1章 22話 襲撃
『今日から儀式で私は3日篭る。
あとは頼んだよリベル』
私のおうちの前で、シリルとリベルが話し合っている。
今日からシリルは聖女のお仕事があるから聖樹に篭るんだって。
『任せて任せて!リーゼ守る!侵入者倒す!』
リベルがぼんっと胸を叩いた。
任せて任せて!ファルネ様守る!ファルネ様の敵は私が倒す!
リベルのマネをして私もぼんっと手で胸を叩く。
それに習って樹の精霊さんたちもぼんぼんぼんっと胸を叩いた。
『……うん。心配ないねアンタたちなら』
何故かシリルが大きな大きなため息をつく。
これって褒められているのかな?
□■□
シリルがいないからファルネ様は守らなきゃ。
私は洞窟でファルネ様の横にちょこんと座る。
毎日綺麗なお花でファルネ様の入っている光の玉の下にベッドをつくってたけど、今日は中止。
敵がいつ来てもいいようにおうちで待機しているの。
『リーゼ!暇!川遊びに行こう!』
リベルがゴロゴロ転がりながら言うけれど、私はぶんぶん首を振った。
シリルがいない間、敵がきたら大変だからおうちにいるの!
ファルネ様は守らなきゃ!
この間捕まえた人たちはファルネ様を狙ってたってシリルが言ってたもん。
ファルネ様が天使様だから悪い悪魔の使いが命を狙ってる。
だから聖女の私が守らなきゃ。
『そうだ!忘れてた!神官守る!』
うん!守ろう!
私とリベルはファルネ様を守ろうって一緒にお歌を歌ったりした。
でも、しばらく遊んだ後……リベルの寝息が聞こえてきた。
やっぱりリベルにはおうちの中にいるのは退屈だったかな?
おうちの周りをいつも見張っていてくれる樹の精霊さんはなんとなく気持ちがわかる。
暇?大丈夫?と聞いたら日向ぼっこは何時間やっても飽きないと、三人とも洞窟の外でぽかぽか日向ぼっこをしている。
3人はおうちに入れないからいつもお外で見張り番。
リベルも鼻が敏感だから寝てても人間の臭いがくればすぐわかるんだって。
私はよくファルネ様の読んでくれた絵本をファルネ様の隣で読む。
毎日毎日読んでいるからちょっとボロボロになってきちゃった。
大事に箱にしまっておかないと。
この絵本を読むとファルネ様の声が聞こえてくるの。
楽しい言葉は楽しい声で読んでくれて。
悲しい言葉は悲しい声で読んでくれる。
毎日ドキドキしながらファルネ様の絵本を聞いていた。
旅に出ることになったから準備をしましょうと、家にずっと居てくれるようになって。
お外にでる練習もしてくれた。
楽しかった。
旅の練習で初めて馬車に乗った時。
捨てられた時の事を思い出しちゃって震えてたらファルネ様がぎゅっとしてくれた。
大丈夫ですよ。って微笑んで震えが止まるまでいい子いい子してくれたの。
そうしたら本当に大丈夫になった。
きっとあの時ファルネ様は魔法を唱えてくれたんだ。
勇気がでる魔法。
毎日抱っこしてくれて馬車で街の中を見て回った。
お外に顔をだしちゃだめって、布の隙間からお外を見て。
それでも知らない外の世界は楽しかった。
パパとママが生きていた頃は、お外も普通に歩いていたような気もするけれどもうよく憶えていない。
人がいっぱいいて、建物がいっぱいあって。
ファルネ様は建物を丁寧に説明してくれて。
いつか一緒に歩きましょう。
とファルネ様がいってくれて嬉しかった。
あの時はずっとファルネ様に抱っこされていて、歩くこともできなかったけど。
今はシリルのおかげで元気にいろいろなところを歩き回れる。
走れるようにもなったの。
いっぱいいっぱい動いても大丈夫になったよ。
シリルはもうすぐ起きるもうすぐ起きるって言ってくれるけれど。
ファルネ様はまだ目を覚まさない。
いつになったら目を覚ますのファルネ様。
会いたい会いたい会いたい。
お願いはやく起きてファルネ様。
がごっ!!!
外で樹の精霊さんが動く音が聞こえた。
どしんどしんと何かに攻撃する音が聞こえる。
『敵!!こんな近くまで!!』
リベルが慌てて起きる。
敵がきた。やっぱりシリルがいないと森全体を察知できないから大変。
がごぉぉぉぉん!!!
樹の精霊さんたちが攻撃を開始している。
やっぱり敵がきたんだ!
私はファルネ様の持っていた聖樹の実を床において聖女の力を発動した。
これで敵がきても絡めとってくれるはず。
ファルネ様には指一本触れさせない。
ファルネ様は私が守る!