青い線がケーブル充電、オレンジの線がワイヤレス充電です。グラフが下がるほど充電が進んでいる状態で、下がりきったところで充電が完了しています。ケーブル充電が約3時間半で完了しているのに対し、ワイヤレス充電は約5時間かかっています。

――約1時間半の差があるんですね。なぜ、これだけ差が出てしまうのでしょうか?

それはワイヤレス充電の仕組みに原因があります。そもそも、なぜ充電できるのかを知っていますか?

――まったくわかりません(キッパリ)。

正直でよろしい(笑)。そうですね……。電気をコイルに通すことで磁束(磁界の強さと方向)が発生することは学校で習いましたよね?

ワイヤレス充電の仕組みを解説する電池先生

――小学校や中学校の理科の実験で習ったものですよね? コイルのあいだに磁石を通すと電気ができるっていう。

そう、それです。ワイヤレス充電はその性質を利用しています。下の図のようなイメージですね。充電器とスマホにコイルが入っていて、その間で電磁誘導による電力のやり取りをしているわけです。

※電磁誘導:コイルのそばで磁界を変化させるとコイルに電流が流れる現象。ざっくりと説明すると、ワイヤレス充電では、充電器のコイルに電気を流して電磁誘導を起こし、スマホ側のコイルで再度電気に変換している。

ワイヤレス充電のイメージ図

――なるほど。仕組みはわかりました。しかし、なぜ充電時間に差が出てしまうんでしょうか?

それは充電ロスが原因です。ケーブルの場合は、電力をそのまま送れるのでロスが少ない。一方、ワイヤレス充電は電気を磁束に変換するプロセスを挟むため、エネルギー効率が悪くなってしまうんです。このロスは熱を発生させます

スマートフォンには電池などの保護のため、高温状態を抑制する機能があります。ワイヤレス充電の場合は「充電電力を小さくする」ことが一般的。その差が充電時間に現れたというわけです。

――ワイヤレス充電は、少々ややこしいことをしているんですね。すると、やはりケーブル充電のほうが優れているということになりませんか?

そうとも言い切れませんよ。電力効率のロスは確かにありますが、電気代に換算するとそれほどの差はないんです。なによりワイヤレス充電には「置いておくだけで充電できる」という利便性の高さがあります。ケーブルを探したり挿したりするという手間がかかりませんし、使ってみるとその違いがわかると思います。

ワイヤレスだと「電池の劣化が早い?」は本当?

――続いて、「ワイヤレス充電だとスマホの電池の劣化が早くなる」というウワサもありますが、この点はどうでしょうか?

電池の劣化具合は、ケーブルでもワイヤレスでも変わりません。スマホのバッテリー劣化の原因は主に「サイクル劣化(充放電を繰り返すことで起こるもの)」「保存劣化(満充電に近い、もしくは充電が少ない状態で放置することで起こるもの)」のふたつ。その劣化を加速する要因が「熱」です。ケーブルでもワイヤレスでも電池が熱の影響を受けないようにすればいいんです。

たとえば、風通しが悪い場所では熱がこもりやすいので、使用は控えたほうがいいですね。詳しくはこちらの記事も見てください。

――このウワサは間違いだったんですね。では、「ケースをつけたままだとワイヤレス充電ができない?」という疑問もよく聞きます。これはどうでしょう?

auで販売しているワイヤレス充電器とケースの組み合わせであれば、プラスチック製で厚さが3mm程度ならば対応できます。逆によくないのは、金属製のバンパーやスマホリングですね。スマホと充電器のあいだに金属が挟まると、熱が発生してしまいます。熱はバッテリーの劣化の原因になるので注意が必要です。

――金属製のバンパーやスマホリングをつけている人も多いですよね。

金属製のアクセサリーは取り外しが必要です。電磁誘導の影響で金属で熱が発生してしまいます。

――白熱電球が熱くなる原理と似ていますね。

金属でいえば、鍵やカッターの刃なども挟んで充電してはいけません。こうした発熱事故を防ぐために、充電器側には安全装置も設けられています。

――使用するうえで注意が必要なんですね。そのほかに気をつけるポイントはありますか?

まず、ディスプレイ側を充電器に向けて置かないこと。通常は充電できないのですが、au以外の一般的なワイヤレス充電器も含めて、組み合わせにより充電起動してしまうこともあります。この場合、スマホ内部にある金属の基盤が発熱してしまう可能性があります。

それからスマホ側と充電器側にあるコイルの位置を合わせるように置くこと。スマホと充電器のコイルの位置がズレていると充電が始まりません。スマホの裏側にはコイル位置を示すマークが表示されているモデルもありますが、マークの表示がない場合は、安定した場所で、スマホ背面の中心部分をワイヤレス充電器の中央に合わせて利用してください。

スマホの裏側にあるコイル位置マーク Galaxy S9 SCV38のように、背面にある「Qiマーク」の位置がコイルの中心であることを知らせるモデルも存在する

どう選べばいい? 「au +1 collection」からご紹介します

――ところで、ワイヤレス充電器はどう選んだらいいのでしょうか? たくさん種類があるので、どういう基準で選べばいいのか分からないのです。

その質問は私が答えますね。

ワイヤレス充電器に詳しい西田麻衣

まず充電方式から。ワイヤレス充電の規格は色々ありますが、「Qi(チー:充電式電子機器の無接点充電互換性に関する国際規格)」を選んでおけばワイヤレス充電対応機種を、安心して使用できますよ。

――QiはAndroidとiPhoneの両方に対応しているんですか?

一部端末をのぞいて対応しています。ちなみにスマホ周辺機器を販売するau公式の「au +1 collection」で扱うワイヤレス充電器は、すべてQi規格に対応した商品を扱っていますので、iPhoneユーザーの方も、Androidユーザーの方も安心して購入していただけます。

「Qi(チー)」規格のアイコン

――「au +1 collection」で扱っている商品はどのような基準で選んでいるのでしょうか?

まずはワイヤレス充電に対応するすべてのauの機種で使えること。「au +1 collection」で扱うワイヤレス充電器は動作テストを行い、ワイヤレス充電に対応するすべてのスマホと互換性を確認しています。また、急速充電を実現するのに最適なアダプターとケーブルが付属していますので、購入後すぐに使えるのもポイントです。市販品のなかには充電器とアダプターが別々に販売されているものもありますが、「au +1 collection」で購入していただければ、組み合わせを心配する必要はありません。

――安く買っても付属品がない時や、自分で選んだ組み合わせで急速ワイヤレス充電ができない時など、高い買い物になってしまうこともあるので助かりますね。ちなみに、充電器の売れ行きの傾向などありますか?

最新のワイヤレス充電器

近年のトレンドは急速充電対応タイプです。従来のタイプよりも(特に残容量が少ないスマホは)充電開始30分前後の充電がとても早く、各メーカーから商品が出ています。急いで出かける前など、短い時間でも充電が進むのでおすすめです。

西田おすすめのワイヤレス充電器①

こちらは「au +1 collection」で扱うワイヤレス急速充電器のなかでもお手軽なモデル。Qi規格に準拠し、最大15Wの出力にも対応しています。ワイヤレス急速充電器に求められる「基本的な機能」と「厳しい品質基準」をクリアしている安心のワイヤレス充電器です。石鹸のような横長の楕円型で、デザインは女性に好評です。

急速ワイヤレス充電パッド 15W iPhone・Androidの急速ワイヤレス充電に対応。急速ワイヤレス充電対応モデル

商品名/急速ワイヤレス充電パッド 15W
メーカー/加賀電子
価格/5,378円(税込)

西田おすすめのワイヤレス充電器②

高品質なバッテリーやケーブルを製造するANKERとauのコラボモデルです。過電圧保護や温度管理、異物探知などの機能を備えており、放熱・発熱からお使いのスマホを保護します。上品なブラックの本体カラーとコンパクトサイズで、使用する場所を選びません。

PowerWave 15 Pad au×Anker第三弾コラボ商品。急速ワイヤレス充電対応モデル

商品名/Anker PowerWave 15 Pad
メーカー/アンカー・ジャパン
価格/6,458円(税込)

西田おすすめのワイヤレス充電器③

デュアルコイルタイプも人気です。この充電器は充電用コイルが2つ組込まれているので、スマホを縦横どちらに置いても充電できます。スマホを置く部分が角度調節可能で、動画を見ながら充電したり、着信やLINE通知がすぐに確認できるのでとても便利ですよ。

XQISIT WIRELESS FAST CHARGER 10W スタンド角度の調整が可能。スタンドとパッドの一体型ワイヤレス充電器。最大10Wワイヤレス急速充電にも対応

商品名/XQISIT WIRELESS FAST CHARGER 10W
メーカー/ライテック
価格/6,998円(税込)

XQISIT WIRELESS FAST CHARGER 10Wの利用シーン

「au +1 collection」では、ほかにも様々な充電器をラインナップしていますので、利用用途に合わせてお選びください。ちなみに、au Online Shopでのご購入は、auユーザーであれば、貯まったWALLET ポイントのご利用も可能ですよ。
ワイヤレス充電は一度使っていただけたら利便性が分かると思います。未経験の方にはぜひ体験してもらいたいですね。

価格もより手頃となり、ラインナップもますます豊富になっているワイヤレス充電器。 今回の実験でも判明したとおり、ケーブルを介さない独特な充電方式であるがゆえ、ケーブル充電に比べて充電速度は劣るものの、置くだけで充電ができる利便性や取り扱いの手軽さ、また急速充電への対応など、進化していることもわかった。既にお使いのスマホが対応しているのであれば、ぜひ一度お試しいただきたい。

【今回の結論】
  • ・同じ充電電力の場合、充電時間が短いのはケーブル充電
  • ・扱い易さはワイヤレス充電が勝る。ただし充電器とスマホの間に金属など異物を挟みこまないよう注意が必要
  • ・iPhoneとAndroidの両方に対応する「Qi(チー)」規格のものを選ぶ
  • ・スタンド型、急速充電タイプがトレンド

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文:鈴木雅矩(スズキガク)

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