1章 31話 楽しい日々
コトコトコト。
ファルネ様のお家にいた時、聞いていたシチューを煮込む音。
今日はね、「リーゼはシチューが好きだったから作りましょうね」ってファルネ様が料理を作ってくれることになったの。
今は、エルディアの森の神殿の一部を借りてそこで暮らしているんだ。
中庭にあるお外でご飯を作る場所でファルネ様が料理をしていてくれてる。
リベルが興味深そうにファルネ様がやる事をじーっと見ているの。
私も一緒にじーっと見ているんだよ。
お外だから樹の精霊さんたちも日光浴をしながらじーっと見ているんだ。
ファルネ様のお家にいた時は、身体が弱くて座ってないといけなかったから料理をしているのをじっくり見るのははじめて。
トントントンって綺麗にお野菜をファルネ様が切っていく。
『神官!リベルもそれやりたい!それやりたい!』
包丁を見ていたリベルがそういってお手々をばたばたさせるの。
リベルはお料理好きだもんね。
私もやりたいなぁ。
『あんたの手じゃもてないだろう。それにあんたの場合爪でやったほうがはやいじゃないか』
シリルに言われてリベルががーんって顔になる。
確かにリベルのお手々じゃ包丁は小さいかも?
『リベルもとんとんやりたい!やりたい!』
リベルが寝っ転がりながら手足をバタバタさせて言うと、ファルネ様が微笑んで
「それではリベル様にはマキ割りの方をお願いしてもよろしいですか?」
『マキ割り?!』
「はい。そちらもとんとんですよ」
って、微笑むと、リベルが嬉しそうにうんうん頷いた。
リベルは嬉しくて「まっきわりまっきわり♪」ってダンスを踊ってるんだよ。
いいな。いいな。リベルはいいな。
私もとんとんしてみたい。
リベルがオノで嬉しそうにマキをトントン切ってる。
トンってオノに木をつけたあと、またトンってするの。
楽しいそう、楽しそう。
マキ割りをリベルに教えてるファルネ様を見ていたら、
「次はリーゼですね。トントンしてみましょうか?」
って言ってくれて、「ちゃんと待っていていい子でしたね」って頭をナデナデしてくれた。
それが嬉しくて、ちょっと顔が赤くなっちゃう。
それから包丁の使い方を教わって、ファルネ様といっしょにトントントンってしたんだよ。
ファルネ様と一緒に包丁をもって一緒にとんとんしてみたの。
凄いね。凄いね。お野菜がストンってきれるんだ。
「リーゼは上手ですね」
って、ファルネ様が言ってくれて、私は嬉しくてえへへと微笑んだ。
その後ろではリベルがシリルにリベルも『リベルも上手?上手?』って聞いててシリルが『ああ、そうだね上手上手』って言ってたの。
楽しいね。楽しいね。みんなで一緒は楽しいね。
その後ファルネ様がシチューを作ってくれるのをリベルと樹の精霊さんたちと遊びながらまってたんだ。
できた後はみんなでお食事。
久しぶりのファルネ様のシチュー。
パンにつけてとろーって食べると美味しんだよ。
美味しいね、美味しいねって食べていると、リベルも「美味しいっ!!こんな美味しいのはじめてっ!!!!」と、パンをちぎらないでそのままシチューにつけてパクパク食べてるんだ。
シリルも「まぁ、確かに旨いもんだね」ってシチューをペロペロしていた。
『リーゼ!!神官凄い!!魔法使いかも!?』
シチューがついたパンをほおばりながらリベルが言うから私はえっへんと胸をはる。
そうだよ!ファルネ様は魔法使いなんだ。美味しい料理をいっぱい作れるの。
「人間の世界では普通の料理ですけれどね」
って、ファルネ様が私のほっぺについたシチューを拭いてくれながらいう。
嬉しくてありがとうって微笑めば、ファルネ様も微笑んでくれて。
私はとっても幸せな気分になる。
みんなでワイワイお食事するのは楽しいよ。
ありがとう、ありがとうファルネ様。
起きてくれてありがとう。
私は嬉しくてファルネ様に抱き着いた。
ずっとずっと待ち焦がれていた生活が出来ている幸せに私は神様に祈りを捧げるの。
お願いを聞いてくれてありがとうーーって。
■□■
見て見て!ファルネ様!
次の日、私とファルネ様は二人でお散歩。
シリルが『森の中は私のテリトリーだから安心しな、何があっても私が対処してやるよ』って言ってくれた。
リベルは今日は一人で狩りに行くって張り切ってて、先に狩りにいっちゃった。
狩りで獲物をとってきてファルネ様に料理してもらうんだって。
だから今日は二人でお散歩。
ファルネ様が起きたらこの景色をみせてあげたかったの。
綺麗な泉に綺麗な花畑。
絵本にでてきそうな綺麗な景色をふわふわキラキラ綺麗な光が周りを飛んでいた。
それがとってもとっても綺麗な場所なんだよ。
「ああ、リーゼは精霊が見えるのでしたね」
うんうん、見える!
……ファルネ様は見えないの?
「はい。残念ながら。
その精霊達が見えるのはリーゼやシリル様といった聖女様のみです。
聖女は聖樹に愛されている存在ですから」
リーゼ愛されてるの?
「はい。だから不思議な力が使えるのですよ」
愛されてる……リーゼ愛されてる!!
嬉しくなった思わず顔がほころぶ。
昔パパとママに愛してると言われた事があった気がするけれど。
もう誰もリーゼの事愛してるって言ってくれなくなっちゃった。
でもリーゼ愛されてる。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
パパやママがいなくても私にも愛してくれる人がいるんだ!
毎日毎日、「皆お前が嫌いだ」って言われたり。
誰もお前なんかみたいな意地汚い子は相手をしてくれないって言われたり。
汚い子、生きてる価値もない子、おぞましい子と罵られるだけだったけれど。
私は聖樹さんに愛されてるよ。
今なら私にも愛してくれる人がいるってちゃんと言い返せるのに。
今なら私にもお友達も大好きな人もいるって反論できるのに。
あの時は毎日毎日痛いのを我慢しながら暗いお部屋で誰とも喋る事はできなかったけど。
いまはファルネ様ともシリルともリベルとも普通におしゃべりできるんだ。
聖樹の精霊さんたちとも意思が通じるよ。
皆嫌いじゃないよ。ファルネ様や皆が相手をしてくれてる。
みんなみんな大好き。
思っていればなぜかファルネ様に抱きしめられた。
「フェルネしゃま?」
不思議に思って聞いてみる。
「いえ、すみません」
言うファルネ様の声は震えてて。なんでだろうと思うけれどこういう時は知ってるの。
ファルネ様をぽんぽんしてあげると元気になるって。
私はファルネ様の背中をぽんぽんしてあげる。
よくママがしてくれた。
大丈夫。大丈夫って。
ファルネ様は背中を撫で撫ででママはぽんぽんなの。
私は女の子だからぽんぽんしてあげるんだ。
そうするとファルネ様がぎゅっとしてくれる。
大好き大好きファルネ様。
はやく元気になってね。