IS-Black Gunman-   作:reizen

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2020/10/23

文章一新しました


第9話 中国からの転校生

「転校生?」

 

 教室に入ると、布仏からそんな情報がもたらされたので聞き返す。

 

「そうなのです! 二組に所属するんだってー」

「………ヤバいな」

 

 この時期に転校生、となれば十中八九専用機持ちだろう。そんな奴がこの土壇場に登場とはついていない。四組は専用機持ちだが倉持技研の怠慢で機体がまだ完成していないからなんとかなると思っていたから完全に油断した。織斑の戦闘方法はまだ確立できていない。武装がブレード一本だけ。セブンソードとかならともかく何故ブレード一本だけなのか是非とも開発者をぶん殴ってやりたい気分だ。

 

「布仏、その転校生がどこから来たのかわかるか?」

「中国だよ~」

「………確か第三世代兵器が衝撃砲だな。しかも他の国とは違って燃費も良い。零落白夜を使用して削るには確実性が必要だからな。ヒット&アウェイでどうにかできれば良いが、織斑の技量ではあまり期待できないし、何よりも距離を離したらそう簡単に近づけられない。……こうなったら白式に仕込むか」

「思考がブラックだねー」

「そりゃあ、豪華賞品がデザートフリーパスとなれば手を抜くわけにはいかない」

 

 楓が喜ぶというのもあるが、まぁ何よりもIS学園が他国から入学してくる奴らに配慮して様々な国を作れるように優秀な料理人を呼び寄せている。そして俺はデザートが好きだ。

 

「そっかー。たけっちはデザート好きなんだー」

「特に洋菓子類だな」

「なんていうか、二人って結構対極的だねー」

 

 箒の事だろう。まぁアイツは親父の影響で和モノが好みだし。昔は俺と喧嘩した時に「西洋かぶれ」とか言っていたなぁ。お前が和に染まり過ぎなんだが。

 

「―――その情報、古いよ」

 

 織斑をどうやって強くするかと考えていると、隣からそんな声が聞こえてきた。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

「鈴……? お前、鈴か?」

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 織斑の知り合いのようだが、偉く気取っているな。カッコつけたいお年頃って奴だろうか。

 

「何カッコつけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタは!!」

「………そろそろ戻った方が良いぞ」

「はぁ。何でよ」

 

 俺は自分の席に戻る。しばらくすると暴力装置がさっきのチビに鉄拳を落としていた。

 

「……一夏、今の誰だ? 知り合いか? 偉く親しそうだったな?」

 

 ついでに織斑に迫っているアホ共も殴られているが、馬鹿な奴らだ。にしても二組のクラス代表が交代か………後で聞く必要があるな。

 

 

 

 

 

「お前のせいだ!」

「……自業自得だろ。未だ進展していないことも含めて」

 

 そう言うと箒が唸るが、俺は無視して織斑を引っ張って食堂に移動する。

 

「どうしたんだよ、武」

「作戦会議だ。このままだとお前の優勝が難しいからな」

「え? 何で?」

「二組が専用機持ちになった。となれば優勝が厳しい」

 

 ただでさえ剣一本でようやく他クラスを倒せる程度の力だ。それでも四組は布仏から俺たちと同類に近い存在と聞いているため、周りと違って辛い戦いになるというのに、二組がここに来てクラス代表交代とか洒落になっていない。

 

「? 何で武が優勝を狙っているんだ? もしかしてデザート狙い?」

「そうだが?」

「あ、いや、なんかごめん……」

 

 そんなこんなで食堂に着いた俺たちの前にチビが現れた。

 

「待ってたわよ、一夏!」

「邪魔」

「あ、ごめん」

 

 道を塞いでいるチビ。ああ、そういえばこいつも織斑狙いだったのか。しまったな。じゃあ先に姉の方に聞きに行くか。

 食券を出して自分が依頼したものを受け取った後、席に座る。織斑たちもセットで付いて来た。

 

「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ? おばさん元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ。アンタこそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見た時びっくりしたじゃない」

「………」

 

 なるほど。活発系女子か。箒と違ってコミュ力はあるようだが、この様子を見る限りはただの友達だろう………胸はあまりないようだが、だがその分は身長が小さいのでカバーできるか。……そういえばクロエも小さかったが、今はどうなっているだろうか。ま、悠夜も「女の魅力は胸や尻だけじゃない。背が小さくて胸が小さくてもその欠点をカバーできるポイントがあればどうにかできる」と言っていたからな。思えば楓もクロエもそういうポイントはありそうだな……楓は将来、遺伝子的に美人系になりそうだけど。クソ姉や箒を見る限り胸も成長しそうだな。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが?」

「そうですわ! 織斑さん、まさかこちらの方と付き合ってますの?」

 

 偉く対象的な二人が来たな。片方はライバルが現れて冷や冷やして、もう片方はまるで面白いものを見ている感じだろう。お嬢様は恋愛に興味津々のようだ。

 

「べ、べべ、別に私は付き合っているわけじゃ……」

「そうだぞ。何でそんな話になるんだよ。ただの幼馴染だよ」

 

 と言われて睨む凰。あ、たぶんアレだな。そこは付き合っていると肯定してほしかったところだな。俺は絶対にしないが。

 

「幼馴染……?」

 

 と、何故か疑問を浮かばせる。別にお前以外の幼馴染がいたところでなんら不思議ではないだろうに。

 

「あー、えっとだな。箒と武が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ? 鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二終わりに国に帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」

「………その計算だと、一年で専用機持ちになったということか?」

「そういうことよ!」

 

 と、ドヤ顔をする凰。素直に驚いている。俺はともかく戦闘以外は一般人の悠夜をはじめとして、普通の人間にとっては難しいISの勉強を手早く終わらせるのだから並大抵の努力でないだろう。ちなみに一般人枠外の俺と零司は割と簡単に終わらせている。まぁ、悠夜はその分戦闘に特化しているからアレはアレで恐ろしいがな。

 

「で、こっちが箒と男の方が武。ほら、前に話したろ? 小学校からの幼馴染で、俺の通ってた剣術道場の兄妹だよ」

「ふーん、そうなんだ」

 

 と、凰は箒を値踏みするような視線を向ける。

 

「初めまして。これからよろしくね」

「ああ。こちらこそ」

 

 二人の間で火花が散ったのは決して気のせいではないだろう。

 

「ンンッ! わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわね。中国代表候補生、凰鈴音さん?」

「……誰?」

「なっ!? わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存知ないの?」

「うん。アタシ他の国とか興味ないし」

「な、な、なっ………!?」

 

 ………というよりも、それどころじゃないってのが本音かもな。女って男に対してもそうだが、同性間でも反りが合わなければかなり酷い扱いをするというからな。

 

「い、言っておきますけど、わたくしはあなたのような方には負けませんわ!」

「そ。でも戦ったらアタシが勝つよ。悪いけど強いもん」

「大した自信だな。その自信が偽りでないことを祈っておく」

「アンタも随分な自信あるじゃない」

「そりゃそうだろう。一部例外を除いて基本的に女は雑魚だと思っている。もっとも俺はその例外を織斑千冬と姉の篠ノ之束以外知らないが」

「え? じゃあやっぱり篠ノ之って―――」

「ああ。だが俺に接触したところで優遇は期待するな。アレは人嫌いが激しいからな。睨まれたくなければ普通の友人程度の付き合いもしくは純粋な恋愛による恋人同士の付き合いをお勧めする。恋愛に関してはジョークだがな」

 

 流石に俺に惚れろとは言わないが………というか俺に惚れる奴が現れるか疑問だけどな。一生独り身の可能性が高い。

 

「改めて。二人目の男性IS操縦者の篠ノ之武だ。そこにいる無駄乳コミュ障ポニテの双子の兄でもある」

「おい待て。何だそれは」

「お前を表すに実にいい言葉だと思うがな」

 

 と言ってから凰の方を見ると目を輝かせていた。

 

「や、やっぱり胸だけがすべてじゃないわよね!?」

「当然だ。確かに胸は魅力の一つであることは否定しないが、むしろ小さいことによって可愛さが引き立つという点もある。そうじゃなければ小学生などに性的興奮を覚える者もいないし、幼児体型に萌を感じる者も存在しないだろう?」

「………なるほどね」

「ま、織斑の性癖なぞ俺は知らんが。いっそのこと二人っきりで襲ったらどうだ?」

「武、貴様風紀を乱させるつもりか!?」

「お前の場合は風紀とは関係ないだろうに。それにお前だって織斑の性癖は気になるんじゃないのか?」

 

 「そ、それは、そうだが………」と小さく呟く箒。それを見て一夏は「何を言っているんだ?」と言い出している。

 

「そう言えば武さんの好みのタイプはどのような方ですの?」

「……タイプ、か?」

 

 と言われて俺は考え込んだ。俺のタイプ、か。というか俺はそれ以前に―――

 

「性的興奮と無縁だからな。昔に襲われて返り討ちにした時以降、そんなことした覚えがない」

「え? 返り討ち?」

「ああ。相手の銃を奪って、両耳を吹き飛ばした。相手が実銃を装備していたのは驚いたが、あの時ばかりは助かった。前例があったことで女が強いと思っていたからな。だが現実は実銃で耳が吹き飛び、階段から落ちて死亡。その事で俺が殺したと疑いをかけ、暴行を加えてきた女警官を再起不能にしてやった。それだけだ。強者を名乗っておいて中学生に素手で負けるなど論外だ。その後警察署で暴れたが、その時は実力者がいなくて簡単に抜けだせた。にしても意外だったのは誰も飛んでこなかったんだよな。IS技術を応用すればISなしでも人類は飛べるし、何よりISなしで施設の破壊など容易いというのに」

「………え? 飛ぶって、跳躍とかじゃないわよね?」

「飛行に決まっているだろう」

 

 凰は驚き、オルコットも本気で引いている。一体どうしたというのだ?

 

「い、EOSを使っているとかじゃ?」

「あのデカブツだけのエネルギー効率クソ兵器を誰が使うと。普通に飛ぶのさ。ISスーツは必要だけどな」

「………え?」

「姉が篠ノ之束だと言ったろ? 小さい頃に無理言って一着譲ってもらったんだ。それをちょこちょこっと改造して、ISなしでも飛行できるようにしていたのが小五の時。そしてISなしでも人に流れるエネルギーを応用して高威力へと変換する銃を作ったのが小六ぐらい。そして非固定浮遊部位に変換して、今ではどのような衣装でも空を自由に飛べる」

「あ、アンタもそんなことできるの?」

「む、無理だ。私はこれまでずっと剣道しかしていなかったからな。というか姉さんもそうだが、やはり武も十分規格外過ぎないか……」

「そ、そうですわね。あのガンプリンセスも一人で作ったと言いますし……」

「そう言えば、俺との特訓に使っているロボットって武が作ったって……」

「あれくらい普通だろ。というか普通に少し前のロボットアニメ見てたら誰だってああいうのを作ろうとするだろうし。それに十年あって男を見下し続けるならスペースコロニーを打ち上げるなり宇宙艦の百や二百あっても不思議ではないと思っていたからな」

 

 現に零司はそうしていないことにガチギレしていたし。

 

「ま、そんなこともあって性的興奮って全然しないんだ。残念だったな」

 

 そう言ってすべて食べ終わった俺は席を立つ。

 

「もう行くのか?」

「ああ。職員室に用があるのでな。世界がどれだけ無能を極めたのかという談義も良いが、それよりも少々聞き出す事案があるのでね。ああ、それと凰」

「何かしら? それとアタシのことは―――」

「放課後、特訓の時は近づかないでくれ。残念ながら一組の代表は弱いのでね。あと、抗議は受け付けない。他クラスに配属された運命とでも思ってくれ」

 

 食器を乗せたお盆を返却口に戻した後、職員室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 職員室に着いた俺は挨拶もせずに目的の人物を見つけるとすぐに近づく。

 

「どうした篠ノ之兄。それと入室する時に挨拶をだな―――」

 

 相手の主張を無視して椅子から無理矢理立たせた後に近くの壁に寄せると同時に相手の顔の近くの壁を叩く。

 

「お、おい―――」

「どういうこと? 何で二組のクラス代表が変わっている? 基本的に一年間の変更はないという話じゃなかったのか?」

 

 後ろから「か、壁ドン……」とか「ブリュンヒルデに対して壁ドンって……」とか「まさかのタケ×チフ!?」とか聞こえるが今は無視だ。あと最後のカップリングはまず実現しない。

 

「……何だ。そんなことか……」

「……何で残念そうなんだ」

「気のせいだ」

 

 真顔になった織斑千冬。

 

「だが教師を壁ドンするのは関心せんな」

「相手を逃がさないには有効と聞いたのだが?」

「…………いや、正しくはあるが、そうする場合―――」

 

 と何故か山田先生の方を見るので視線を追うと、何故かキラキラしていた。

 

「私のことは大丈夫なので続けてください!」

「………なるほど。確かにそうだな。とりあえず勘違い教師は後で消すとして、それよりもクラス代表の件だ。何故二組のクラス代表が変更になっている」

「……ああ。その件だがな―――」

「―――何か問題でも?」

 

 と誰かが話しかけてくる。

 

「誰だお前?」

「あら、教師に対して敬語を使わないなんて礼儀がなっていないわね。年上には敬語を使うものよ? それとも知らないのかしら?」

「生憎、俺はお前らのように十年もありながら大して技術を発展させられなかったお前らを敬う気持ちなんて持ち合わせていない。御託を並べる前に努力を重ねたらどうだ?」

「………随分言ってくれるじゃない。そこまで言うならあなたはそれ以上の技術を持っているというのよね?」

「良いだろう。これより倉持技研とやらを消してくる」

「おい! 春原先生も怖い事言わないでください! コイツの場合は昔から一般的には不可能と思われている技術を平然と完成させるのですから!」

「は、はい!」

 

 何を焦っているんだ、この女は。

 

「安心しろ。襲撃にIS装備は使わない」

「それはつまりISなくてもISから逃げ切れるという事だよな。というかお前、何故倉持技研を?」

「そりゃあ白式の権利が絡んでいるからな。それにあそこのもう一機の機体凍結理由が気に入らない」

「………その話か」

「マルチロックオンシステムぐらいは一日あれば組めるだろうに」

「それできるのはお前と束くらいだからな!!」

 

 と聞いた俺はため息を吐いた。

 

「あの姉は一時間あれば普通にできるぞ?」

「………否定、できん」

 

 そりゃそうだろう。あの女はとことん規格外だからな。俺の技術なんてあの姉に比べてはまだまだだ。もし俺が本当の天才なら、あの無頓着女の所にクロエを置いて行かなかったのだがな。

 

「とりあえず、その話は隣で話そう。春原先生も、こいつはなんとか説き伏せておきますので」

「……わかったわよ」

 

 織斑千冬に案内され、応接室に移動した俺たちは話の続きをした。

 

「それで、何で二組のクラス代表が変わった? 確か規定では既に締め切られていたはずだろう」

「別に珍しいことではない。特に凰の場合は元々入学予定があったが、機体の調整で遅れていたのが理由だったからな。その事もあって予め交代するかもしれないという連絡があった。それとも何か不都合があるのか?」

「デザートフリーパス」

「………そう言えばお前、デザート好きだったな」

 

 と言ってから俺の腹部に目をやる織斑先生。

 

「どうした?」

「何でもない」

「……んで、それで俺をクラス代表にすることは」

「不可能だ。………というよりも、伏せるように言われたが一番反対したのは教師よりも学園長なんだ。あまりにも強すぎるため、という理由でな」

 

 ……なるほど。合点がいった。つまり理事長が阻んだという事か。………確かにクラス代表をさせるよりもサポーターにさせた方が俺たちの目的のために動きやすい。

 

「………そう言えば私もお前に話があったんだ」

「どうした?」

「……お前は今も束と繋がっているのか?」

「向こうはともかく、俺はそのつもりはないさ」

 

 そう言うと織斑千冬は本気で驚いている。……そういえば、こいつは俺が姉貴にべったりだった時しか知らなかったな。

 

「……その、どうしたんだ?」

「別に。ただもうあの姉を目標から外しただけだ」

 

 それでもあの姉が本当の天才であることは認めている。馬鹿要素が混じっているのは理解しているが………というかあの女が開発したのは公式的には白騎士と暮桜の二機だけだが、白騎士はともかく暮桜の仕様はどう考えても異常だ。良く優勝で来たな、この女。

 

「………そう、か」

「安心しろ。俺は確かに異常者の自覚はあるが、だからと言ってこの学園に手を出す気はない。その代わり俺の好きにさせてもらうがな」

「………倉持技研を襲うのは?」

「とりあえず延期しておいてやる。だが織斑の成長が限界を迎えた時、考えるがな」

 

 そう言って俺は応接室を出る。とりあえず、織斑の訓練メニューを変えよう。


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