1章 29話 ずっと一緒
いい匂い。
ふわふわのベッドの上で私は目を覚ました。
前は葉っぱのお布団でチクチクしたけれど、今いる場所はファルネ様と住んでいたおうちと一緒。
ふわふわのもふもふ。
なんでこんなところに居るんだろう?
不思議に思って目をあければ
「ああ、起きましたか」
そこにいたのはファルネ様で。
いつもの優しい笑みで微笑んでいた。
読みかけの本をパタンと閉じる。
ファルネ様ファルネ様ファルネ様。
夢じゃなかった夢じゃなかった。
ファルネ様だ本当のファルネ様だ。
「ファルネしゃま!!」
嬉しくて抱きつけばそのまま受け止めてくれる。
ファルネ様の匂い。
ファルネ様のぬくもり。
ずっとずっと会いたかった。
「大分大きくなりましたね」
ファルネ様の優しい声。
大きくなったよ!お友達もできたの!!!
ファルネ様の育ててた聖樹の実が精霊さんになったんだよ!!
「はい。リーゼのおかげですね」
違うよ、違うよ。ファルネ様が大事に育てたから。
みんなファルネ様が大好きだって!
私が言えばファルネ様が嬉しそうに微笑んだ。
大好き大好き大好き。
もうどこにも行かないで。
「ええ、ずっと一緒ですよ」
ほんと!?ほんと!!嬉しい!!!
……あれ?
「どうかしましたか?」
シリルとリベルみたいに思った事がファルネ様に通じてる!
「はい。シリル様に通じるようにしてもらいました。」
ほんと!?ほんと!!
ファルネ様とお話できるの!!
あのねあのね、いっぱいファルネ様にお知らせがあるの!!
「それは楽しみです。
でもその前にお水を飲みましょうね?
もう3日も寝込んでいましたから。
聖樹の実をつかって力を行使したあとは体力の消耗が激しいといっていました。
ちゃんと休みましょう」
言われて私はしゅんとする。
そうだファルネ様に人を殺すところ見られちゃったんだ。
嫌いになっちゃった?リーゼ悪い子?
涙がいっぱい溢れてくるのをとめられない。
ママにニコニコしてなきゃって言われてるのに。
「悪い子じゃありませんよ。
確かに人が人を殺すのはよくありません。
ですが大事なものを守るために、やむを得ず殺してしまうこともあるでしょう。
もし、罪があるとするならリーゼが戦わないといけない状況を作ってしまった私の方です。
リーゼは私を守ってくれたのでしょう?」
うん。うん。ファルネ様守りたかった。
ファルネ様がね。血がいっぱいでて動かないとき凄く怖かった。
パパとママと一緒だったの。
青くなっちゃって冷たくなっちゃってもうソニアと喋ってくれないの。
一生懸命声をかけても、パパもママもお返事してくれないの。
ソニアが悪い子だからパパとママ死んじゃった。
ファルネ様まで死んだらヤダの。
そしたらまたソニア一人ぼっちになっちゃう。
一人になったらまた痛いことする人がくる。
もうヤダ。一人ヤダ。
痛いのも怖いのも熱いのも寒いのも苦しいのもヤダ。
お腹がずっとすいてて、寝たら怒られて。
凄く眠いのに怒られるのも。
ずーっと立たされているのも嫌。
ずっとファルネ様と一緒がいい。
ファルネ様のおうちはふかふかで。あったかくて。寒くなくて。
大好きなファルネ様がいるの。
ファルネ様に絵本を読んでもらってふーふーしてもらって。
撫で撫でしてもらいたい。
ファルネ様がお仕事の日はいい子にしてるから。
おうちの事をしている時はちゃんとベッドで寝てるから。
うろちょろしないよ。邪魔もしない。
いい子にしてる。
だからお願いだからどこにも行かないで。
もう置いていかないで。
「はい。置いていきませんよ。ずっと一緒です」
言ってぎゅっとしてくれて。
私も嬉しくてぎゅっとした。
嬉しい嬉しい嬉しい。
今までは言いたいことも言えなかったけれど。
これからはファルネ様に言いたいことが伝わるんだ。
これからはずっと一緒なんだ。
お仕事の時はいい子にお留守番するよ?
食事を作ってる時はファルネ様の背中が見たいけれどいい子に椅子におすわりしてる。
お掃除してる時も、うろちょろしない!
だからだからずっと一緒にいてね。ファルネ様。
もう置いていかないで。
私はもう離れないようにファルネ様にぎゅーーーっと抱き着いた。