IS-Black Gunman-   作:reizen

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2020/10/23

文章一新しました


第8話 予定外の出会い

 夜。IS学園の正面ゲートの前に小柄な体に不釣り合いなボストンバッグを持った少女が立っていた。その少女の近くに一台のリムジンが停止、ここで車の音を聞くこと自体珍しいと思った少女はそっちを見ると、長い金髪を揺らした自分よりも背が高くお嬢様と言った雰囲気の少女が降りてきたのを見て目を奪われる。

 

「ありがとう、チェルシー。ここまで来れば後は一人でも大丈夫ですわ」

「わかりました。では私はこれで失礼します」

「はい。ご苦労様」

 

 リムジンがどこかへと行くのを見て動揺を隠せない。だが少女にとってそこから出てきた少女がどういう人間かというのはわかっていなかった。

 

「あの、あなたは……」

「アタシは(ファン)鈴音(リンイン)。中国の代表候補生よ。IS学園に転校してきたの」

「そうでしたのね。わたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生ですわ」

「そ、そうなんだ。これからよろしくね」

「ええ。こちらこそ」

 

 鈴音は内心「誰だっけ?」と思っていたが、あえて口にしなかった。

 

「アンタも転校生なの?」

「いえ、わたくしは一年一組に籍を置いていますわ。ただ専用機をオーバーホールする必要があるということで一度本国へ戻っていましたの」

「今年度が始まってまだ三週間よね?」

 

 そんな疑問を持っていると、セシリアは顔を逸らす。

 

「色々あったんですのよ、これでも」

「聞いてみたいわね。三週間でオーバーホールする理由を」

「の、ノーコメントで……」

 

 には見覚えのある男二人いた。

 

「桂木!? それに平坂も?!」

「……誰だ?」

「確か、小五の頃に転校してきたファンファンさん」

「凰鈴音よ! って言うか誰よそれ?!」

 

 「ああ、そうそう」と言った悠夜に鈴音は睨む。そこでセシリアが尋ねた。

 

「あなたたち、ここはIS学園ですわよ。何故ここにいるのです?」

「……君たち女が無能だからだけど?」

「零司、それだと反感買うだけだから」

 

 舌打ちをする零司。悠夜はできるだけ丁寧な口調で応対した。

 

「ま、こっちも場違いだってのはわかっているけど、色々あってこの学園に来ることになったのさ。ああ、でも基本的にそっちとは関わらないし襲う事もないから安心して」

「そんなことを聞いて「はい。そうですか」って引き下がれるわけないでしょうが!」

「………IS使えるからって偉そうに」

「あぁん?」

「凰さん、落ち着いてください。まだ向こうは攻撃をしていませんわ。もっとも、今ここで簡単に逃がすつもりもありませんが」

「できれば穏便に見逃してくれるとありがたいんだけどね。こっちは君たちとは敵対したいわけじゃないし、敵対したところでお互いメリットなんてないし」

「―――あぁ! ゆうやんにれいれい!」

 

 その声を聞いた瞬間、零司はすぐに左腕に砲台を展開して上に何かを撃ち出して離脱する。飛び込むように現れたその少女を悠夜は受け止めた。

 

「久しぶり、本音」

「そうだよ! 何でずっと連絡してくれなかったのさー!」

「色々とあったんだよ。これでもね」

「……あの、布仏さん、その方たちは?」

 

 セシリアが尋ねると、本音はある事に気付く。

 

「……あれー? 何で二人ともここにいるの?」

「色々あるんだよ。これからよろしくね。……簪ちゃんの機体の件でも関わるだろうし」

「え―――」

 

 すると悠夜の姿は突如として消失。その光景に本音は泣きそうになるが、涙を流すのを堪える。

 

「布仏さん、さっきの彼らは一体―――」

「そんなことはどうでも良いでしょ。ともかくアイツらがいることを学園に報告しないと―――」

「………だから無駄だって言ってるだろ」

 

 いつの間にそこにいたのか。零司はセシリアと鈴音の後ろに現れて手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「……あれ? わたくしたちは?」

「……うーん。あれ? アタシ、何かを言おうと思ったんだけど、なんだったっけ?」

 

 しばらくして、二人は立ち上がる。やがて各々の目的を思い出して行動するのだった。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

「「「というわけで、織斑君クラス代表決定おめでとう!!」」」

 

 クラッカーが鳴らされて紙テープが織斑の頭に落ちる。俺はその光景を遠くから見て食事をしていた。

 

「……ところで、お前は向こうに行かなくていいのか?」

「そんなことよりも聞きたいことがある。そのISはいつから持っていたんだ」

 

 珍しく箒が二人きりで話したいというから何かと思えばそういうことか。

 ちなみに隣で透明化した楓が美味しく色々と頂いているが、箒はそれに気づいていないようだ。

 

「いつからか。……たぶん小学生になる前かな。普通の綺麗な石だと思っていたから、これがISだと気付いたのは数年前」

「………そんなにも前に気付いていたというのか。なるほど。納得した。だからこそあの動きができるわけだな」

「……いや、あの動きぐらいはほとんど最初からできていたけど」

 

 むしろ機動方法に関しては成長がないと言えるほどだ。

 

「それで、何が聞きたいんだ? まさか自分にもISが欲しいと言い始めるんじゃないだろうな?」

「……………」

「図星かよ……」

 

 と言っても別に珍しい事ではないが、だからと言ってホイホイと簡単に渡せるものじゃない。

 

「大体、何でお前はそんなにISが欲しいんだ? 織斑と一緒に戦えるとか思っているなら止めてくれ」

「な、何故わかった」

「………マジで止めてくれ」

 

 そう言った俺に箒は憤慨する。

 

「何故なのだ!? 何故貴様は持てて私にはないんだ!!」

「………そりゃあ、70億近くいるであろう人類のざっと半分から2/3が女だとしても、その内の465席しかないんだから誰だって持てるわけじゃないだろうに。つうか文句言うなら姉を嫌って代表候補生になる努力すら怠った自分に言えよ」

 

 と言ってから俺はスパゲッティをフォークでまとめて口に入れる。

 

「………何故そんなことを言えるのだ、お前は。私たちは姉さんのせいで辛い目にあったんだぞ!!」

「…見解の相違だな。確かに俺は姉が嫌いだが、人間はそれ以上に醜い存在だ。ただ姉がISを発表したからそれがより深く露見しただけに過ぎない。現に俺は中学一年の時に虐められてたし」

「………意外だな」

「これでも我慢した方だよ。別の事を心の支えにしてさ。でも無理だった」

「………武。その、すまな―――」

「あの程度で女の方が強いとか冗談でしょ。ISがなければ空も飛べない、ちょっと殴っただけで漫画みたいに回転してぶっ飛ぶ、銃を媒介に高威力の高炎圧砲は撃てない。おまけに魔法も使えなければ量子変換すら使えない。あんなのと法律でよくもまぁ自分たちが本気で強いと思えたわ。しかも俺を性的に襲ってきた奴は両耳吹き飛ばしてやったら泣きわめいて逃げ出して足を捻って勝手に階段落ちて死んだのに、あのクズ女警官、俺がすべて悪いみたいなことを言うからそいつには消えてもらったよ。何本か潰しておいたからもう御先は真っ暗だろう。どうでも良いけど」

「…………………は?」

「ちなみにそいつがあまりに弱かった結果、俺は女が強いと思えなくなったどころかゴミクズのように思えた」

 

 そう言うと箒は何とも言えない顔をする。

 

「先に言っておくが、確かに女でも強い奴はいることは理解している。俺たちの身近で言うとクソ姉や織斑千冬がそれに該当するだろう。ISという分野に限ればイタリアのアリーシャ・ジョセスターフをはじめとした強者もわかっている。だが銃姫を前にすればスペック的には遠く及ばないし、何よりも銃姫はあれだけのエネルギー兵器を持ちながら白式のようにエネルギー切れを起こさないほどの安定性を持ち合わせている。そして生身で戦うならば―――例え織斑千冬が相手だろうと俺は遅れを取る気はない」

「……随分、自信があるんだな」

「当然だ。俺は幻想に憧れていて、ある程度は再現できる力を持っていた。今の俺が異世界に行ってもISやチート抜きでどうにかできるくらいさ」

 

 俺の存在そのものがチートだからな。……まぁ、それすら封じられたらどうしようもないが。

 

「何故異世界なんだ……」

「最近、IS系よりも異世界系の方が需要高いからな。まぁ、女の冗長はISの登場によるものだと思っている奴らが大半だからそれも仕方ないが」

 

 なんて冗談も交えていると、食堂の入り口の方が騒がしくなった。視線をやるとイギリスに帰っていたはずのオルコットが現れたのである。

 

「………帰ってきたのか」

「なんだ。残念そうだな」

「……気のせいだ」

 

 箒をからかう。どうせオルコットも織斑を狙っているかもしれないが、それはそれこれはこれだろうに。

 

「少しは友達でも作ったらどうだ? このまま行くと箒は孤独死まっしぐらだぞ」

「……余計なお世話だ。お前こそ作ったらどうなんだ」

「俺はいるけど?」

「何!?」

 

 え? 何で俺、本気で驚かれてるの?

 

「……いないと思っていたのか?」

「……ああ」

「あの、ちょっと良いでしょうか?」

 

 何故かオルコットがこっちに来ていて俺たちに話しかけている。

 

「どうしたオルコット。織斑なら向こうだぞ」

「知っていますわ。あなたに話がありますの」

「……話?」

 

 話、話か……ボコったとは言えオルコットは女尊男卑思考を持っている。つまりは今度こそ研究所に入れとでも言ってくるのだろうか。いや、その可能性は高いだろう。確かに俺は天才だが、世間的に見れば体の良い生贄。俺が潰したのは違法施設と一つの町の悪者排除したくらいだ。つまり、ただ強いだけのIS操縦者でしかない。つまり今は丁寧に対応しているが、銃姫の待機状態を発見次第実力行使に出るのだろう。

 

「すみませんでした!!」

 

 と考えていたところでオルコットの口から発せられたのは謝罪だった。

 

「………どうしたんだ?」

 

 あの女尊男卑の塊が男に謝罪の上、頭を下げただと!? と内心驚いていた俺は箒の顔を見るが、箒も箒で信じられないという顔をしていた。

 

「わたくし、あなたに敗れて気付いたのです。強いか弱いかは性別で決めるものではないことに。性別ですべてが決まるなんて、本当ならあるわけございませんのに、わたくしはそれにすら気付かなかった。自分が以下に愚かだったのか、よくわかったのです」

「………いや、そんなの当たり前だろ。馬鹿なの、お前」

「ちょ、武、それは―――」

「いいえ。武さんの仰る通りですわ。わたくしは馬鹿です。大馬鹿のクズ野郎ですわ!!」

 

 クズ女が正しいだろうが、それはともかくだ。

 

「まぁ、そこまで理解できていれば俺から言えることはないさ。まずはビット操作をマスターしろ。今のお前は移動砲台程度の価値しかない足手纏いだ」

 

 そう言うと少し傷付いた顔をしたオルコットだが、俺との実力差を思い出したのか思い直したようだ。

 

「いえ、そうですわね。ビットを扱えないわたくしの価値など、本当に移動砲台程度の価値しかありませんわ」

「精々、戦艦上に配置されるだけの存在だな。どこぞの足つき一派に乱入されて機体は大破してボロボロになるか、功を焦って砂丘に足を取られるかの二択だな」

「一体何の話をしていますの、あなたは……」

 

 少し呆れを見せるオルコット。やっぱり通じないか。

 

「……ところでオルコット、ISは没収されたのか?」

「いえ。修復後にまた渡されましたが、何か?」

「なら明日からの織斑強化プロジェクトに参加してくれ」

「なるほど。指導員としてですわね。わたくしも一組の人間、クラス対抗戦に向けて織斑さんの強化のお手伝いをさせていただきますわ」

 

 といつもの調子に戻るオルコットを見ながら俺はふと思った―――ようやく気付いたか、と。とはいえ今はIS学園だし簡単には手を出すことはできないだろうな。

 

「はいはーい! 新聞部でーす! 話題の圧倒系男子、篠ノ之武君にインタビューしに来ましたー!」

「………インタビュー?」

「そうそう! IS三機相手に無双するなんて中々できることじゃないしね! 今凄く注目されているんだよ! って事で何か一言頂戴!」

「生徒会長の役職に着いている者以外の挑戦は時間が合えば受けてやる。対抗戦が終わったらな」

 

 そう言うと一瞬場が静まり返ったが、すぐにさっきの女が続けた。

 

「もしかして生徒会長に手を出さないのは負けるから?」

「それはないな。相手が誰だろうと負けるつもりは毛頭ないが、そもそもそいつに勝ったからと言って十年も無駄な時間を過ごした奴らのために動くつもりはないからだ。学園最強が生徒会長をするというのはわかるが、国の相手をしていたら殺意が湧きそうだ」

「……あ、そう」

 

 これで俺をインタビューするという勇気はもうないだろう。

 ちなみに生徒会長関係者に手を出したら本当に後々が面倒なんだよ。主に悠夜のせいでな。

 

「じゃ、じゃあ、ちょうど専用機持ち三人がいるんだし、三人で写真撮ろうか!」

「俺はそろそろ戻るから後は好きにしてくれ」

 

 そう言って俺は席を立つ。後ろからは楓が付いて来ていることは確認済み。

 

『良かったね、お兄ちゃん。ちゃんとドリルさんが専用機持って戻ってきてくれて』

『まぁな。移動砲台とはいえ、戦力はあった方が良いからな』

 

 なんて会話を続けながら、人がいないことを確認してから楓を抱えて部屋に戻った。


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