[携帯料金下げ] 恩恵受ける層の拡大を
( 10/30 付 )

 総務省は菅政権の目玉政策である携帯電話料金の引き下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。
 携帯の利用者が契約する会社を乗り換えやすくするのが柱だ。大手事業者を格安スマートフォン事業者との競争に巻き込むことで料金の引き下げにつなげる狙いがある。
 大手3社のうち、KDDIとソフトバンクは早速、料金体系を見直し、割安プランを打ち出した。だが「値下げ」の対象は一部の利用者に限られる。
 携帯電話は今や生活必需品である。大手各社は幅広い層が値下げの恩恵を受けられるプランを検討、提示し、割高な料金に対する利用者の不満に応えてほしい。
 行動計画は、契約先を乗り換えてもメールアドレスをそのまま使える仕組みを年度内に検討するほか、大手が格安スマホ事業者に回線を貸し出す際、データ通信接続料の5割減を今後3年間で目指すなどとしている。
 日本の携帯市場は、NTTドコモを含めた大手3社の契約数が9割近くのシェアを占めている。こうした寡占状態が国際的にみても割高な料金水準になっている要因とされる。
 料金体系の中で、菅義偉首相が照準を合わせたのが20ギガバイトの大容量プランだ。KDDIとソフトバンクが今回発表した割安プランは大容量が対象で、大幅な引き下げになっている。
 ユーチューブなどで長時間動画を見たりゲームで遊んだりする若年層らには利点がある。だが、多くの利用者にとって20ギガバイトは容量が大きすぎて必要性に乏しい。菅首相は値下げを「経済対策の一環」とも説明するが、効果は限定的だろう。
 携帯電話は行動計画が位置づけるように、国民の生命・財産を守り、社会経済活動を支える重要なインフラである。その機能を十分引き出すには値引きとともに、利用者にとって分かりやすい料金体系が求められる。
 いざ乗り換えようとしても料金プランは複雑で、なじみのない専門用語も多い。キャンペーンによる割引などもあり、どれが自らにとって必要で最も適したプランなのか、判断に迷う人は少なくないはずだ。
 総務省は専門用語を解説し、比較を助けるサイトをつくるという。公正取引委員会も消費者が最適な料金プランを選びやすい環境が整っているかなど実態調査を始めた。携帯各社は行動計画が掲げる「分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現」が可能になるよう努めてほしい。
 ドコモも引き下げに追随する見通しで、菅首相の値下げ圧力が実った形だ。だが、市場は自由競争に委ねるのが本来の姿だろう。政府の介入が他の業種にも及びはしないか。注視していく必要がある。