IS-Black Gunman-   作:reizen

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2020/10/23

文章一新しました


第4話 そして始まるクラス代表決定戦

 屋上で寝ていたら少しは楽になったので教室に戻ると、織斑が箒に投げられていた。

 

「……何やってんの、お前ら」

「あ、武! 戻ってきたのか!?」

「………多少はマシになったからな」

 

 楓が心配するから部屋には戻れないから仕方なく屋上だったが、誰かが近づいて来たので全力で吹き飛ばして教室に戻ってきたわけだ。

 

「え、えーと……」

「私たちやっぱり……」

「え、遠慮しておくね……」

 

 それを見て俺は一言。

 

「明らかに避けられているな、箒」

「ふん。貴様のことだろう。女に銃を向けるなど」

「………ああ。まだ抜けていなかったと驚いている」

 

 てっきり克服したと思っていたからな。まさかあの発言が今も引きずっているとは思わなった。

 

「抜けてなかった? 薬でもしていたのか?」

「く、薬って武!? そんなこと止めろよ!!」

「最初からしてねえよ」

 

 とりあえず飯に行くので学生証が入った財布を持ってポケットに入れると、箒を連れた織斑が付いてくる。俺は適当に食事を選んで空いている席に着くと、それに習うように織斑と箒がやってきた。

 

「それでどうしたんだよ武。さっきの状態は普通じゃねえよ」

「………だろうな」

 

 そう返すと織斑と箒が沈黙する。そして箒は何かを察したのか食事を進めた。

 

「そうだ箒、武。俺にISの事、教えてくれないか? このままじゃ来週の勝負で何もできずに負けそうだ」

「下らない挑発に乗るからだ。馬鹿め」

「敵に教えを乞うって、どうなの?」

「そこをなんとか、頼む」

 

 ……まぁ、箒じゃ無理か。それに女に教えてハニトラされるよりかマシだろうし……と思った俺が返事をしようとする前に誰かが割って入って来た。

 

「ねぇ。君たちって噂の子たちでしょ」

 

 そいつは見覚えのない奴だったが妙に馴れ馴れしかった。

 

「は、はぁ……たぶん」

「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど、ほんと?」

「はい、そうですけど」

「でも君たちって素人だよね? IS稼働時間っていくつくらい?」

「いくつって……20分くらいだったと思います」

 

 そう言えば俺の稼働時間っていくつくらいだったっけ。

 

「数秒」

 

 何か視線を向けてきたから適当に答えた。たぶん絶対それはないがな。

 

「それじゃあ無理よ。ISって稼働時間がものをいうの。その対戦相手、代表候補生なんだから軽く300時間くらいやってるわよ」

 

 それがどうしたって話なんだが、まぁそれはともかくだ。

 

「でさ、私が教えてあげよっか? ISについて」

「はい、ぜ―――」

 

 俺はすかさず割って入った。

 

「止めとけ織斑。この手の女は大体身体目的だ。特にお前は織斑千冬の弟って立場だけじゃなくて今では「男性IS操縦者」という立場もあるんだぞ。そいつにどんな後ろ盾があるかわからない以上、安易に関わることはお勧めしない」

「いやでも、いきなり現れて俺たちにオルコットとは違うちゃんとした優しい先輩なんだぞ!!」

「ああ、それはまずない。箒みたいな堅物女ならばまだ希望はあるかもしれないが、人間というのは大体何かを企んでいる生物なんだ。特に年上の場合は力や武器でどうにかできると思っているから色仕掛けをしてくるし、もし失敗しても男が悪いように仕向けることができるから有利な立場に立てるんだ」

「………まるで経験したような言い方だな」

「経験済みだ。まぁもっとも、俺を襲ってきた奴は両耳を飛ばされたことでパニックになり、いきなり家を飛び出して階段のところで足をくじいてそのまま転落。逃げる時に奇声を上げて逃げ去ったから注目を浴びたから緊急搬送されたけど病院で死んだって」

 

 一気に食堂が静まり返った。不謹慎だったかと思ったが、そうでもないなと思い返して食事を続ける。

 

「……つまり、それくらい警戒しろってことだ。姉に迷惑かけたくないだろ?」

「…………ま、まぁ。でも、もしかしたらこの人は良い人かも―――」

「それで付いて行って、なんやかんやで遺伝子情報が漏れて姉に尻拭いさせるんだ。第二回モンド・グロッソの時のように」

「!? 何でそれを知ってるんだよ?!」

「……さぁ」

 

 あの時の電撃引退はどういうことかと思ったら、適当に言っただけなのにまさかビンゴだったとは。

 

「つまりはそういうことだ。女を簡単に信用するという事は、それはそのまま織斑千冬に尻拭いをさせるという事になる。ま、そうしたいなら止めやしないけど」

「…………すみません。やっぱりいいです」

「ちょ、ちょっと、私の方がISに詳しい―――」

「だったら宇宙世紀かコズミック・イラ。あ、それともアフター・ウォーの方が良い? でも個人的に女ウケが良いと思うのは西暦か」

「な、何の話よ!?」

「アニメの話。あ、もしかして事動かすだけなら別に授業を受ける必要がなくても強くなれるって知らない? そんな簡単な事すら知らないってハッキリ言ってド素人じゃん」

 

 てっきり詳しいというから少し言ったらこれだよ。決してマイナーというわけではないんだから多少わかる人がいても良いくらいなのに。

 

「も、もう良いわよ!」

 

 そう言って去っていく女生徒。全く。あれくらい付いてこれない女に一体何の価値が―――

 

「―――さっきの話、詳しく」

「………また今度で」

 

 別の女が釣れたが、その女は別の意味で危険なのでしばらく逃げることにした。

 

 

 

 

 

 放課後。俺は剣道場に足を運んでいた。というか箒に連れてこられた。

 

「どういうことだ」

「いや、どういうことだって言われても……」

「どうしてここまで弱くなっている!?」

 

 どうやら箒は織斑が弱くなっていることが不服だそうだ。

 

「受験勉強をしていたから、かな?」

「……中学では何部に所属していたんだ」

「帰宅部。三年連続皆勤賞だ」

 

 へぇ。凄いな。こちとらまともに学校に行っていないと言うのに。

 

「鍛え直す! IS以前の問題だ! これから毎日、放課後三時間、私が稽古を付けてやる!!」

「え? それはちょっと長いような……っていうか、ISの事をだな」

「だから、それ以前の問題だと言っている!」

 

 膝の上の所に何か重みを感じつつ、それが楓のモノだと知ると俺は頭の部分を軽く撫でる。透明化していても流石にわかるし、専用の眼鏡があるからな。確認したらちゃんと楓だった。

 

「情けない。ISを使うならまだしも、剣道で男が女に負けるなど……悔しくはないのか、一夏!」

「そ、そりゃ……まぁ、格好悪いとは思うけど」

「格好? 格好を気にすることができる立場か! それとも、なんだ。やはりこうして女子に囲まれるのが楽しいのか?」

 

 俺はそっと楓を降ろして少し立ち上がる。まぁなんというか……慣れだな。

 

「楽しいわけあるか! 珍動物扱いじゃねえか! その上、女子と同居までさせられてるんだぞ! 何が悲しくてこんな―――」

「わ、私と暮らすのが不服だというのかッ!!」

 

 俺は一気に距離を詰めて振り下ろされる箒の竹刀を蹴り飛ばした。それなりに飛んだ竹刀は床に落ち、転がっていく。

 

「………は?」

 

 蹴り飛ばした右足を床に付けてからため息を吐く。

 

「……当然だろう? お前たち女はそれほどの事をしたんだ。以前までの事を平然としても「心が弱すぎるのが悪い」なんて理由で被害者を責めるのが世の常と化したんだからな。つうか男にとって今の女ってそれほどメリットないんだよ」

 

 そう言って織斑を立たせた。

 

「武……お前……」

「さて、箒も冷めたことだろうから率直に言うが、1時間だ。それ以上はまかりならない」

「貴様には関係ないだろう。それに今度の試合では敵だ!」

「別に良いけど、このままだと織斑は何もできずに敗北する」

「何を馬鹿なこと。貴様も初心者だろう」

「………あ、そう」

 

 それだけ言って俺はそのまま回れ右をして手を振る。

 

「ま、精々楽しみにしているさ。織斑がまともに戦えるようにな」

 

 仕方なく付き合ってやったが、どうやら手加減はいらないらしい。さて、本気出すか。

 

「……お兄ちゃん、どうしたの?」

「うん? 別になんでもない。ただどこぞの馬鹿にテメェの知識がどれだけ乏しいのかを教えてやろうと思ってな」

「……箒お姉ちゃん……」

 

 少し悲しそうな顔をする楓をひとしきり愛でた後、俺は手加減を一切止めて本気を出していくのだった。

 

 

 

 

 そんなこんなで月曜日の放課後。俺は第三アリーナのBピットでISスーツに着替えていた。隣には透明化した楓がいて、さっきから俺が触っている投影型ディスプレイを見ている。

 

「邪魔するぞ」

 

 そう言って入って来たのは織斑先生だった。

 

「アンタの弟はAピットじゃなかったか?」

「……お前の様子を見に来たんだ」

 

 気遣いにでも来たのだろうか? だとしたら余計なお世話なんだがな。

 

「そこにいるのは誰だ?」

「? 何の話だ?」

 

 惚けるが彼女にはこういう事は効かないことはなんとなくわかっていたので、楓にそこから離れるようにハンドサインを隠れて出す。

 

「? 気の、せいか?」

 

 楓はこういう回避能力は長けているからな。それに慣れているという事もあって織斑先生も誤魔化せたようだ。

 

「気のせいだろうよ。さっきからここには俺一人しかいないんだからな」

「………それはそれで寂しいな」

「別に気にしないさ。あんな発言ばかりしていれば誰だって寄ってこない」

「だったら謝ったらどうだ?」

「ああ、それは無理。それに謝るとか何の冗談だ。それなら最初からあんなことしないし、何よりあんな馬鹿げた女共に頭を下げるのは気に食わない」

 

 別に俺がすべて悪かった上での話ならまだ理解して仲良くしていたかもしれないがな。

 

「………変わったな、武。少なくとも昔はそうではなかったはずだ。それにお前は束に懐いていたはず。一体何があったんだ?」

「色々さ。それも人格が変わる程の経験、な」

「それはお前がレイプ魔と呼ばれる程の―――」

 

 俺は奴の首を掴んで壁に叩きつけた。戦士の性なのだろう。咄嗟に防御はしたらしいが、俺がそれ以上に早く動いたため満足にはできなかったらしい。

 

「発言には気を付けろ。俺はアンタの弟と違ってアンタを殺すのは躊躇いはない。他の豚共と同じく四肢を潰してやっても良いのだぞ?」

「………武……お前……」

 

 首を離して織斑千冬を解放する。同時に搬入口が開いてISが現れた。

 

「……お前用のISだ。どちらか使え」

「…………まさか本当に用意されるとはな」

「……いらないのか?」

「ああ。不要だ」

 

 そう言って俺は自分のISを展開した。全身のほとんどを追加装甲で覆われており、外からは顔を視認できなくなっている。

 

「………何故、持っている!? ……いや、お前のことだ。秘密裏に束に―――」

「もらったとでも。生憎俺は、コアも機体もあの姉からは直接貰っていないさ」

 

 脚部装甲をカタパルト射出機構に接続。すべての起動が確認され、上部に設置された文字が「ABORT」から「LAUNCH」に変わった。

 

「篠ノ之武、銃姫(ガンプリンセス)、出る!」

 

 機構が動き、俺たちを空へと打ち上げる。先にオルコットと織斑が出ていてこれで役者が揃ったことになる。それにしても、この人数はまさか学園中のほとんどが集まっているのか? クラス代表を決めるだけの戦いにこれだけの人員が現れるとは。どいつもこいつも馬鹿ばかりだな。

 

「その機体……まさか、専用機を持っていましたの!?」

「まぁな」

「ですがあなた、専用機を断ったと言ってたじゃないですか!?」

 

 ギャアギャア喚くオルコット。正直クソ五月蠅い。さて、どうやってこの場を答えようかと考えていると、オルコットの口から聞きたくなかった言葉が出てきた。

 

「ああ。そう言えばあなたはあの篠ノ之博士の弟なのですから、お姉さんに作ってもらったのですね」

「………アンタもか」

「武……?」

「羨ましいだろう? 俺はアンタたちみたいに政府の犬に成り下がって尻を振らなくてもISがもらえるんだよ!」

 

 侮辱には侮辱を返す。せっかく織斑千冬を殺すことを我慢したのにここでキレてしまっては意味がない。

 

「良いですわ! 素直に謝るのならば許してあげようと思いましたが、その必要はないですわね! ここで落としてあげますわ!!」

「なら見せてもらおうか! イギリスが開発したISの性能とやらを!」

『ノルマ達成ね!』

 

 相棒の気遣いはとりあえず無視して、俺たちのISバトルが始まった。

 

「って、俺なんか置いてきぼり!?」

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 その戦いの様子をVIP席に座る二人の男の姿があった。そのVIP席に一人の少女が入ってくる。

 

「やぁ楓」

「久しぶり、二人とも」

 

 楓は軽い足取りで二人に近づき、彼らの真ん中に用意されている少し高めの席に座る。

 

「織斑一夏、置いてきぼりだね」

「実質、二人だけで戦っているみたいって言っても、どう見ても武は遊んでいるけど」

「………というよりも、アレは追加装甲?」

「これからはビーム兵器が発展するだろうからって急遽追加したって言ってた」

 

 楓の口から聞いた言葉に二人の内一人がポツリと漏らした。

 

「……まるで愛する人を取り返す黒い騎士だな。愛人はロリ」

「なるほど。転移はデフォルトか」

「………確かお兄ちゃんは瞬間移動できないはずだよ」

 

 そんな会話で話を咲かせる三人。半分試合展開に興味がない様子なのだが、それもそのはずだろう。

 現に今はセシリア・オルコットの独壇場で、傍から見れば武の劣勢なのだから。


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