短めです。
悟とラナーは、自ら援軍に来てくれたジルクニフと合流し、王都を目指し進軍している。ここまで、大きな戦闘になることもなく、順調に王国まで二日の距離に到達している。
この進軍を王都にいるバルブロはまったく気がついていないはずだ。なぜならバルブロの斥候は全員捕縛しており、情報封鎖に成功しているのだ。
「·····これが王国か。やはり肥沃な土地が広がっているな」
「やっぱり計画通りに戦争で取るつもりかい?」
「いや。止めておくよ。モモンとの友誼の方が大事だからな。もうその計画は破棄したさ」
「ホントかなぁ? ジルクニフなら裏で何かやってそうだけど?」
「いやいやいや、確かに今までなら否定はできないが、今は否定できる。モモンに対してそのような事はしないさ」
もはや二人は長年の友人のごとく。実際はまだ会うのは3回目だというのにだ。
「それにしても、モモンの兵が専業兵士とはね。·····練度が他の王国兵とは段違いだな。王国兵ではこんなに整然とは行軍出来ないだろうよ」
「我が領土では兵農分離を進めているのだよ。どこの家にも余っている子供達はいるわけで、それを金で雇うことで、生産量を落とさずにいつでも動員できる兵を用意したのさ」
中世ヨーロッパ風の舞台なら日本の中世の知識でも通用するだろうと試したところ効果は十分すぎた。あっという間に多数の兵が集まり、元々農作業に従事し体力もある彼らはハードな特訓を耐え、乗り越え、短期間で力をつけていた。まだまだ帝国兵には劣るかもしれないが、徴兵制の王国兵とは段違いの実力をつけている。ジルクニフから見て合格点は与えられるらしい。
「なるほどな。次男はスペアだが、それ以下の価値は落ちるからな。本人達も燻っていただろうし、良い考えだと思う」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「そうか。·····ん、何やらあったらしいぞ」
ジルクニフは近づいてくる物見に気がつく。
「どうした?」
悟は威厳を保ちつつ、優しく問いかける。
「失礼いたします。ザナック王子とレエブン候を保護いたしました」
「まあ、お兄様を。良かったですわ」
「すぐに会おう。こちらに通してくれ。それと、王都にザナックが捕まったという偽の伝令を出せ」
「かしこまりました」
勢いよく物見は戻っていく。
「油断させる気だね?」
「です。まあ、そんな事をしなくても油断しているはずですが、バルブロにとってザナックが逃亡しているのは愉快ではなかったはず。捕まったとなれば、浮かれもするでしょう。まして、戴冠式が迫っているとなれば、なおさら」
「効果てきめんだな。それは」
「そこで、絶望に突き落とすのよ。それでゴミは片付くの」
ラナーが満面の笑みで毒を吐く。遠目から
見ていたらまさか毒を吐いているとはきっとわからないだろう。
(やはり、この二人を敵に回しては危険だな。下手すれば帝国が滅びるぞ·····)
ジルクニフはそんな心情はおくびにも出さず、笑顔で同意を示した。
ギリギリ投稿·····。
そして前回は予約時間も間違えてました·····秋の番組改編みたいになってしまった·····。