いらない土地や建物、所有権放棄できない場合はどうしたらいい?
「売るに売れない先代からの山林や畑。なんとか要らない土地を手放せないの?」
「親の財産の中に使い道のない土地がある。できれば相続したくないけどどうしたらいい?」
「土地の使い道がなく、売ろうにも買い手が見つからない。毎年固定資産税を払い、自治体から草を刈れと言われ草刈り代金も払っている。」
そんな不動産に頭を抱えている方も、結構多いのではないでしょうか。
しかし、要らない土地や建物だからといって所有権を放棄することは認められていません。では、どうすればこの要らない不動産を処分できるのでしょうか?
ここでは、要らない土地を処分する方法について解説していきますね。
この記事のポイントは以下の通りです。
- 不要な土地は持っているだけで損!
- 不動産の所有権を放棄することは現行法上はできない!
- 国や地方自治体に土地を寄付するのは現実には難しい!
- 近い将来所有権の放棄が認められるようになるかも!?
では、内容を見ていきましょう。
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不要な土地は持っているだけで損!
要らない土地だとしても、「先祖代々引き継がれている土地なので、使わずにずっと置いておけばいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、代々引き継がれているというと聞こえが良い気もしますが、実際には持っているだけで損をしてしまうため処分をしたい、というケースが多いのです。
持っているだけで損をしてしまうとは、一体どういうことなのでしょうか。原因としては、主に以下の3つが考えられます。
- ①固定資産税の負担
- ②管理の手間
- ③損害賠償リスク
まず、一番の理由が固定資産税の負担ですね。
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課税されます(※)。田舎の山林などであれば毎年の固定資産税自体は安いかもしれないですが、それが何十年も続くと馬鹿になりません。
※:固定資産の価格が免税点未満であれば、固定資産税は課税されません。免税点は、土地が30万円、家屋が20万円(地方税法第351条)。
次に、②管理の手間の問題です。
誰も土地を使わなかったら雑草が生い茂って近所迷惑になりますし、ゴミを不法投棄されたりすることもあるので、定期的に管理が必要となります。その管理にかかる時間や費用が結構かさむのです。
住んでいるところから離れている場所に土地がある場合は管理するのも一苦労ですよね・・・。
最後に、③損害賠償リスクですね。
がけ地にある土地でがけ崩れが起きたり、古い建物が倒壊して歩行者を怪我させたりすると、損害賠償責任を負うことになります。
使っていない不要な土地とはいえ、そこから生じた損害に対する責任は所有者が負わないといけません(民法第717条「土地工作物責任」)。
これらの理由から、不要な土地を持っていても良いことは無く、すぐにでも手放したいと考えている方が多いのです。
不要な土地でも所有権の放棄は出来ない!
土地が自分のものであるということは「所有権」が自分にあるということです(民法第206条)。では、不要な土地の所有権を自ら放棄することは出来るのでしょうか?
この点、現在の民法には所有権の放棄について規定がなく、所有権放棄に関する確立した最高裁の判例もありません。従って、所有権の放棄は出来ないものとして取り扱われています。
民法第239条2項で「所有者のない不動産は国庫に帰属する」と規定されていることから、要らない不動産の所有権を放棄すれば国が引き取ってくれる、と考えてしまいがちですが、残念ながら「所有者のない=所有権を放棄できる」ということにはなりません。
つまり、先祖から引き継いだ土地を”不要だからと言って「所有権を放棄します!」と勝手に手放すことはできない”のです。
不要な土地の処分方法
不要な土地の所有権放棄が出来ないとなれば、どうすれば土地を手放すことができるのでしょうか。
以下で、不要な土地の処分方法について見ていきましょう。
売却する
これが一番オーソドックスな処分方法ですね。買い手を探して売れば良いのです。
しかし、そもそも土地の所有者が使い道がないと考えているので、通常は買い手はなかなか見つからないでしょう。
山林等の場合、近所で大規模な開発計画が出てこない限り売却するのは難しいと考えられます。
しかし、もちろん可能税はゼロではありません。
以下のような対策をとるなどして、売るための努力は惜しまないようにしましょう。
- 土地の所在地近辺に詳しい不動産屋さんに相談する
- 古い建物が建っているのであれば取壊して更地にしておく
- 売り出し価格を安くする
- 土地が大き過ぎる場合は、分筆登記をして小分けにしておく
国や自治体に寄付をする
国や地方自治体は、金銭に限らず不動産など幅広く財産の寄付を受け付けています。
そこで、「要らない土地は国や自治体に寄付してしまえ!」と考える方もいるのではないでしょうか。
確かに、国や自治体に対して財産(不動産)を寄付することで、以下のような税制優遇を受けることもできるので、是非活用したいところです。
- 相続税・・・寄付した財産が相続税の課税対象外になる(租税特別措置法第70条)
- 所得税・・・譲渡所得が課税されない(租税特別措置法第40条)
しかし、これは実際にはなかなか実現が難しいのです。
というのも、自治体としても使い道のない土地を寄付されても困りますよね。
自治体にとって大切な税収(固定資産税)が減りますし、維持管理にお金もかかりますからね・・・。使い道のない土地は「ただでも要らない」という状況なのです。
東京財団政策研究所が2016年に自治体に対して実施したアンケートによると、土地の寄付の申し出はあるものの、「実際に寄付を受けた実績は0件」という自治体が最も多い結果となりました。
(画像参照元:国土交通省「有休不動産の現状と課題」)
土地の寄付を受け取るケースとしては、自治体として「公的利用が見込める場合(主に道路用地活用」が大多数であり、他には「自治体が既に所有している土地に隣接しており、取得した方が何かと有利」といったケースですね。
逆に、以下のようなケースでは受け取らないようです。
- 公的利用が見込めない
- 個人の都合による寄付(固定資産税の負担がきつい等)
- 権利関係に問題がある
- 維持管理の負担が大きい
個人からの寄付の場合は、大半が個人の都合による寄付でしょう。
役所のホームページ等で「寄付を受け付けます」と書いていても、実際には受け取ってもらえる可能性はかなり低いと考えておいた方が良いですね。
相続放棄をする~不要な土地だけを放棄するのはNG~
被相続人(=亡くなった人)に借金が多くあったような場合、相続人は相続発生日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをすることで相続放棄が可能です(民法第938条)。
参考:相続放棄の期限は3ヶ月。延長方法と期限が過ぎてしまった時の対処法
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとみなされる(民法第939条)ので、借金などのマイナスの財産を引き継がなくて済みます。
しかも、不動産についても放棄できるので、不要な土地がある場合は相続放棄によって手放すことが出来ますよ。相続放棄をすれば固定資産税の納付からも解放されます。
ただし、不要な土地だけを相続放棄するといったことは認められておらず、遺産の一切合切を諦めなければなりません。
仮に相続財産として預貯金5千万円と不要な不動産が1つあった場合、不動産だけでなく預貯金5千万円についても諦めることになります。
また、相続放棄をして相続人がいなくなった場合、相続財産管理人は家庭裁判所で選任してもらうことになるのですが、これには100万円程度の予納金が必要です。
従って、預貯金等を含む全ての財産を放棄しても問題がなく、さらに予納金として100万円程度負担してでも不動産を手放したい、というくらいの想いがないと、なかなか厳しいかもしれないですね。
相続税の納付時に物納する
「相続税の申告が必要だけど、現預金が少なくて相続税が納付できない!」
そんな場合、物納(ぶつのう)といって(相続税法第41条)、相続財産の中にある不動産や株などを相続税の支払いに充てる事ができます。
物納することができる財産は優先順位が決められていますが、中でも不動産は第1順位となっており、優先順位が高いです。
つまり、相続税の申告時に不要な不動産を物納することで、処分に困っていた土地や建物を手放すことが可能ということですね。
相続税の支払いは物納でも可能!物納が認められる要件と節税策としての利用方法
ただし、無条件に物納が認められる訳ではありません。
まず第一に、延納制度(分割払い)を使っても相続税の支払いが困難であることが必要です。税務署としては、お金があるのであれば当然お金で納付してほしいですからね。
また、境界が明らかでない場合や、権利の帰属について争いがある場合など、物納不適格財産や物納劣後財産に該当すると物納できないケースも出来てきます。
以前と比べると物納が認められる難易度は非常に高くなっていますので、選択肢の一つとしてはありうるかも・・・くらいの認識でいた方が良いでしょう。
【朗報】民法改正により所有権放棄が可能になる!?土地放棄制度が実現するか?
使い道のない不要な土地を持っている人は、次第にその土地を管理しなくなり、挙句の果てには相続が発生しても相続登記もしない、というケースに発展します。
その結果、最近問題になっているのが所有者不明土地です。
登記簿をみても誰のものか分からず、仮に誰のものか判明しても所有者に連絡がつかないケースが増えてきています。
所有者を探すのに莫大な時間や費用がかかりますし、探しても所有者が分からなかった場合、その土地を利用するための手続きに時間がかかったり利用出来ないといった問題が多発しているのです。
そこで、政府としては所有者不明土地の発生を抑制する方法の1つとして所有権放棄ができるように進めているようです(「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究報告書」)。
今の所、2020年1月から所有権放棄に関する意見の公募を行い、2020年9月に要綱案がまとめられて法改正に進んでいく予定となっています。
ただし、無条件に土地所有権の放棄ができるようになると、土地の所有に伴って発生する義務や責任(土地の管理義務や固定資産税の納税義務)も放棄できることになるので、そう簡単に認めるわけにはいきません。
従って、仮に認めるとしても例えば以下のような要件を設定される可能性が高いでしょうね。
- 土地を手放す際に適当と認められる管理費用を負担する
- 土地の権利に関する争いがない
- 競売等をしても買い手が見つからない
- 自然災害等により管理費用が非常に高くかかってしまう
- 所有権を放棄した際に権利の帰属先となる機関の同意を得る
最後に
持っているだけで損をしてしまう不要な不動産。手放す方法をいくつか紹介してきました。
売却や相続放棄などは思い通りに出来ないこともあるでしょうし、寄付については実際のところ土地再開発などがない限りなかなか受け入れてもらうことも出来ないでしょう。
ただし、所有権の放棄がそう遠くない将来に認められるようになるかもしれないので、今後の民法改正には注目しておきたいところですね。