自ら扉を閉ざすことも辞さない内向きな大国では困る。
中国共産党の最高指導機関とされる中央委員会が、第5回全体会議(5中全会)を開いた。
焦点は、経済発展についての中長期の青写真づくりである。来年からの5カ年計画では、これまでの外需依存型から、内需主導型へと移行していく方針が盛り込まれたという。
中国の急速な発展は、改革開放による海外との貿易や投資の拡大がもたらした面が大きい。かねて国内市場での消費の拡大が、課題として指摘され続けてきたのは確かだ。
ただ、ここに来て「強大な国内市場の形成」が強調されるようになったのには、米国との対立やコロナ禍の影響がある。
たとえ海外との経済的な動きが途絶えても、影響を限定的にとどめ、自力で安定した成長を続けられるようにする。そんな発展モデルに転換したいということらしい。
とりわけ高速通信規格「5G」の導入など、ハイテク分野での米中間の争いは激しさを増している。技術の革新に重点的に力をそそぎ、「科学技術の自立」を発展戦略の支柱とするのだという。
習近平(シーチンピン)体制は今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を実現するとしている。このため、2035年までに、国民1人あたりのGDP(国内総生産)を「中堅先進国」並みにするとの目標も掲げた。
懸念されるのは、こうした通商を軸とした「外」から、内需を中心とした「内」への重点の転換が、中国の内向きな強国化の戦略思考に重なる点だ。
そうでなくても今の中国は「自力更生」や「持久戦」といった毛沢東時代の政治スローガンが唱えられ、殻に閉じこもるかのような印象がある。
米国による制裁に対抗するとの名目で、経済的な交流を絞るデカップリング(切り離し)を中国自らが進めるような動きも目立つ。10月にできた輸出管理法をめぐっては、その不透明さを各国企業が心配している。
中国の意に沿わない言動をとった国々に対し、唐突に輸出入規制を課して圧力をかける措置も繰り返されている。
そもそも米中対立の発端は、中国の市場が公正に開かれていないことだった。自国企業の優遇、外資企業に対する技術移転の強制や知的財産の侵害といった問題が指摘されていた。
自らは自由な通商制度の恩恵を受けるが、他者にはそれを与えない。そんな身勝手は許されないだろう。豊かさは「中国の開放」に対する国際社会の期待と信頼の土台の上にある。そのことを忘れてはならない。
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