中国の五中全会 前例破る長期政権懸念

2020年10月30日 07時56分
 中国共産党の重要会議「五中全会」が閉幕した。習近平党総書記の後継は明らかにされず、習氏続投が濃厚になった。強権的な習氏三期目の長期政権となれば、さらに息苦しい社会が懸念される。
 「五中全会」は党第十九期中央委員会第五回全体会議の略称で、全体会議は五年に一度開かれる党大会に次ぐ重要会議。今回は二〇一七年の党大会後、五回目の全体会議だった。
 毎回の会議では中長期的政策や党幹部人事が決められる。今回人事の焦点は、江沢民、胡錦濤両氏が務めた党総書記「二期十年」の前例を破り、一二年に党総書記になった習氏が三期目に道筋をつけるかどうかであった。
 有力な後継候補とみられた習氏側近の陳敏爾・重慶市党委書記らが政治局員から党中枢の政治局常務委員に昇格する人事はなかった。このため、二二年の次期党大会で陳氏らが一足飛びに党総書記になるのは難しく、習氏の続投が固まったといえる。
 習氏は一八年には憲法を改正し、二期十年とされた国家主席の任期を撤廃し、長期政権に布石を打ってきた。党や軍のトップに任期制限規定はないため、習氏は党、国家、軍すべての最高権力を握り続けるつもりであろう。
 長期政権はそもそも腐敗の温床になりやすい。さらに、別格の指導者を意味する「核心」とされる習氏の権威をさらに高める動きが気がかりだ。党中央は九月に習思想を守るよう指示する新条例まで制定した。
 二期目の習政権は、香港民主化や少数民族への弾圧など強権政治が目に余る。三期目ともなれば、政権批判は一層封じられ、社会の閉塞(へいそく)感が強まるのではないか。
 五中全会では、三五年までの長期目標や二五年までの「第十四次五カ年計画」も議論された。
 長期目標には、国内総生産(GDP)が三〇年ごろに米国を逆転するとの見通しもある。その実現のためにも、米中対立の長期化に備え、外需依存から内需を増やす方向に軸足を移し発展を続ける戦略が示された。
 だが、習氏は今世紀半ばまでに総合国力で米国を抜くという目標を掲げる。対外強硬的な「強国路線」を国内求心力を高めるために利用し続けることは危険である。
 「党の安定が国家の安定につながる」というのが習政権の基本方針だ。だが、党や習氏への権力集中という内向き志向が、国際社会との溝を広げているように映る。

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