IS-Black Gunman-   作:reizen

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2020/10/23

内容一新しました。


第1話 篠ノ之家の長男

 ある日、姉がインフィニット・ストラトスを発表した。最初は相手にされなかったけど、白騎士事件で活躍したことによって世界から注目されることになった。そして、姉が失踪した。

 

「引っ越し?」

「………ああ」

 

 僕と箒を呼んだ両親から言われたのはそんな言葉だった。

 僕らには生家がある。いずれ僕ではなく箒が継ぐ土地と神社。ずっとそこから離れないと、離れるとしても大学に入学して一人暮らしを始める時ぐらいだと思っていた。

 だからそんな言葉は意外で、僕も箒も驚きを隠せなかった。

 

「こ、ここから離れるのですか!?」

 

 箒が心から信じられないという顔をする。そういえば、こいつって好きな人がいるんだっけ? 一度同じクラスになって睨まれたことがあるけど、男から見れば「本当にこいつで良いのか」という疑問があったけどね。

 

「………そうだ」

「何故ですか!? 何故そんなことを―――」

「わかり切ってるじゃん。どうせ姉さんが失踪したからでしょ」

 

 そう言うと3人共僕の方を見る。

 

「じゃあ行って来る」

「おい、どこに行くんだ―――」

「友だちに挨拶だよ。それくらいさせてよ」

 

 そう言ってすぐに外に出ようとしたら、黒い服を着た男の人に阻まれた。

 

「中に入ってください」

「何で。友達に挨拶するだけだよ」

「なりません。そうすればあなたに身の危険が迫ります」

 

 外に出させてくれないけど、それでも構わず押し通ろうとしたら無理矢理押された。

 それからずっと僕らに付きまとっていたのは、大人の事情という理不尽だけだった。

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、そこはベッドが上だった。隣では妹が俺の腕を枕にして眠っている。割といつもと変わらない日常だ。

 妹の容姿は俺の姉によく似ているが、その姉とは絶賛喧嘩中だが妹に対して嫌悪を抱いているかと問われれば「それはない」と否定するだろう。それくらいには可愛い。………あの姉の頭がもう少しマシだったら弟目線から見てもかなりレベルが高いと思うからマシな奴と今頃結婚しているだろうなぁと思っているが………あ、たぶん無理だ。

 時間もあるしまだ眠いしで俺はもう一度寝ようとすると、妹が目を覚まして起き上がる。それなりに高いベッドから降りる姿は少し怖かったが、思いのほかすんなりと降りていた。10歳だからそれなりにできるだろう。……まぁ、10歳で未だ兄離れができないのはかなり困るが……いや、こんなものか?

 まぁ、俺にはもう1人妹がいるが、個人的にはアレは妹と思いたくない。

 

「お兄ちゃん、起きて」

 

 まだ寝ていると思っている俺に乗っかかる妹の楓。その後に耳を甘噛みするので流石にそれは止めてもらいたい。全く。一体どこで甘噛みなんてものを覚えてしまったんだか。……心当たりが多すぎる。

 

「……起きてる」

「あ、おはよう」

「……おう」

 

 そうぶっきらぼうに返した俺はとりあえず今も上に乗っている妹を降ろして朝食の準備を始める。ここはIS学園の寮で本来ならばいてはいけないところなのだが、俺たちは特例で先に住まわせてもらっていた。

 朝食を済ませた後は軽く室内で運動し、昼ぐらいまで楓が見ているアニメを一緒に見ているとドアがノックされた。

 

『織斑だ』

「………ああ、時間か」

 

 心当たりがあった俺はそう言って立ち上がり、楓に行ってくるから大人しくするように言って俺は着替えて外に出ると、俺に対して睨むような目で見て来る女がいた。彼女は織斑(おりむら)千冬(ちふゆ)。俺の姉の唯一の友人で、今はIS学園というところの教員をしている。一部のM属性からは「絶世の美女」とか「いたぶられたい相手」とか言われているが、俺からしてみればただ暴力に訴えることしかできない哀れな女でしかない。

 

「待たせたな」

「今日から「教師」と「生徒」の間柄になるんだ。敬語を使え」

「アンタがまともに教師をしているならな」

 

 そう言うと気まずそうな顔をする織斑千冬。一体どんなことをしているのか気になるが言うつもりはないようだ。とはいえしばらくすれば判明するのでこちらも様子見で構えよう。

 

「にしても、まさかアンタみたいな女が教師とはな。弟は知っているのか?」

「知らないな」

「そんな最中でまさかISを動かすとは。つくづく織斑は問題を起こすことが好きらしい」

「………お前が言うか?」

「転校するまで俺がアレにどれだけ巻き込まれたと思う?」

 

 顔を逸らすその女は世界最強だが、苦労気質の姉だったりするが……付き合う相手は選べば多少は楽になるのではと思ったことは一度や二度ではない。弟の事はともかくあの姉に関わったことが運の尽きだと思えば良い。

 などと思って織斑千冬に着いて歩くと、気が付けば教室だった。電子看板には「1年1組」と表示されており、少しすると「1-1」と表示された。このIS学園は日本のみならず世界から生徒を受け入れるために日本の読み書きに慣れなれていない奴らに気を遣っているらしい。あの姉のせいで世界共通言語が英語から日本語に代わった為、今ではISを取り入れている国で日本語の教育は普通にあるらしい。日本人としては少し笑えてくる。

 

「私が先に入る。お前は呼ばれるまで待っていろ」

「……了解した」

 

 織斑千冬が中に入った後、早速何かが弾ける音が聞こえた。その後に「げぇ、関羽!?」と聞こえてきたのだが、その声が男だったのでため息を吐いた。何を言っているんだあの馬鹿は。

 しばらくすると今度は歓声が聞こえてくる。どうやらここは学園ではなくライブ会場だったらしい。外から聞いていると正気かと思わせる声が凄い。

 

『さて、SHRを終わらせる前に、諸君らに紹介する者がいる。入ってこい!』

 

 言われて俺は教室のドアを開けて中に入ると視線が一気に集まってきた。

 

「あ、あの、この人は……」

「二人目の男性IS操縦者だ。判明したのもつい数日前のため、余計な混乱を避けるために発表を遅くした。自己紹介をしろ」

「………え? する必要ある?」

「当然だ。それにさっきから周りが気になっているだろう?」

 

 注目されている事には気付いていたが、だからと言って自己紹介をするつもりはさらさらなかったのだが。……適当にするか。

 

「……篠ノ之(しののの)(たける)。男でISを動かしてしまったのでこの学園にやってきただけの一般人だ。別にアンタらと仲良くなる気はないので適当によろしくすれば良い。以上だ」

「………お前もか」

「事実だ。それで敵対しようが別に構わない」

 

 興味ないしどうでも良い。教室の中で唯一開いている席があったのでそっちに向かう間にヒソヒソと話をしていたが、さっきから俺の姓が気になっているらしい。

 

「さぁ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で身体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」

 

 どうやらまともに教師をするつもりはないらしい……というかあの女、教員資格持ってたっけ?

 

 

 

 

 

 一時限目が終わり、俺は机の上で本を読んでいるとこちらに近づいてくる奴がいた。

 

「久しぶりだな、武」

「……チッ」

「何で舌打ち?!」

「見たくもない顔が現れたらそりゃ誰だって舌打ちするだろう」

 

 そう返すと織斑は顔を引き攣らせる。

 

「何で俺にそんな辛辣なんだよ……」

「俺はお前が嫌いだから」

「酷くない!?」

「全然。むしろお前を殺したい男の方が圧倒的だと思うがな」

「いや、何でだよ!?」

 

 俺は単純に興味ないのだが、こいつがこれまで落としてきた女は数知れず。知り合いに聞いたところ大体の女は落ちたと言っても過言ではないらしい。女尊男卑のご時世で珍しいとしか言いようがない。まぁ、そいつは特殊な事情が事情過ぎて織斑を殺そうとは思わないらしいが。

 

「それだけ恨みを買っているってことだろ」

「……まぁ、確かに色々したけどさ……」

 

 おそらくだがその「色々」は喧嘩であって、おそらく恋愛要素はゼロだろう。全く。少しは自覚を持ってもらいたいものだ……持ったらそれはそれで面倒だったりするがな。

 

「それで、一体何の用だ?」

「久しぶりだしさ。それに……男1人だけど何かと辛くて……」

「………まぁ、そうだな」

 

 まさかこんなところに入れられるなんて誰も予想していなかったしな。特に成長するにつれて男女はその肉体的特徴の差から着替えも別になるからな。それに珍しいからかさっきから視線が凄い。まぁどっちも有名人の弟だし、知られればもっと酷くなるだろうが。

 

「……で、何の用だ?」

「え? って、(ほうき)か」

「………久しぶりだな、武。そして随分と変わったな」

「そりゃそうだろう。誰しも変わらない奴なんて……あ、一人いたな」

「何で俺を見るんだよ? 俺だって変わるんだぞ!」

「性格そのものは変わっていないだろう? 平和な証拠だ」

 

 ……あと、こいつの姉もたぶん変わっていないな。未だにダラけている人間だろうし。まぁ表向きは非の打ち所がない人間という扱いなのだが、織斑千冬の私生活はあまり良くないものだった。正しく性別は逆だが夫婦的な状況にあると言える。

 

「あー、そのだな」

「………別に俺は良いぞ」

「そうか!?」

「? 何の話だ?」

「織斑がこの窓から飛び降りるか箒が連れていくかの話」

 

 そう言うと織斑は顔を青く。

 

「そのブラックジョークも相変わらずだな……」

「お前が何かを行動する度に俺は苦労をさせられたんだ。そんな言葉も吐きたくなるさ」

 

 すると今度は箒までも顔を背ける。コイツも思うところがある証拠だ。

 

「では行くぞ一夏。時間がない」

「え? 俺はもっと武と―――」

「い、く、ぞ!」

 

 半ば強制的に箒に連れていかれる織斑の姿を見て内心「ザマァ」と思う。あの男には色々と苦労させられた。無駄に正義感を持ち、それが正しいと信じて疑わない。俺には理解できない行動だ。

 まぁそれでも、俺にとってはマシな感情になれる。どれも本気で言っているわけではないのだから。

 

『随分とセンチメンタルな雰囲気になっているわね、あなた』

 

 突然脳内に声が響く。実際はISの機能の一つである個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)が起動したのだが。

 

『次から次へと、何の用だ?』

『あら、主人が一人で黄昏ているから、気遣いができる超優秀AIちゃんが話してあげているのよ。感謝しなさい』

『……そういうことにしておいてやるよ』

『随分な態度ね。でもあなたにとっては退屈じゃないかしら、この学校?』

『否定はしないな。生徒会長を倒せば新たな生徒会長になれるらしいが、最悪IS学園が溶けてしまう。かといって織斑千冬が死ねば色々と面倒になるからな。しばらくは休暇のつもりで学園生活を楽しむとするさ』

 

 と言っても俺は諸事情で中学一年時の夏休み以降はまともに授業を受けていない。そんな俺がまともに授業に付いて行けるかわからないが、まぁなんとかなるだろう。

 

「―――ねぇねぇ」

 

 ウインドウを開こうとすると、右から誰かが話しかけてきた―――ああ、こいつか。

 

「何だ?」

「何でそんなつまらなさそうにしてるの~?」

「さぁな」

 

 と適当に返す。そうか。つまらなさそうにしていたのか、俺。

 

「もしかして、ゆうやんに会えなくてつまらないとか?」

「いや、誰だそれ」

「桂木悠夜、知ってるでしょ~。最近できた魔剣を持ってる人だよ~」

「……まぁな。作ったは良いが誰にも反応されなくて、唯一適合したから持ってる奴だろ?」

「そうそう」

 

 時代錯誤にもほどがあるがな。大体、現代科学で作った機械剣が人を選ぶってなんだろうな。

 

『そう言う意味では私たちと似たような存在ね』

『しかも破壊力が高いからな。なんとか倉持技研への襲撃は阻止できたが、あれは本当にマズかった』

 

 何せそいつが可愛がっている奴の専用機が、織斑の専用機に今まで凍結していたものを渡すのに人手がいるという事で開発を凍結されたのだ。俺も憤慨したが無言で立ち上がって殺気で空間を歪ませるようなバケモノが現地で暴れてみろ。文字通り何人かの人間が破壊される……もちろん、物理的な意味で。

 まぁ俺個人としては別にそれでも良いのだが、今度は俺たちの共通の友人である平坂(ひらさか)零司(れいじ)が「じゃあコアだけ頂いて最強のISを作らない?」とか言い出すから宥めるのに疲れた。もう休んでも良いよねパトラッシュ。

 

「ところで、今どうしているかわかる~?」

「さぁな。俺がこっちに入学するって話になって別れたからなぁ」

 

 というのは建前で、あくまでサプライズしたいから黙ってて欲しいらしいので誤魔化しておこう。

 

「そっかぁ」

 

 と言ってすごすごと去っていく奴はおそらく布仏(のほとけ)本音(ほんね)。確かにある意味危険人物だ。油断していれば浄化されるという話ではあながち間違いではないようだ。……何であれを『究極の女』と言っていたのかは流石にわからなかったが。

 しかしあの様子だと、悠夜に対して相当お熱なのだろう。まぁ一見人畜無害そうなアレがキレるとヤバい反面、身内にはとことん優しいからな。

 

『………なんだか、同情してしまうわね』

『昔かなり癒されたって言ってたからな。別の学校だが親戚関係もあるらしいから』

『しょっちゅう会っていたわけね。……まぁあの人間なら、自転車だろうが手段使わずに行きそうだけど』

『………そういえば昔、零司に色々作ってもらったって言ってたな』

 

 零司が作った奴だからさぞ色々と面白い思いをしただろう。なにせ奴は当時から天才少年だなんだと色々言われていたからな。事情があって今は悠夜と一緒にいる。

 

『ま、向こうはサプライズで会いたいって言ってたからな。そっちを尊重したい』

『あら。酷い男ね』

『俺は女の敵だからな。だったら敵として潰していってやるさ』

 

 なにせさっきから俺に向けられるのは敵意だけだからな。さっきの奴は例外中の例外だろう。

 

「よくものうのうと学園にいられるわね」

「女の敵が……」

 

 人の口に戸は立てられぬとはまさにこの事だろう。なにせ俺は色々と前科があるからな。中学一年の時に学校に行かなくなったのは引きこもりとかではなく、単純に暴れてたから。………まぁ、一体どういうことかはわからないが、何故か俺がレイプ魔として扱われているが、れっきとした童貞である。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 篠ノ之箒は兄である武と会話すると少し安心していた。なにせ彼女は三年間、次々と聞こえてくる武の話が信じらなかったからだ。特に武が見ず知らずの女を捕まえてはやり捨てているといったレイプ魔的な件が特に信じられなかったのである。

 

「久しぶり、箒」

「…ああ。そうだな」

 

 とはいえ今の彼女は一夏との再会を喜ぶだけだ。変わらない兄を見たのも安堵することだが、今は自分の思い人と話せることを嬉しく感じている。

 

 そう。箒はほとんど一般人と言っても過言ではない。両親と同じで、だ。

 彼女は知らない。自分の以外は既に―――一般人という枠を超えてしまっていることを。


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