1章 15話 はやく起きて
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
森の中に悲鳴が響いた。
あれからファルネ様は精霊さんの一人に任せて私とシリルは逃げた人を追っていた。
だって逃したらまた殺しにくるもの。
ファルネ様に酷いことをするから殺しておかなきゃダメ。
逃げるゼーンを見つけたので、私はシリルに教わった通り魔法を唱えてゼーンにあてた。
そしたら両足だけが綺麗にきえちゃってた。
『ほら、威力を上手く調整できてないじゃないか。
威力が高すぎて両足が消滅したよ』
本当は足を攻撃して転ばせて足止めするはずだったのに調整がうまくいかなくて足が消滅しちゃった。
私の攻撃は血がでないらしく、足をなくしたゼーンが痛い痛いと転げまわっている。
『もうあれはダメさね。
可哀相だから頭を狙って殺してあげな』
シリルに言われて私はコクコク頷いた。
よくわからないけど頭を狙えばいいんだね!
念じれば光の玉がすぐできる。
これが聖女の力なんだって。
シリルが使えるようにしてくれた。
でもどうしても威力がうまくいかない。
えいっ!!って光の弾をゼーンにあてればお腹に当たってまた痛そうに転げまわって何か言っている。
頭を狙ったはずだったのに。
これって結構難しい。
私がしゅんとすれば
『初めてにしては、うまい方だ。
もうちょっと頑張りな。
あと一人もあんたの仲間が捕まえているはずだから。
慌てる事じゃない』
うん!わかった!
せっかくだから威力の練習もしよう!
私がばしばしと光の弾をあてれば、ゼーンが苦しそうにもがいて、何か言ってたけど何発かあてたら動かなくなった。
よかった!これでもう私やファルネ様を攻撃できないよ!
パトリシアの仇もとれた!
もう動かないから大丈夫!
どうかな?と私がシリルをみれば
『………うん。よくやったよ』
言われて私は嬉しくて微笑むのだった。
■□■
『……こりゃまた。精霊の子達も召喚したあんたに似たのかね』
樹の精霊さんがブラリと死体をつまんでもってきた。
ペーネだと思う。
ぺちゃっとしちゃったのかな?
平べったくなっててよくわからない。
犯人聞き出せなかった。
精霊さんがごめんね、ごめんねと謝るけれど、私も同じだったから怒ってないよといえば嬉しそうにキュキュキュって微笑むの。
表情はないけれどなんとなく気持ちが伝わってくるから。
それにしてもこれからどうしよう?
『この森にこのまま住めばいい。
ここにいる限り人間なんか手も足もだせないさ』
いいの?ファルネ様も一緒?
『ああ、一緒さね。
むしろ人間の世界に戻ったほうが危ない。ここから出す気はないよ』
ありがとう!ありがとう!シリルいい人!
私が飛びつけば大袈裟だよと笑ってくれた。
嫌な事も悲しい事もいっぱいあったけれど。
新しく精霊さんたちやシリルがお友達に増えた。
ファルネ様も助かった。
光の中にぷかぷか浮いてるファルネ様は本当に天使みたいに眠ってる。
はやくはやく目を覚ましてね。
声が聞きたい。いい子いい子って撫でてもらいたい。
ファルネ様が目を覚ますまで私はいい子にしているよ。
ニコニコ笑っていればいい事があるってママが言ってたもん。
ママのいいつけを守っていたからファルネ様やシリルや精霊様に会えたんだ!
そして神様お願いを聞いてくれてありがとう。
私はいまとっても幸せだから。
光の玉に抱きつけば、あったかい気持ちに包まれる。
はやく起きてねファルネ様。