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【書籍化】虐待されていた商家の令嬢は聖女の力を手に入れ、無自覚に容赦なく逆襲する【本編完結】 作者:てんてんどんどん
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1章 37話 王都カルディアナ

 大きい!!大きい!!


 カルディアナの聖樹大きい!!


 あれから。私たちはまた前住んでいた都市に戻った。

 前と違って私が元気だったから、街にはすぐ戻れたんだよ。

 今度はシリルもリベルも聖樹の精霊さんも一緒。


 私とリベルと聖樹さんは馬車の窓からお外を見てる。

 馬車も前よりも豪華になって窓がついてるの。

 前は布製幌馬車だった馬車も木製箱馬車で、これならほかの人に見られることもないんだって。

 お外からは見えない特製の窓だから私たちは窓から街を眺めてた。


 街はやっぱり人がいっぱい歩いてる。

 遠くで見るだけなら楽しいし怖くない。

 私と同じくらいの女の子と叔母さんみたいな女の人はちょっと怖いけれど。

 ダイをぎゅーっとすればダイが守ってくれると言ってくれる気がする。


 ファルネ様もシリルもリベルも聖樹の樹の精霊さんもいるから今の私は平気だよ。


 街の中は聖女の就任式があるとかでものすごく慌ただしいみたい。

 鎧を着込んだ人たちがうろうろしている。


『はやいとこカルディアナに会いに行った方がよさそうだね。

 この分だと行くのも大変になる』


 街の様子を見たシリルが呟いた。


「……はい。そうですね」


 ファルネ様もそれに頷く。


 聖樹様見に行くの?


「はい。そうですよ。

 これから皆でカルディアナの聖樹様に挨拶に行きましょう。

 リーゼを助けてくれたのもカルディアナの聖樹様ですから」


 そうだ!ラムデムに襲われた時に聞こえた声はカルディアナの聖樹様。

 ダイ達のおかーさんでもある。

 ちゃんと「ありがとう」って言わないと!!

 ファルネ様と声の練習をしたから今ではちゃんと言えるんだ!


 ファルネ様にねっ!て微笑めば……ファルネ様がにっこり笑う。


 でも……なんだかいつもより笑顔がぎこちないような気がするのは気のせいだよね?



 ■□■


 ガラガラガラ。


 聖樹様の近くの公園に私たちは到着した。

 ここはまだ平民が入っていい地区なんだって。

 これ以上進むと警備が厳しいとファルネ様達が言っていた。


 リベル達と馬車の中から見上げれば聖樹様は物凄い大きい。

 やっぱり守り神だからかな。

 人の居ないところで馬車から降りて私たちが聖樹様を見上げていればファルネ様にぎゅっと抱きしめられた。


「ファルネさま?」


「リーゼ。よく聞いてください。

 これからあなたはカルディアナ様に治療してもらいます」


 治療?

 なんだろう?もう身体の傷はファルネ様が薬をぬりぬりしてくれたから治ったよ?

 どこも痛くないよ?


「人が怖いのも治りますよ」


 治るの!治るの!嬉しい嬉しい。

 それなら神殿の人達に会っても大丈夫になるね!


「はい。そうですね」


『いいかい。カルディアナに身を任せるんだよ。リーゼ。

 治療が終わればあんたは人間社会でやっていけるようになる』


 シリルに言われて私はうんうん頷いた。

 人間が怖くなくなればファルネ様と一緒にお買い物にいける。

 リベル達もシリルもつれて一緒に街の中をお買い物するんだ!



――さぁおいで。愛しい子よ――


 前、冒険者に襲われた時。

 助けてくれた声が聞こえた。

 そっかこのお声はカルディアナの聖樹様だったんだ。


 ありがとう。ありがとう。聖樹様。

 私とファルネ様を助けてくれて。


 こんなに元気になったよ。

 ダイもレムもコロンも皆元気!


 私が言えば聖樹様の温かい気持ちが流れ込んでくる。


――愛しい子よ。さぁ、記憶を取り除いてあげましょう――


 え?記憶?


 何の話?


 取り除くって?


――貴方の今までの過去の記憶をとりのぞきます――


 何の話?そんなの聞いてないよ?

 リーゼはいまとっても幸せだよ?

 私が慌てて後ろを振り向けば――ファルネ様もシリルもリベルも悲しそうな顔をしていた。


 ………。

 待って待って待って!

 記憶ってみんなの記憶も消えちゃうの!?


 私が慌てて逃げようとすれば光に包まれてしまう。


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。


 人間嫌いでいい!!ファルネ様達と一緒にいる!!

 記憶を消さないで!!


 リーゼの大事な大事なファルネ様との思い出を消さないで!!


 一緒にお花畑で遊んで。

 一緒にお魚釣りをして。 

 一緒にお星様にお願い事をして。


 ファルネ様と一緒にいられる時間が増えたから。

 いっぱいいっぱい思い出も増えたんだよ?


 なんで。なんで。なんで。


 大事な思い出を消さないといけないの?


 助けて助けて。ファルネ様。


 ドンドンと光の壁を叩くけれど出られない。


 ヤダよヤダよ。お願い助けて!!

 大好きなファルネ様との思い出をリーゼから奪わないで!!!

 一生懸命どんどん叩くけれど、光は強くなってファルネ様達が見えなくなる。


 嫌だ。嫌だ。嫌だ!!!!

 助けてファルネ様っ!!!!!!


――さぁ、一緒に――


 声とともに。私は意識を失った。


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☆虐待されていた商家の令嬢は聖女の力を手に入れ、無自覚に容赦なく逆襲する☆
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イラスト

☆悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います☆
☆コミカライズ化決定!☆
☆2020年秋~冬にかけて開始予定☆
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