IS-Black Gunman-   作:reizen

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2020/10/23

文章一新しました


第5話 それぞれの思惑

 セシリア・オルコットは優勢だったか、武に対して違和感を覚えていた。

 

(この方、一体何故……)

 

 それもそうだろう。さっきから操縦は無茶苦茶。回避できるものも回避しない。挙句には―――攻撃を食らっても一切怯まないのだ。

 

「あなた、ただの素人というわけではありませんわね。篠ノ之束の弟というのは伊達ではないということですか」

「その素人に釘付けになってライフルしか使わないのはテメェなりの手加減って奴か?」

「……何の話ですの?」

「あくまでも惚けるつもりかよ。おい織斑、お前オルコットのメインウェポンの場所がどこにあるのかわかってるだろうな?」

「いや、わかるわけないだろ!?」

 

 その言葉を聞いた武は本気で一夏に「何言ってんだこいつ」という顔を向けた武は今もセシリアの攻撃を食らっているが怯まない。

 

「行きなさい!」

 

 セシリア・オルコットが使用するIS『ブルー・ティアーズ』から四基のビットが分離して武の『銃姫』に襲い掛かる。だが武はその状況に怯まずいつも通りに飛んでいた。

 

「さぁ踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

「躍らせたいなら躍らせてみろよ」

 

 そう返した武だが、そのタイミングで一夏がセシリアに対して攻撃を仕掛けた。

 

「もらった!」

「させませんわ!」

 

 咄嗟に回避するセシリア。武はすぐにビットによる包囲網を抜け出したが、一向に滞空しているビットを見て織斑に対してアンカーを飛ばす。

 

「おわっ!?」

「いただきますわ!」

 

 そしてセシリアは一夏に攻撃し、ビットを移動させる。武はその様子を観察してからセシリアに接近するが、ビットたちの援護射撃に阻まれた。

 

「あなたの装甲、ビームを無効化してますわね」

 

 一向に食らっても怯む様子を見せない武に対してセシリアが言った。

 

「ああ。そうだ。こいつの装甲はお前の言う通りビームを無効化している」

「流石は希代の天才と言われた篠ノ之束博士力作のISですわね。もう対応しましたか」

「………」

 

 急に黙る武。その様子にVIP席に座る三人はあまり良くない未来を感じ取らせていた。

 武は装甲にモノを言わせ、一夏の動きに合わせてセシリアに接近した。

 

「食らいなさい!!」

 

 背部から腰部へと、ブルー・ティアーズに展開されていた武装が移動する。そして砲口からミサイルが二基、一夏と武に向かって飛んできた。

 

「うわっ!?」

 

 一夏はすぐに反転してミサイルから逃げ始める。そして武は近くに迫っていたこともあって直撃、剥がれていく装甲と共に地面を落ちていく。

 

「さて、止めですわ、篠ノ之武。あなたがいくら篠ノ之博士の弟と言えど、所詮は男。無様に這いつくばって許しを請いなさ―――」

 

 だがセシリアの言葉が最後まで続かなかった。それもそのはず。落ちていく武がすぐさま両手にライフルを、そして展開したビット計22の砲門から同時射撃を行い、直撃させたのだ。

 

「何故、無傷なんですの!?」

「さっきの形態の正式名称は「銃姫(ガンプリンセス)ビーム分散装甲(ヴァリエンスビームアーマー)」。宇宙コロニーを開発するにあたって一番懸念するべきことは、いかに今後発展していくエネルギー兵器を防ぎ、中にいる人間たちを守ることが可能か試すための実験形態だ」

「………まさかあなた、わたくしに黙って実験を―――」

「ああ、していた。当然だろう? 言ったら意味がない」

 

 笑みを浮かべる武。セシリアは顔を赤くしていくが、武は追い詰めるように言葉を続ける。

 

「それとオルコット、まさかお前がここまで厚顔無恥な奴だとは思わなかった」

「何ですって!?」

「自分とビットの同時操作、できないだろ」

 

 セシリアは冷や汗をかきはじめるが、それでも構わず武は続けた。

 

「………やれやれ。ビットを出したから少しは期待したが、所詮は雑魚か」

「何を。この操作は難易度が高いんですのよ!? そんな兵装も持たないあなたに一体何が―――」

 

 瞬間、ブルー・ティアーズの飛行艇浮遊部位(アンロック・ユニット)が背後から攻撃を受けた。右側にのみダメージがあり、セシリアは背部を見るとそこには自分のではないビットがある。そして武の方を見て理解した。

 

「まさか、あなたも持っているなんて………」

「当然だろう。むしろ疑問でならない。これほどまでメジャーな武装が未だ量産化されていないのか」

「流石は篠ノ之博士と言わざる得ないで―――」

 

 その瞬間、武はセシリアの前に現れて自身の左手を彼女の胸に当てる。瞬間、セシリアの身体に衝撃が走り、残っていたブルー・ティアーズの装甲が一部を残して吹き飛んだ。

 そのまま落下していくセシリアをずっと間で待っていた一夏が拾う。

 

「大丈夫か!?」

「……え、ええ……一体何が―――」

「ブルー・ティアーズのシールドエネルギーの残存を確認。ターゲット、マルチロック」

 

 一夏が使用する『白式(びゃくしき)』とセシリアが使用する『ブルー・ティアーズ』のハイパーセンサーに『銃姫より複数のロック反応を確認。回避推奨』と表示された。

 

「何やってんだよ武! 彼女はもう―――」

「奴は三度、地雷を踏んだ。安心しろ。出力は20%に抑えている」

『そういう問題ではない!!』

 

 突如アリーナに千冬の怒声が割り込んだ。

 

『いい加減にしろ、篠ノ之兄! お前はオルコットを殺す気か!』

「高が女が一人、死ぬだけだ。世界規模で見れば人類が一人消滅するだけに過ぎない」

『それは詭弁だ!! それにそんなことをすれば―――』

「国際問題になってイギリスが文句を言ってくる、か? 馬鹿な女だ。女性優遇制度を施行し、あまつさえこの程度の機体しか作れない国に一体何の価値がある」

 

 鼻で笑って武は引き金を引いた。一夏は瞬時にセシリアを庇う様に抱きかかえ、自分のみ攻撃を食らった。

 

「シールドエネルギーが……」

「織斑さん、わたくしを置いて逃げてください! 彼があなたを攻撃しているのはわたくしを庇っているから―――」

「こんな状態になっている女の子を放って逃げられるか!!」

 

 そんな時だった。Bピットから打鉄(うちがね)が現れたのである。

 

「武!!」

 

 装着者は箒だった。彼女はすぐさま近接ブレード《(あおい)》を展開して武に対して切りかかるが、武はあっさりと回避した。

 

「一夏! 今の内にそいつを連れて逃げろ! 私が時間を―――」

 

 武はすぐさま箒を蹴り落とす。

 

「この、恥知らずが!!」

 

 すぐさま箒はアサルトライフル《焔備(ほむらび)》を展開するが、武には当たらずぶん投げた。

 

「普通銃を投げるかなぁ」

「黙れ!」

 

 打鉄で肉薄する箒だが、武は容易く距離を開けて一夏たちに近づいた。

 

「させるか!!」

 

 近接ブレードを展開した一夏。だが武は近接ブレードを振るう一夏を軽々といなして蹴り飛ばし、もはや絶対防御しか守るモノがないセシリアにライフルの銃口を向けた。

 

「い、いや……わたくしには……わたくしにはするべきことが―――」

「―――冥途の土産に教えてやる。このが銃姫は、ISコアを除く機構全ては、個人的趣味と実益を兼ねて俺が一から作り上げた、唯一無二の完全オリジナルISだ!!」

 

 ―――そう叫んだ瞬間、世界は静止した。

 

 

 

 

 

 出ました! 照合率99.7%、間違いなく指名手配されているISです!」

「………そうか」

 

 真耶からの情報に千冬は冷静に答えたが驚きを隠せなかった。

 指名手配されているIS―――銃姫と言われたその機体を駆っているのは他でもない幼馴染の弟だ。

 

「どうしますか、織斑先生。ここは―――」

「至急、動ける教員を総動員し周囲を囲め。完了次第制圧する」

「―――それには及びませんよ、織斑先生」

 

 その声に驚きを露わにした教員2人。それもそうだ。何故なら目の前にいる男は本来こういうことに関わり合いがない。

 

「な、何故男の人が―――」

「この人は特別なんだ。それよりも、それには及ばないとはどういうことですか、轡木さん」

「彼もはっきりと引き際がわかっているということですよ。それに彼がここに入学した理由の一つとして彼の罪を帳消しにするという事がありますので」

 

 その言葉に大きな反応を示したのは真耶だった。

 

「そんな!? 彼は犯罪者なのですよ?!」

「そうですね。そしてあなたのような方と違って本当の殺し合いを知っている人間です。例え過去にあなたが「銃央矛塵(キリング・シールド)」と呼ばれていたほどの実力者だとしてもです」

 

 その言葉に冷や汗を浮かべる真耶。十蔵は言葉をつづけた。

 

「もう既に気付いているでしょう? 今の彼の原動力は女性に対する殺意――言わばこれは生徒たちが知るべき現実です。自分たちが見下した相手が力を手に入れた時どう行動するかを知るべきだと思ったが故の授業ですよ、これは」

「だからと言って生徒を犠牲にすると言うのですか!!?」

「ええ。イギリスも了承してくれています。何せ彼らにとってあのような発言をしたオルコットさんは今では目の上のたんこぶ。それを犠牲にすることで容易く新しい操縦者を用意できるし、生きていても十中八九更生されるかトラウマによって交代を余儀なくされるかでしょう。さらには戦闘データも手に入れることができるから正しく一人を犠牲にしたところで向こうはたんまりとおつりが来るわけです」

 

 十蔵の説明が終わると同時に会場にブーイングや罵倒が飛んだ。武がセシリアに銃口を向けたからだ。

 

「まぁ、もっとも彼には最初から彼女を殺すつもりはないようですが」

「何?」

 

 十蔵が予想した通り、千冬の耳に武の宣言が聞こえてきた。

 

『―――冥途の土産に教えてやる。このが銃姫は、ISコアを除く機構全ては、個人的趣味と実益を兼ねて俺が一から作り上げた、唯一無二の完全オリジナルISだ!!』

「……何だと……」

「それ故に本来のスペックは彼以外誰も知らないのです。どうやら破壊活動時も6割程度の出力で動いていたらしいので」

「そんな……じゃあ彼を止められるのは織斑先生くらいしか……」

「それはどうでしょうかねぇ。もしこの場で彼が本気になったら、織斑先生でも止められるのか」

 

 意味深な言葉を残して去ろうとする十蔵だったが、足を止める。

 

「織斑先生、決して彼に兵を向けないようにしてください。当然あなた自身が出ることもダメです。世界がきな臭くなっている今、学園としても戦力が減るのは困りますので」

 

 その言葉を最後に十蔵は管制室を完全に出て行った。その場にはおろおろする真耶と自分にすら出撃禁止を言い渡されたことに対する千冬のみだった。

 

 

 

 

 

 十蔵が千冬たちを抑えている間、Dピットへと移動している一人の生徒がいたが、その前に一人の女生徒が姿を現す。

 

「あなたは誰かしら?」

「その言葉は随分と酷いと思うけどね、かた―――楯無」

 

 姿はどう見ても綺麗な女性だが、発せられた言葉に楯無と呼ばれた生徒は動揺を隠せなかった。

 

「何であなたがここにいるのかしら、悠夜」

「君を止めるためだよ。今君に介入されたら色々と困るんだ」

「……どういうことかしら?」

「君では武に勝てないからだよ」

 

 ストレートな発言に楯無の眉は一瞬動いたが、悠夜は構わず続けた。

 

「今は俺たちがいるから武は何とか大人しくすることができるけど、女に対しては彼もまたかなり辛い状況だったのは君も知るところだろう?」

「だから何かしら? 私はこの学園長の生徒会長よ? そんな理由で阻まれるわけには行かないわ」

「………そう。仕方ない」

 

 悠夜は右側に手を伸ばすと、そこに片刃の剣が展開された。その剣からは禍々しい雰囲気が発せられている。

 

「『ダークカリバー』。それを私に向けるつもり?」

「裏切りと取ってくれて構わない。いずれはそうするつもいだったから」

「言ってくれるわね。例えあなたとはいえ、容赦しないわよ」

「わかった。じゃあ俺が勝ったら君の親に結婚の報告に行こうか」

「…………は?」

「大丈夫。優しくするから」

「そ、そう言う問題じゃないわよ!? 何でそんな話になるわけ?!」

「俺の勝ちは揺るがないし、負けた時に色々するつもりだからさ」

 

 照れずにそう告げた悠夜に楯無は心から引いていた。

 

「よく平然とそんなことを言えるわね」

「君を止めるためならば手段は選ばない。それだけさ。それに今この場で俺たちが戦うのも得策ではないだろう? 傍から見れば君はどこの馬の骨とわからない男と言葉を交わしているのだから、そレだけでもかなり絶望的なんだから」

 

 そう言った悠夜は指で音を鳴らすと、二人の周囲を闇の炎で囲った。

 

「火事でも起こすつもりかしら?」

「これは演出なだけだよ。実際俺たちの姿は見られていないさ」

「……演出でここまでする?」

「そこまでするから俺たちは意気投合したのさ」

 

 悠夜は少しだけ考えて楯無に伝えた。

 

「ところで、君は俺の行動が「轡木十蔵の依頼によるもの」と言えばどうするつもりだい?」

「……それはどういうことかしら?」

「戦力を減らされると困る。そう言ってあの人は管制室の方に向かったけどね」

「……織斑先生がいる場所ね」

 

 楯無一体どういうつもりかと十蔵の真意を考えていると、廊下に設置されているスピーカーから会話が漏れた。

 

『―――冥途の土産に教えてやる。このが銃姫は、ISコアを除く機構全ては、個人的趣味と実益を兼ねて俺が一から作り上げた、唯一無二の完全オリジナルISだ!!』

 

 その発言に楯無は動揺を隠せなかった。

 

「……嘘でしょ」

「補足すると、俺たちが彼に再開した時点で既にISを所持していた。言うなれば彼はあのフォルムを自作して自分で動かしていたのさ」

 

 だとしたら、と楯無は色々と突っ込みたくなる。だが同時に目の前で未だに変装(女装)を続ける男を見て、さらに画面内に映る男を見て納得した。

 

「……確かに顔たちは綺麗よね」

「女としての願望はないよ、俺たちは」

 

 悠夜は冷静になって突っ込むが、楯無には届いていなかった。


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