1章 20話 決まり
『あとで食べるっ!!!』
リベルがそう言って倒した敵を土を掘って嬉しそうに埋めていた。
土に埋めると保存がきくんだって。
あのあと。リベルとシリルと私でファルネ様を殺しに森に侵入してきた人たちを捕まえた。
シリルに習った聖女の力で殺しにきた人たちを全員木に拘束して動けなくしたの。
シリルには大分力の使い方が上手くなったねと褒められた。
うん。頑張ったもん。褒められて嬉しいな。
シリルには、私は人間は食べちゃだめって怒られた。
ファルネ様が起きた時嫌われちゃうんだって。
だから私は人間は食べないよ。
ファルネ様に嫌われたくないもの。
人間は人間同士を殺すのをダメっていう決まりがあるんだ。
でも私にはよくわからない。
なんでそんな決まりがあるのにファルネ様を殺しにきたの?ってシリルに聞いたらいろいろあるんだよって言葉を濁されただけだった。
普通は殺せない。きっとファルネ様も人は殺せないんじゃないかって言われた。
そう聞いて私は思ったの。
ファルネ様は人を殺せない。
でも私は大丈夫。
だって知っているから。
殺さないと自分が痛い事されちゃう。
一度あの意地悪な従姉から逃げようとしたことがあった。
その時は従姉に噛み付いて、入口から逃げようとしてたけれど、痛い痛いと泣いててつい血を止めてあげようとしたら、あとから来た叔母に凄く殴られた。
それから逃げることができなくなっちゃった。
あの時、痛いって言葉を無視していればあんな事にならなかったのに。
痛い事をしてくる人は、倒さなきゃダメって私は知っている。
でないともっともっと痛い事をしてくるから。
ファルネ様にもう痛い思いはさせないよ。
ファルネ様が出来ないなら私がしなくちゃ!!
私がシリルにそう言えば
『………そういう考えもあるね。
もう何も言わないけど、人を殺したことは神官には言わないほうがいいよ。
嫌われるのは嫌だろう?』
と言われた。
うんうん。ファルネ様に嫌われたくない。
絶対言わないよ!
私が答えればシリルが大きくため息をついた。
なんでかな?
□■□
あれからいっぱい日にちはすぎたのに。
まだファルネ様は目を覚まさない。
私はリベルの用意した寝る場所に戻ってファルネ様の隣に座る。
「ふぁるねしゃま」
一生懸命練習して言えるようになった言葉を言ってみる。
言葉はまだうまく言えない。
もっとうまくなって「ふぁるねさま」って言うんだ。
光の中のファルネ様は気持ちよさそうに寝ていて。まだ目を覚まさない。
はやく会いたいな。
声が聞きたい。
本を読んでもらいたい。
ファルネ様を殺しにきた悪い人達を倒したよ。
また誰が命令してるのか知らなくて、ファルネ様を殺しにくるのは誰だかわからなかったけれど。
でも大丈夫。ファルネ様が殺されないように、ファルネ様を傷つける人はみんな私が倒すから。
だから早く目を覚まして。
会いたい。ファルネ様。
会いたいよ。ファルネ様。
□■□
次の日。
私はファルネ様のベッドをお花でいっぱいにすることにした。
シリルは私の食事をもらってくるとどこかに行ってしまって、リベルも今日は狩りにでかけるって言っていた。
私も誘われたのだけれど。今日はファルネ様と一緒にいたかったの。
樹の精霊さんたちがいるから一人じゃないし。
みんな私のお花掴みを手伝ってくれた。
今日はファルネ様も一緒。
ダイに運んでもらったの。
ファルネ様のベッドを綺麗なお花で飾ってはやく起きてとお祈りした。
ファルネ様が寝てしまってから、私は大分身長も伸びたよ。
ちょっとお洋服が小さくなっちゃったの。
新しいお洋服買ってくれるかな?
シリルが魂がなかなか定着しなくて目を覚ますのが少し延びるかもって言っていた。
無理に起こすと死んじゃうんだって。
ファルネ様。どうしたらはやく起きてくれるの?
ファルネ様の聖樹の種も芽吹いたよ。
一気に精霊さんになっちゃったけど。
ファルネ様喜んでくれるかな?
ダイとレムとコロンもファルネ様が起きるのまってるよ。
ダイもレムもコロンも種だった時の事覚えてるんだ。
ファルネ様が大好きだって。
皆ファルネ様が起きるの待ってるよ。
だからはやく起きてお願いファルネ様。