襲われて
産廃の闇,自治の光
テロに屈せず住民投票を実施し,産廃処分場計画を阻んだ岐阜県御嵩町の前町長が,その生々しい体験を語る.
緑の谷を産業廃棄物で埋め尽くし,「東洋一」の処分場に──.1990年代に岐阜県御嵩(みたけ)町で浮上した巨大計画は,慎重な町長への襲撃事件と住民投票での圧倒的反対で全国の注目を集めた.金力・権力・暴力と対決したその前町長が,利権に群がる魑魅魍魎の姿と産廃・環境問題の考え方を,生々しい体験とともに語る.
■著者からのメッセージ
空気が読めなかった田舎町長の物語
最近の自民党内紛劇を見ていても,政治家の皆さんは空気を読むのがほんとうにうまいな,と感心する.「反麻生」で激しく抵抗していた面々も,あたり一面の空気を読んで,利あらずと見るや,たちまち沈黙してしまった.見事なまでの「読気術」である.
政治家のはしくれの田舎町長だった私も,そうした「読気術」を身に付けていれば,襲われて死にそこなうこともなかっただろう.
カネの力で強引に産廃処分場建設を進める産廃業者,それを後押しする許可権者の県,さらには利権に群がる暴力組織.しかも産廃処分場計画は発進直前だった.空気は誰の目にも見えていた.
だが,500万人の水道水源である木曽川,そのほとりの「東洋一」の巨大産廃処分場計画には,あまりにも多くの理不尽があり過ぎた.もし政治家らしく空気を読んで,理不尽は見て見ぬふりして沈黙していれば,いまごろ木曽川畔の谷は産廃の山で埋め尽くされていただろう.
空気を読んで沈黙することは,ときに共謀や加担につながる.それは私にはできなかった.
■編集部からのメッセージ
新刊の本に巻かれる「帯」.その限られたスペースには,どれも編集者の熱い思いがみなぎっています.その本ならではの価値や魅力を簡潔に表現しようと,精一杯の工夫をこらしているのです.
さて,この本の場合――.実は当初,こんな書き出しが頭に浮かびました.
「劇画より劇的! TVドラマよりドラマチック!」
そう,「プロローグ」の冒頭から,著者はいきなり二人組の暴漢に棒でメッタ打ちされますし,その後,自宅の盗聴事件が解明される過程で,産廃業者,右翼,暴力団関係者らが次々に登場,その暗躍ぶりは,まるで犯罪小説を読んでいるような錯覚に陥るほど.「劇的」「ドラマチック」は,決して誇張ではないのです.
もっとも,この案をじっと眺めているうちに,ヘタな語呂合わせを重ねているようにも見えてきて,結局,捨てました.そして,代わりに冒頭には,
「盗聴,襲撃,そして相次ぐ怪事件…」
と置いたのです.
それでも,正直にいえば,このノンフィクションを原作として,劇画やTVドラマ,あるいは映画が生まれないだろうか,という夢想を,私は今なお捨てきれずにいます.そして,もしも映像化されるとしたら,放送局を定年退職して町長に就任した主人公にふさわしい俳優は誰だろうか,またその若い再婚相手を演じる女優は誰がいいだろうか,などと勝手な妄想を楽しんでもいるのです.
■著者からのメッセージ
空気が読めなかった田舎町長の物語
最近の自民党内紛劇を見ていても,政治家の皆さんは空気を読むのがほんとうにうまいな,と感心する.「反麻生」で激しく抵抗していた面々も,あたり一面の空気を読んで,利あらずと見るや,たちまち沈黙してしまった.見事なまでの「読気術」である.
政治家のはしくれの田舎町長だった私も,そうした「読気術」を身に付けていれば,襲われて死にそこなうこともなかっただろう.
カネの力で強引に産廃処分場建設を進める産廃業者,それを後押しする許可権者の県,さらには利権に群がる暴力組織.しかも産廃処分場計画は発進直前だった.空気は誰の目にも見えていた.
だが,500万人の水道水源である木曽川,そのほとりの「東洋一」の巨大産廃処分場計画には,あまりにも多くの理不尽があり過ぎた.もし政治家らしく空気を読んで,理不尽は見て見ぬふりして沈黙していれば,いまごろ木曽川畔の谷は産廃の山で埋め尽くされていただろう.
空気を読んで沈黙することは,ときに共謀や加担につながる.それは私にはできなかった.
■編集部からのメッセージ
新刊の本に巻かれる「帯」.その限られたスペースには,どれも編集者の熱い思いがみなぎっています.その本ならではの価値や魅力を簡潔に表現しようと,精一杯の工夫をこらしているのです.
さて,この本の場合――.実は当初,こんな書き出しが頭に浮かびました.
「劇画より劇的! TVドラマよりドラマチック!」
そう,「プロローグ」の冒頭から,著者はいきなり二人組の暴漢に棒でメッタ打ちされますし,その後,自宅の盗聴事件が解明される過程で,産廃業者,右翼,暴力団関係者らが次々に登場,その暗躍ぶりは,まるで犯罪小説を読んでいるような錯覚に陥るほど.「劇的」「ドラマチック」は,決して誇張ではないのです.
もっとも,この案をじっと眺めているうちに,ヘタな語呂合わせを重ねているようにも見えてきて,結局,捨てました.そして,代わりに冒頭には,
「盗聴,襲撃,そして相次ぐ怪事件…」
と置いたのです.
それでも,正直にいえば,このノンフィクションを原作として,劇画やTVドラマ,あるいは映画が生まれないだろうか,という夢想を,私は今なお捨てきれずにいます.そして,もしも映像化されるとしたら,放送局を定年退職して町長に就任した主人公にふさわしい俳優は誰だろうか,またその若い再婚相手を演じる女優は誰がいいだろうか,などと勝手な妄想を楽しんでもいるのです.
プロローグ
第一章 舞い降りた異端の町長
第二章 魅入られた木曽川の谷
第三章 町民の知らぬところで
第四章 処分場計画との対決
第五章 不条理への疑問と懸念
第六章 甘い蜜に群がる魑魅魍魎たち
第七章 嵐のなかの住民
第八章 「カネより命」の選択
第九章 産廃の呪縛を解く
エピローグ
あとがき
柳川 喜郎(ヤナガワ ヨシロウ)
1933年,東京・神田に生まれる.名古屋大学法学部卒.55年,NHKに入り,東京社会部,ジャカルタ支局,ニューデリー支局,解説委員などを経て,94年,退職.95年4月,岐阜県御嵩町の町長選に乞われて出馬,当選.96年10月,暴漢に襲われ,重傷.97年6月,全国で初めて産廃処分場計画への賛否を問う住民投票実施,反対派圧勝.2007年4月,町長を退任.著書に『南極』(日本放送出版協会),『桜島噴火記』(同),『<政治参加>する7つの方法』(共著,講談社現代新書)など.
書評情報
毎日新聞(朝刊) 2009年12月13日
読売新聞(夕刊) 2009年11月16日
ジャーナリスト 2009年10月25日号
朝日新聞(朝刊) 2009年10月11日
ガバナンス 2009年10月号
選択 2009年10月号
週刊東洋経済 2009年9月12日号
日刊ゲンダイ 2009年9月5日
選択 2009年9月号
神奈川新聞 2009年8月30日
世界日報 2009年8月30日
四国新聞 2009年8月15日
沖縄タイムス 2009年8月15日
朝日新聞(夕刊)〔名古屋〕 2009年7月25日
読売新聞(朝刊)〔中部〕 2009年7月23日
東京新聞(朝刊) 2009年7月23日
毎日新聞(朝刊) 2009年7月11日
読売新聞(夕刊) 2009年11月16日
ジャーナリスト 2009年10月25日号
朝日新聞(朝刊) 2009年10月11日
ガバナンス 2009年10月号
選択 2009年10月号
週刊東洋経済 2009年9月12日号
日刊ゲンダイ 2009年9月5日
選択 2009年9月号
神奈川新聞 2009年8月30日
世界日報 2009年8月30日
四国新聞 2009年8月15日
沖縄タイムス 2009年8月15日
朝日新聞(夕刊)〔名古屋〕 2009年7月25日
読売新聞(朝刊)〔中部〕 2009年7月23日
東京新聞(朝刊) 2009年7月23日
毎日新聞(朝刊) 2009年7月11日