欧州の1日の新型ウイルス死者数、前週より40%増加=WHO
世界保健機関(WHO)のマーガレット・ハリス報道官は、27日放送のBBCラジオ4の番組「World at One」に出演し、欧州で新型コロナウイルスの1日あたりの死者数が、前の週より40%近く増加していると明らかにした。
WHO報道官のハリス博士は、「欧州地域全体で、感染者数と死者数の猛烈な驚くべき増加が見られる」と述べた。
ハリス氏によると、1日あたりの新規感染者数は前の週と比べて3分の1増加。その大半をフランス、スペイン、イギリス、オランダ、ロシアの5カ国が占めているという。
また、1日あたりの死者数は「40%近く」増加したと話した。
「現在、病院の集中治療室が非常に症状の重い人たちで埋まりつつあることを懸念している」と、ハリス氏は警告した。
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ロシアでは27日に新たに320人の死亡が確認され、累計死者数は2万6589人となった。アメリカ、インド、ブラジルに続いて世界で4番目に多い。新規感染者も27日だけで1万6550人が確認されており、当局は28日から、混雑した場所でのマスク着用を義務付ける。
イタリアでも死者数が急増しており、27日までの過去24時間で221人が死亡した。新規感染者数は過去24時間で約2万2000人に達したが、当局はウイルス検査の増加も反映されているとした。26日夜には新型ウイルス対策の新たな規制に対する抗議行動が複数の市や町で発生した。
オーストリアでは27日に累計死者数が1000人を超えた。
ベルギー東部リエージュ市の医師らは、新型ウイルスに感染しても勤務を続けるよう要請されている。ベルギーの医療従事者団体の代表はBBCに、患者に感染させるリスクは認識しているが、数日内に医療制度が崩壊するのを防ぐためには仕方ないと話した。
WHOの主張
ハリス氏は27日放送のBBCラジオで、「病院の受け入れ態勢は改善されているものの、一部の国では病床が急速に埋まりつつある」と警告した。
また、欧州の多くの国で導入された新たな制限措置の有効性については、効果が表れるまで「タイムラグ」があるため、分析できるのは2週間後になるだろうとした。
「感染者数は減少するだろうが、一夜で確認できるものではない」
感染の第1波よりも第2波の方が状況が悪化する可能性があるか問われると、ハリス氏は第1波とは「異なる感染のピークを目の当たりにすることになる」と述べた。
「病院は何が起きているのかということを、はるかによく理解している。これはありがたいことだが、裏を返せば、彼らは非常に長い時間、信じられないほど懸命に働いているということだ。そして彼らは厳しい状況に直面することになることも分かっている」
「もう1つある意味いいニュースなのは、我々が確認している感染者の多くが重症化しないとされるグループ、若年層に当てはまることだ。ただ、重症化しないという保証はない」
「これらを踏まえると、4月のような死者数の恐ろしい増加には直面しないかもしれない」と、ハリス氏は述べた。
ロシアの新規制とは
ロシアの連邦消費者権利保護・福利監督庁は28日から、公共交通機関やタクシー、駐車場、エレベーターを含む、混雑が予想される場所でのマスク着用を義務付ける。地方自治体がこの新規制の実施を担うこととなる。
同国は新型ウイルスの最初のアウトブレイク(大流行)が始まった今春にも同様の措置を講じたが、感染者数の減少を受けて7月に解除していた。
連邦消費者権利保護・福利監督庁のアンナ・ポポワ長官はマスク着用に加えて、バーやレストラン、その他の公共施設の夜間の営業禁止を推奨した。また、公共交通機関やタクシー、公共スペースの消毒活動も推奨されている。
欧州各国の状況
フランス政府は、すでにパリや複数の都市に導入している夜間外出禁止令の延長を含む、より厳格な新型ウイルス対策について議論している。27日には過去24時間で3万3417人の感染と523人の死亡が確認されたと発表した。1日あたりの死者数としては4月以降で最多。
イタリア北部トリノでは26日夜、新規制をめぐり抗議していたデモ参加者に、警察が催涙ガスを発射した。ミラノでも警察と抗議者の衝突が報告された。同国では23日から、レストランやバー、ジム、映画館の営業が午後6時までに制限されている。
イギリスのインペリアル・コレッジ・ロンドンの研究者たちは、新型ウイルスに対する免疫は、感染からわずか数カ月間しかもたない可能性があるとしている。抗体が確認された人の数が、6月~9月の間に約4分の1減少したという。減少幅が一番大きかったのは、65歳以上だったとしている。
ベルギーでは入院患者数が88%増加し、集中治療室の病床の半数がすでに埋まっていると当局が警告している。10の病院は医療従事者に対し、ウイルス検査で陽性となっても、無症状の場合には勤務を続けるよう要請している。
スロヴァキアは今週末から、全人口(約545万人)を対象としたウイルス検査を開始する予定。より厳しい感染防止策の導入を回避する狙いがある。イゴール・マトヴィッチ首相は数万人の感染者を特定し、家族と一緒に10日間隔離させたい考え。「全国的なウイルス検査か完全なロックダウンか、選択肢は2つしかない」としている。
チェコでは27日、1週間の夜間外出禁止令を導入した。通勤や治療などの場合を除き、夜9時から翌朝4時59分まで外出は認められない。
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