インフル予防接種予約中止の大混乱!行き渡らないワクチン

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 10月1日から重症化リスクの高い65歳以上の人たちから始まったインフルエンザの予防接種。26日からは医療従事者、妊婦、児童らを優先しつつ、一般の人への接種も始まったが、街のクリニックでは前代未聞の予約困難な状況が続いている。

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 インフルエンザの予防接種を望んでも、すでにどこもかしこも予約待ちか、入荷待ちの状況だ。

 今年は新型コロナウイルスとインフルの同時流行への懸念も高く、ワクチン接種を希望する人は多い。例年、インフルのピークは1月末から3月上旬で、とくに2回接種(2回目は2週間以上あける)が推奨される13歳未満の児童は早めに接種を終えておきたいところ。

■東京都の65歳以上無料も不足の一因

 しかし、「そろそろ病院の予約を……」と思っても、断られるケースが続出している。とくに今年に限り65歳以上の全員の接種費用を全額助成する東京都内は顕著だ。

「予約が集中したため、現在は再診の方のみの受け付けとなっています。初診の方は11月以降に改めて予約を受け付けます」(江東区にある「南砂町おだやかクリニック」)

 この医院ではグループで6000~7000人分程度のワクチンを確保。HP上では「十分に予約は取れますので慌てずに予約のお電話をお願いいたします」と説明していたが、すでにその余裕はないようだ。同じように「銀座並木通りクリニック」(中央区)、「浅草寺病院」(台東区)、「ながふさ共立診療所」(八王子市)も予約をいったん中止。杉並区の「曙クリニック」のようにワクチン在庫が切れ、高齢者への接種を中止したほか、64歳以下への接種を今年は行わないとしている医院もある。こういった状況は全国どこの病院や医院でも見られる。

 高齢者への費用助成や優先接種については「65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者の34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する」(厚労省)というデータもあり、コロナも含めた今冬の医療機関や介護従事者の混乱を避ける意味でも理解できる。

 ただ、この助成がワクチン不足を助長してしまったのも事実だ。

 厚労省は過去5年で最大量となる約6300万人分(成人ベース)のワクチンを供給する予定だが、日本の65歳以上人口は3617万人。その全ての人が接種するわけではないが、残りはおよそ2700万人分しかない。子供の接種を2回から1回に減らしたとしても、成人に関して3人に1人、4人に1人しか接種できない計算になる。田村厚労相もはっきりと「国民全員に供給できない」と語っている。

 仮に38度以上の高熱が出てしまったら、個人ではインフルか、コロナかの判別はつきにくい。より危険性の高いコロナを疑ってまずは保健所へ連絡すべきだが、インフルだった場合に医療機関の受診を躊躇したり、あるいは受診そのものを拒否される事態もあり得る。

 そのためには備えあれば憂いなし。より一層の3密回避のほか、近隣の町まで範囲を広めてワクチン接種ができる医院を探したい。また、平均3529円(2018年度)の接種費用については、東京都以外も神奈川県、埼玉県、大阪府、福岡県などが65歳以上の全額を助成している。そのほか、子供への助成を行っている自治体もあり、東京23区では12区が実施中だ。

 一方、会社員は健康保険組合から補助が出るケースもある。

「東京電力健保」「資生堂健保」「三菱重工健保」などは全額免除。本人だけでなく被扶養者も適用されるところが多く、家族の人数によっては2万円以上もお得になるケースも出てくる。

 大企業は日時を決めて社員の集団接種を行っているところもあり、比較的、ワクチン接種は容易といえる。

フリーランスに無料で場所と接種を提供

 残念ながら、フリーランスや非正規社員への補助は少ない。ところが、IT人材派遣の「ギークス」(渋谷区)は、企業と雇用関係のないフリーランスを対象に場所を提供し、「無料」で接種を行っている。

「当社と契約するITフリーランスの方に限りますが、10月初旬に約70人の方々が弊社で予防接種を受けられました。フリーランスの多くはコロナの雇用不安で収入が大きく減少していますし、予防接種を受けるための勤務時間中の外出も、正社員とは違って、個人で対応しないといけません」(ギークス広報担当者)

 いつでも非正規は不遇だが、こういった例もあるので、なるべく早めにワクチン接種を終えておきたい。

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